116「フォロワスターの街」
馬車は山間の街道を行く。
子馬のモンシェナの徒歩の速度だから、それほど速くは無い。
引く車は大八車だから、子馬のモンシェナが引く位で丁度良い感じだ。
「あれ? 草の陰に仔犬が隠れているのであります」
御者をしているミモが仔犬に気が付いた。
そういえば、以前ミモと出会った頃はミモも逃げてきたんだっけ。
街道の先にコボルドの街フォロワスターがあるから、届けてあげれば良いかな。
仔犬は病気でもしているのか、元気が無い。
「あ・り・が・と」
仔犬がお礼をする。
どうやら只の仔犬じゃなく、コボルドの子供のようだ。
獣人族には猫族もいれば、犬族もいる。
コボルドは獣人の犬族のようにも見えるけど、別の種族だ。
獣人のように人に近い体はしていない。
むしろ獣に近い方かもしれない、それでも二足歩行で歩くし、言葉も理解する。
獣人犬族よりも、妖精種に近いのかもしれない。
コボルドの街は、獣人族や人の街のような建物は建っていない。
彼等の体の構造では、人のように物を作る事は苦手だから。
山に大昔に居住用に人がいくつも掘った穴を利用して街にしている。
他種族も交流する事にあまり利が無いとみて、ほとんど交わる事は無い。
一行が街に入ると、ワラワラとコボルド達が寄って来る。
出迎えという様子ではない、むしろ他種族に警戒しているようだ。
「と・ま・れ」
どうやら種族的に声帯が人のようには喋れない様子。
「お・ま・え・た・ち、そ・の・こ・を・さ・らっ・た・の・か」
……何?攫ったのかと言ってるのかな。
「私らは草陰に隠れてたこの仔を、送り届けに来たんだけど」
「う・そ・じゃ・な・い・だ・ろ・う・な」
「う・そ・じゃ・な・い」
コボルドの子供が擁護する。
「お・お、カ・ル・ニ・坊」
子供の名前はカルニと言うらしい。
なんでもコボルドの子供は密猟者に攫われ、
人族領でペットや奴隷にされる事が珍しくないのだとか。
密猟者を見掛けたら、街中全員で撃退している。
それでも攫われる子供が後を絶たないらしい。
「ふーん、気の毒と思うけど、これ以上関わる事出来ないし」
コボルドの族長は冒険者依頼として、密猟者退治に報酬を出すと言う。
まぁ、関わっちゃった以上仕方ないか。
街の入り口に落し穴トラップを仕掛け、族長の家にお世話になることにした。
翌日落し穴トラップには、二人の冒険者と猪が掛かってた。
「うーん、こいつらは誘拐犯人っぽいかな」
族長が問い詰めるが、二人は何も答えない。
「うーん、ここは一つ拷問で吐かせてやろうじゃないか。
タリマの智の迷宮は、抵抗も出来ないし、逃げられないよ」
族長に小部屋をを借りて、尋問にかかった。
ここに居るのはシレラ・ミモ・タリマ・ピルアーナ・コボルドの族長。
そして罠に掛かってた小汚い冒険者二人が、縛られて座らされている。
タリマの智の迷宮によるメンタル誘導が始まった。
たぶん彼等の目には、私らは女性尋問官、書記、
監視官、犯人のお母さんに見えている事だろう。
結果は二人の冒険者は密猟者で、カルニ坊を攫った奴だ。
犯罪者ギルドに加盟している、使い捨てだという事を、彼らは目の前の母親に、すまないとボロボロ涙を流しながら懺悔をした。
「何なんっすかー、その能力、タリマさんこえー」
青褪め怯えた顔でピルアーナがビビル。
「ふっふ、これもダンジョンマスターの力の一つなのだよ」
実際には誰も痛い思いはしていない。
すべては脳内、精神世界の中で犯人たちは誘導され、全てを吐いた。
今では彼らは犯罪ギルドを自分達の敵だと信じ、コボルド達に協力すると誓っている。
後はコボルド達と犯罪ギルドとの戦いだ。
旅人の私らが、そこまで介入する筋は無い。
シレラ達の馬車はフォロワスターの街を発った。




