113「ピルアーナ」
あとがき欄にYoutubeのURLを張ってみる事にしました。
文面からは音楽は聞こえません。
イメージ的として聞いてもらえばと思っています。
Youtubeからの無差別にチョイスしただけの紹介URLですから、
アフィリとは無関係です。
楽しんで頂ければ何よりです。
ハディゼキヌ領では去年のコンサートの記憶は強く残っていた。
『出来れば年に一回は招致出来ないものか』領民は考えるけど、
あれ程の大々的なコンサートを招致すれば、掛かる金額もかなりになるに違いない。
そう考えると、毎年であっても気軽に呼ぶ事は難しそうに思える。
浮遊筏街の端で魚釣りをしている少年がいた。
「ユゲル、釣れてる?」
「まだまだ、これからだよ姉ちゃん」
姉ラスカがユゲルの傍らに置かれている桶を覗くと、
まだ一匹も釣れていない事が判る。
「ふーん。晩ご飯のおかず頑張ってね」
ラスカは家に帰っていった。
ユゲルは夕方まで粘ってみたけど、釣果はゼロだ。
それでも気長な釣り人は落胆はしない。
今日が駄目でも明日があるさ。
夕暮れも迫って来ると、海面の具合は見辛くなって来る。
……今日はここまでか。
諦めて帰ろうとした時に、何かが浮んでいるのを見つけた。
「何だろう?」
釣竿を使って浮んでいる物を引揚げた。
見ると壷のようだ。
壷の口は封印されている様子。
封印を壊して壷の中身を確認したけど、中には何も入っていない様子。
「今日の釣果は壷一つかぁ」
桶の中に壷を置いて帰り支度を始めた時。
ボボボボボボボボボーーーーーー
、
壷の中から膨大な煙が出始めた。
壷の中から出てきたのは、煙だけじゃなかった。
出てきたのは、ジンニーヤだ。
中背の20代だろうか、歳若い女性だ。
頭の後ろに黒く長い三つ編みの髪が一本垂れ下がる。
異国風の衣装を着て、裾の膨らんだズボン、爪先が湾曲した靴を履いている。
ジンとは精霊の一種であるが、属性を持たない精霊ともいう存在かもしれない。
男の精霊がジンと呼ばれ、女性の精霊がジンニーヤと呼ばれる。
御伽噺では、神に罰せられ、壷なり指輪なりに幽閉され、解放者の願いを聞くとされている。
「壷の魔人!」
「壷の魔人かぁ、ダサイ二つ名だなぁ…。
私はピルアーナ。
封印を解いてくれたのは君かな? 取敢えずお礼しなくちゃね、何が良い?」
壷に封印されていたピルアーナが願いを叶えてくれるらしい。
唖然としながらもユゲルは考えた。
「願いがかなうなら、またコンサートを見たいな」
「コンサート? 何それ、私は長い事、壷の中にいたから世情に疎くて」
魔族の国ハユバムの王子が、去年開いたコンサートの説明をした。
「へー、今はそういうのがあるんだぁ、私も観たいなぁ」
「また王子様に、ここで公演することをお願い出来ないかなぁ」
「もしかして、私がその魔族の王子に頼みに行けば良いの?」
『頼みに行く』?
魔人なのに、即座に魔法で出すは言わないピルアーナ。
魔人は魔法で何でも願いを叶えるって物語を読んだ事はあるけど。
どこと無く違和感を感じるユゲル少年。
「よし解った、開放のお礼に頼みに行こうじゃないか。で、魔族の国ってどこにあるの?」
ハディゼキヌ領から出た事が無いユゲルには解らなかった。
「そっかぁ、ユゲルが知らないんじゃ、他の人に聞かなくちゃならないね」
魔族の国の王子の所まで旅をするのに、少年のユゲルが親に無断で出掛ける事は出来ない。
見た感じ、ユゲルの親から旅の許可を貰うのも難しそうに思えた。
たった今知り合ったピルアーナが、保護者になると言うのも無理がある。
「しょうがない、私一人で行ってくるしか無さそうだね」
ピルアーナは魔族の国を目指して、街の外へ歩いて出て行った。
「魔人って空飛ぶんじゃなかったの?」
呆然とぼやくユゲル少年。
見知らぬ土地で、当ても無く街道を歩くピルアーナ。
やがて街道の向こうから、一台の馬車が来るのが見えた。
あの馬車の人に聞けば解るかな。
やって来た馬車は、かなり小さな馬車だった。
正確には、子馬が引く荷車に人が乗っている状態。
三人の女性が荷車に乗っている、御者をしている一人はポンチョを着ている大柄な魔族。
……魔族が乗っているという事は、魔族の国に行く可能性は高いだろうな。
「そこの人ー、もしかして魔族の国に行きますかー?」
「ええ、魔族の国を目指してるわ」一人が答える。
「良かったー。私も魔族の国に行きたいんですよ」
「そうなの、良かったら一緒に乗っていく?」
どうやら彼女達も目的地は同じらしい。
喜んで乗せてもらう事にした。
「ところで、私ら始めての所で、ザウィハーが何処にあるのか解らないんだよね」
え?ピルアーナは驚いた。
「私も知らないんです」
「なんだぁ、あんたも知らないのかぁ…」
「あ、でも私ジンニーヤなんで、皆さんの力にはなれると思うんで」
ほう、と驚く三人。
取敢えずお互いの自自己紹介を始める。
馬車の三人はシレラ・ミモ・タリマ。
異世界から来て、ザウィハーのニホバル王子を訪ねる所だと言う。
出来れば、ニホバル王子のコンサートをまた観れればという思惑で。
「ああ、そうだったんですかー、実は私もコンサートの件で行きたかったんです」
こうしてニホバル王子を訪ねる4人の旅が始まった。
https://www.youtube.com/watch?v=ljSq9xm4fF4
野川さくら アクビ娘




