120「ドラゴンの国へ」
「ザウィハーまで後どれくらいでしょうね」
中々辿り着けない現状にピルアーナは溜息をついている。
「ヴァルキュリアの国アサスウイアとヘルトルの街を越えると、もう少しかな」
シレラがオーガのボブガンさんの奥さんに描いてもらった地図を調べてみた。
「街道を逸れてしばらく行けば、リザードマンの国セイケグクとドラゴンの国イアーシュミが有るのかぁ」
「リザードマンの国と言えば、ゴヴァンさんを思い出すのであります」
「ん、良い人だった」
「ほう、ドラゴンの国イアーシュミか、マネージャーのビエルさんの出身国だろうね」
「ドラゴンの国! 見てみたいのであります」
「ちょっとぉ、寄り道してたらザウィハーに行くの遅れちゃうじゃないですかぁ」
「私等、時間の制約は無いんだ」
同乗させてもらっている上に、仮採用のピルアーナはこれ以上文句は言えなかった。
シレラたちは制約されるのが嫌いな様子。
だから自由気侭な冒険者をやっている。
やがて道標が見えてきた。
「真直ぐ行けば、ヴァルキュリアの国アサスウイアで、右に曲がるとドラゴンの国イアーシュミに行くのか」
一行は右に曲がった。
街道はまた山道に入って行く。
「どうしてドラゴンって奴は、山の奥に住みたがるのかねぇ」
「人里の近くだと具合が悪いんですよきっと」
ピルアーナの言うとおり、人里近くだと数mから数十mの巨体を持つドラゴンの集団だ。
人の街にとって、それこそ怪獣映画の毎日になってしまうだろう。
「ドラゴンの国に行くとしたら、ワイバーンとか飛んでないでしょうかね」
「ん、出ても大丈夫、倒すから」
「ええ? ワイバーンってドラゴンの一種ですよ?強いんですよ?」
「そういえば、ピルアーナが戦ってるの見た事が無いのであります」
「もしかして戦えないとか?」
「そ、そんな事ありません、私だってその気になれば強いんです」
そんなやり取りの末、次に何かが出たらピルアーナの実力を見せてもらう事になった。
「あ、ワイバーンであります」
「ひえ! さっそく強敵の登場ですか」
そこからが始めて見るジンニーヤのピルアーナの戦いだ。
一行を見つけたワイバーンが向かって来た。
ピルアーナは体を変化させる。
巨大な盾になってワイバーンをドーンと跳ね返す。
盾で防がれたワイバーンは体勢を立て直し、再度突撃を開始した。
ピルアーナは掌からロープを出した。
生き物のようにロープはワイバーンに襲い掛かっていく。
ギャーギャーと暴れるワイバーンの自由を奪いつつ、瞬く間に拘束してしまった。
ピルアーナは巨大化し、拘束されたワイバーンを片手で握って蝶に変えてしまう。
勝負はそれで終わりだ。
「うーん、戦い方が正にアラビアンナイトの魔人に見えるであります」
「これがジンニーヤの戦いかぁ」
「戦力として申し分ない」
「どうでしたぁ、これが私の実力です」
定位置に戻って来たピルアーナが感想を聞く。
「ん、合格」
「じゃあ、仮採用から正規採用に昇格とか」
「それはまだダメ」
ピルアーナは何故認めてくれないのだろうとションボリした。
「ピルアーナが気の毒そうであります」
「でも、まだ秘密は明かせないと思うんだ」
「ん、そう」
まだ何か秘密を持っているのかとピルアーナは理解した。
気安く明かせない何か、それを教えてくれた時に、やっと彼女達の正式な仲間になれるのか。
ならば信用があれば教えてくれるのかな、と考えたけどそれだけじゃ無いらしい。
それが何なのかを教えてくれない。
それを知る試練かな?
本来精霊というのは、人より上位の存在に当たる。
ジン・ジンニーヤは属性を持たない精霊ともいえる。
思えば、出会った当初から、彼女達はピルアーナの下にいる訳じゃないし、
ダンジョンマスターという未知の能力を持っている不思議な人達だ。
改めて考えると、ピルアーナにとって最初から謎の人達だった。
服装から察すれば、冒険者なのは解るけど、それ以上の何かを知らない事に気付く。
たぶん、もっと仲良くなれば、明かしてくれる日も来るのかな。
「もう一回ワイバーン狩って次の街で換金しないと懐具合が寂しいね」
「ん、次は私がやる」
「ダウンバースト!」
ピルアーナはダウンバーストの威力を思い知らされた。
空中に創られた空気のダンジョンに閉じ込められたワイバーンは。
上空に出現した積乱雲から起される下降気流の密度の濃い空気のハンマーで
地上に叩きつけられ絶命する。
ドカーーーーーーン
と来るエアハンマーの猛烈な爆発的襲撃で周りの樹木は全部薙倒された。
必死の思いで涙目になりながら倒木にしがみ付き爆風から逃れるピルアーナ。
「うう……。 すごい技ですぅ」
「これで換金できるワイバーンが狩れたね」
一行は街道に現れる魔物を倒しながら、ドラゴンの国イアーシュミに向かって行った。




