109「ミモ帰還」
ニホバル達一行はシレラ達が帰って来るまで、
セスァレナの街でのんびり過ごしていた。
聞くところ、この街の魔族達は全員元難民だったと言う。
魔族の王都アシャンレニルでは、治世が悪く、暴動が多発しているらしい
治安の悪い国から脱出する者達が後を絶たないそうだ。
そして彼らは国を脱出して来た難民だったという。
中々定住出来る所は無く、今も流浪の一族は多数あるとも聞いた。
世界も国も違うけど、王族の者として彼等には申し訳ない気持ちになって来る。
ここの魔族の誰もが、『あんな奴、やっつけちまえ』と言っている。
「ニホバル、愚王という者は救い難い者のようで」
ツェベリも気の毒そうに言う。
「兄ちゃん、私達の国はそうならないようになりたいね」
ルリアも我が事のように感じているのだろう。
幸い、音楽にうつつを抜かすニホバルは王様になる気は無い。
父王に宰相推しをされているけど。
……魔王ダシハヴァン、誰かが討たなければ止まらないのかも知れないな。
「ところでツェベリ、ビエルやタマキ様達は何処に行ったんだろ?」
「広場で演劇を観ると言ってたよ」
ニホバルに付いているのは、ツェベリとルリア、キスナエレア、ナサラトット氏だ。
……ビエル達は広場で演劇を観ているのか。
行ってみると、群集にまぎれて観劇しているビエル達が見えた。
この広場では、よく演劇が開かれているらしい。
「あ、ニホバル様」
ニホバル達を見つけたビエルが駆けて来る。
「主人公ハンスの恋人ネネットがもう、可哀想で可哀想で……」
ビエルは芝居にしっかり、のめり込んでいる様子。
「兄ちゃんの公演の方がすごいよ」
ルリアは興味が薄そうだ。
後の者も呼んで皆で食事に出かけた。
タマキ様とスズヒコさんは、まだ演劇を観ている様子。
まぁ、あの方達、物を食べそうに見えないし。
売っている物はあちらの世界と大差無さそう。
「兄ちゃん、あれ、あれ」
ルリアが美味しそうな屋台を見つけたようだ。
ツェベリもキスナエレアもポトラもベセアも、
女性陣は目が釘付けになっている物があった。
お、あれはクレープだ、中身はフルーツか。
砂糖が無いのか、高価なのか判らないけどクリームは無いようだ。
この際だから、全員で買い食いを決め込んだ。
……うん、やっぱり甘い物は良いね。
こんな具合にニホバル達は日々を過ごしていた。
コンサートの舞台は既に確保しているし、許可も取っている。
そんなある日、宿屋の外でシレラ達が帰って来たと声が聞こえた。
やっと祭りが始まるのか。
皆で表に出て見てみると、子馬に引かれた異常に小さい馬車に乗った四人が見えた。
あれは馬車と言うより、荷車に乗っているのかな。
推測するに、あれは大八車だ、それを白い子馬が引いているのか。
人族が二人、魔族が二人乗っている。あの中の誰かがミモなのか。
しかし二人とも大きいな。
背丈はツェベリより頭一つ分以上は有るかな。
ポンチョを脱ぐと腕が六本有るから、彼女がミモなのだろう。
ミモって言葉の響きから、もっと小さい子かと思ってた。
神殿の女神像に、似てると言えば似てるな。
そして人族の一人がシレラなのか。
俺達、挨拶に行った方が良いかな。
取りも直さず、ニホバル一行は神殿に顔を出してみた。
しばらくすると廊下の向こうから、シレラ達一行がやって来た。
「こんにちは、ニホバルと言います。今回の祭りでコンサートを開かせてもらう事になっています」
「あら、こんにちは宜しくお願いしますね」
返礼してきたのがシレラさんのようだ、
と、いう事は横の小さい子がタリマさんになるな。
「え、と、後ろの不思議な方々は?」
「私はタマキと申します。よしなに」
「私はスズヒコと申します。この度お祭りのコンサートで神楽舞を予定しています」
「かぐらまい?それは何でありますか?」
「神様に奉納する巫女の舞なんですよ」
良く解っていない神官は、ありがたく受け取っている様子。
今回も蓮台に乗ったミモが、広場を一周するらしい。
ニホバルたちの公演は、夕方から始まる予定になっている。
「お忙しそうなので、俺らはこれで。ん?」
シレラがニホバルたちを凝視している。
「ニホバルさん、後でお話できるかな?」
何かに感付いている様子。
コンサート終了後に会ってみる事にした。




