104「シィニギ村」
馬車はシィニギ村に着いた。
村の規模は人口5000人位かな。
それほど大きな村じゃない。
さっそく村長に挨拶に行く。
村長の名前はユパント、背の低い人の良さそうなおっちゃんだな。
「冒険者の方々、よくおいで下さった、最近マンティコアが複数出没しましてな、村人が全員怯えていますのじゃ」
……複数ってどれくらいいるのかな、心配はしていないけど。
「で、どうやって退治すれば良いの?」
「はい、そのために先ずは会議をしたいと思いますじゃ」
村長宅で村人や、俺達一行を混ぜて作戦会議に入る。
マンティコアは肉食の魔獣で夜行性だ。
出没するなら夜になってからだろう。
そして十中八九、森の中に隠れている。
退治する時に、村に被害が及ばない様にするには、
決戦場所を森の中に決めて、俺達が囮になるのが手っ取り早そう。
森の中に馬車を乗り入れる為には、木々の伐採が必要になる。
それと馬車の周りも草木を伐採しておきたい。
「それなら、さっそく村人総員で取り掛かりましょう」
「ちょっと待った!」
逸る村長を引き止める。
村人達にやってもらうとすれば、伐採した草木の撤去だ。
俺達は森に入って、水鉄砲で草木を薙倒して行く。
さすがランウネルのウォーターカッターだ、斧や鎌で草木を刈るより早い。
「おお!何ですか?そのアイテムは、まさかマジックアイテムとか…」
またしても驚くケワレグ、ポトラ、ベセアと村人達。
全員でかかっても、数日掛の作業が半日で終ってしまった。
森の中の拓いた場所に、馬車を乗り入れて野営にかかる。
後は俺達が囮になり、迎撃する。
これで事は足りるはず。
やがて夜になり、森の中の馬車にはカンテラの灯がともる。
今はまだ周りに不穏な物音はしないが、気は抜けない。
ツェベリとキスナエレアは、薙刀を傍らに置いている。
剣士のケワレグも何時でも抜刀できる体制で座っている。
「それにしても驚きですね、小さな魔道具で見る間に草木を切り倒すなんて」
不思議そうな顔でポトラが言う。
何たって銃口から、保有量を無視して5mm位の太さの水が、光線か何かのように射出したのだから。
「ああ、これもニホバル君の召還魔法の一部なのだよ」
ナサラトット氏が、最もそうな事を言って一同を煙に巻く。
「召還魔法ですか、私には何を召還したのか判りませんでした」
何やら複雑そうな顔でポトラが言う。
召還魔法と言えば、大概は魔法陣を使って、魔獣などを呼び出すのが一般的だからだ。
……うん、それなら、召還魔法っぽいものを演出してやろうじゃないか。
芝居がかって恥ずかしいけど、既に打ち合わせ済だ。
やがて夜も更けて辺りに不穏な空気が漂い始めた。
森の中から、草をかき分ける音と、何者かが移動する音が近づいて来る。
恐らくマンティコアが寄って来ている音だろう。
全員が戦闘態勢に移る。
ツェベリとキスナエレアとケワレグが馬車から出て武器を構える。
ナサラトット氏とポトラが攻撃の呪文詠唱を始める。
ベセアも戦闘補助に精神を向けている。
ニホバルとルリアは、水鉄砲とカンテラを手にして迎撃体制に入る。
ビエルは何もせず落ち着いている。
やがて10頭のマンティコアが、暗い森の中から顔を出す。
まだ武器の間合いには遠いから、動く者はいない。
では行ってみようか、ルリアに合図を送る。
ニホバルとルリアは肩を抱き、カンテラを掲げ叫ぶ。
「「出て来い!『ウラークル』」」
「パパラパー」
……ウラークルもノリノリだなぁ。
ゴウと音を立て炎の緒を引きながら、マンティコア達を焼き殺しに出撃した。
突如現れた火の精霊にケワレグ、ポトラ、ベセアが仰天する。
「サ、サラマンダーが!」
マンティコアを消し炭にすると、討伐結果を残せないから、
ウラークルは、マンティコア達が、逃げ出す前に行動不能状態に焼いて行く。
ぎゃああぁぁぁぁぁ
ぐわあああぁぁぁぁぁ
マンティコア達は次々に火の精霊ウラークルに焼かれていく。
最初に脚を焼き、逃げられなくする。
逃げられないマンティコア達の胴体を抱きかかえ体全体を焼いて殺していく。
ウラークルの活躍で周りの草や木々に火がつき、パチパチと燃え始めている。
後は動けないマンティコアに、ツェベリとキスナエレアとケワレグが止めを入れるだけだ。
最後にマンティコアの頭を落とし、討伐成果にする。
「兄ちゃん、森の火も消さなくちゃ」
水鉄砲でバシュンバシュンと、圧搾水弾を周りの森に浴びせかける。
結局、戦闘らしい戦闘は起こらず、10頭のマンティコア討伐は終了した。
「あのー、貴方達を師匠と呼んでよろしいでしょうか?」
ケワレグ、ポトラ、ベセアがそんな事を言い出した。
……ヤダヨ、面倒臭いのは、これ以上引き受けられない。
君達とは報奨金を分配したら、お別れだ。
セーズルアの街までは送ってあげるけど。
翌日、ユパント村長にマンティコアの頭を引渡し、討伐依頼完了のサインをもらった。
「はあ~、こんなに魔獣が森の中に潜んでいたんですかー、お陰で助かりましたじゃ」
手を振る村長と村人達を後にして、俺達一行はセーズルアの街に戻るのだった。




