106「付喪神」
ニホバル達一行は宿屋に併設している酒場の奥で会議をしている。
「神殿での神様のお祭りだったら、神楽舞があった方がどうだろ?」
「ニホバルは時々変な事を言うね、私達には解らないから、何とも言えないけど」
何を考えるか、腕を組み眉を寄せ目を瞑るツェベリ。
「兄ちゃん、かぐらまいって何?」
興味深そうに目を輝かせる聞くルリア。
「ルノア様かメフルア様、若しくはポリュヒュムニア様ならご存知かも」
片手でこめかみに指を当てつつ悩むキスナエレア。
「うーむ、神、または神に近しい者なら解るのか」
相変わらずノートに記入し続けるナサラトット氏が言う。
「ニホバルさん、その方は一体?」
話題に入れないケワレグが聞く。
「ああ、皆さんが何を話しているのか解りません」
混乱し音を上げるポトラ。
「ひょっとして私達が聞いてはいけない話なのかも」
何か怖いものを見るようにベセアが引く。
ナーユゼから通話が入った。
「ポリュヒュムニア様が都合つけて下さるそうです」
うーんこの会議もしっかり聞かれているなぁ。
何かあった時には、迅速な対応が出来るんだろうけど。
要するに守護されているから、聞けないようにするのは問題が起こるか。
例えるなら、防犯システムを切ったらどうなるかと言うのと一緒かな。
やがてポリュヒュムニア様が奇妙な人物?を連れてやって来た。
「あ、ポリュヒュムニア様、その節はお世話になりました」
本当に魔神の時には助けられた。
これほど凄い女神様だったとは。
「ああ、良い良い、ニホバルの奇行には笑えるのでな」
今回は奇行に付き合ってくれるそうで。
また違う異世界から、お願いして来てもらったと言う。
そして奇妙な人物達、付喪神と言うらしい。
……ああ、また神様だ。
人に大切にされてきた道具に魂が宿り、妖怪化したのが付喪神と言う。
ニホバルには、この説明は感覚的にも良く理解出来る。
しかし、他の者達では、概念が異なる為に理解が及ばないのだった。
それを解り易く説明するために、こちらの世界の概念の妖精に近いと説明する事になる。
「宮司のタマキと申す」
神社で祭事の時に、紙の束が付いた棒の付喪神だけど、中身は日本の女神の分霊。
「巫女長のスズヒコです」
神楽鈴の付喪神、五人の巫女さんを束ねる巫女長を務めている鈴彦姫。
二人に挨拶をされた。
妖精と言うには、あまりにも異形の姿だ。
欧風ファンタジーには在り得ない雰囲気に、一同唖然としてしまった。
しかし、神楽舞をお願いするには、この二人以外に適任者はいない。
「あ、ああ、すまん、挨拶が遅れた、私はツェベリ」
「あ、すいません、俺はニホバル です」
「私はルリア」
「キスナエレアと申します」
「ナサラトットだ」
「ビエルよ」
「え、えーと、俺達も挨拶した方が良いか? 俺はケワレグ、剣士です」
「私はポトラ。魔術師です」
「治療術士のベセアです」
一同が面食らっている。
「皆の衆、ではな」
二人を置いてあっさりと女神ポリュヒュムニア様は帰って行った。
帰る時に一言『オリンピアー』って言ってくれないかな。
「皆の衆、宜しくお願い奉る」
宮司のタマキが腰を曲げ返礼をする。
またしてもGod関係者が増えて、冷や汗ダーダーのナサラトット氏。
ケワレグ、ポトラ、ベセア、ルリアの四人は理解が追い付いていない。
ツェベリ、キスナエレア、ビエルは対応に困っている。
「あー、皆の衆、普通に接してくれたもうぞ」
タマキが気を遣って皆にリラックスを勧めるが、言葉が既に異質すぎる。
身に着けている狩衣や、巫女衣装も十分に異質だけど。
あちらの世界では、ザウィハー交響楽団による雅楽も練習に入っていると言う。
女神チャンディー・ヴィカラーラの神殿で神楽舞を披露するために。
腹の底で笑っているポリュヒュムニア様であった。
「あー、あんたら、宿泊は二人追加かい?」
宿屋のオヤジが聞いてくる。
その声で一同の緊張が解けた。
「オヤジさん、そう、宿泊に二名追加で」
この街でのニホバル達一行は、11名++になった。
さすがに人数多すぎじゃね?




