103「セーズルアの街」
俺達一行はセーズルアの街に到着した。
ハディゼキヌ領と違い普通の海辺の街だ。
海に面した漁業の街らしく、魚の匂いが街中に充満している。
こういう街だと魚料理が美味いんだよね。
今日はベッドで寝れそうだ。
「兄ちゃん、この街臭い」
ルリアは鼻をつまんで不快そうな顔をしている。
冒険者ルックに身を包んで、こういう言い方をするルリアは可愛いな。
「ルリア、これは魚の匂いだよ」
キスナエレアがアドバイスをする。
ルリアが生の魚の匂いを嗅いだのは初めての経験だろう。
うん、皆段々と冒険者風が板についてきた。
この中で、一人魔術師風な格好をしているのはナサラトット氏だ。
元々魔道研究所の所長だから、一番違和感が無い。
先の山賊からの戦利品を露店の商人に売り払った。
「お客さん、これだと銅貨30枚って所だねぇ、それで良いかい?」
店の胡散臭い雰囲気のオヤジが言う。
「銅貨30枚かぁ、よし!OKだ」
銅貨30枚、そんなもんだろうけど安すぎる気がするな。
元々資金には困っていないから、それでOKしたけど。
ツェベリに資金管理を任せているから、彼女に手渡す。
見つけた宿に馬車と荷物を預け、街を散策する事にした。
皆、魔族らしい特徴を隠すようにしているけど、すでにバレバレのようだ。
それでも排除しようと挑んでくる者がいないのは気が楽で良い。
漁師の親父の話に、何でも以前海の中にダンジョンがあって、漁師達が引き込まれたそうだが、
旅の冒険者が攻略してから、そのダンジョンは消滅したらしい事を聞いた。
……ほう、この世界じゃダンジョンって消滅するのか。
話によるとこの世界のダンジョンには、主がいると言う。
ダンジョンの主、すなわちダンジョンマスターが倒されると消滅するらしい。
考えてみれば、主が管理しなけりゃ宝箱や罠を設置する者がいないよね。
宝箱や罠、魔獣がいなければ、単なる洞窟だ、
ゲームの世界ではゲームマスターが設定してるんだし。
ニホバル達の世界には無い設定の一つがダンジョンのようだ。
「ふむ、面白いですな。恐らくこの世界の神が、ダンジョンを創っている可能性が考えられる」
ナサラトット氏が推理した。
可能性は捨て難いけど、最強の戦女神ってのが、ダンジョンなんか創るのかな。
戦神だったら、魔神ツヴァパードのように各地に戦乱を巻き起こしそうなものだけど。
それにしても誰も神の事を話す人がいないし。
目的地に行けば、もう少しは何か解るのかな。
一行は魚市場へ行く事にした。
漁港の街に相応しく、様々な魚が売られている。
マグロの競りみたいな物を見られるかな。
大型の魚を売っているには売っているんだけど、
残念ながら、そういう物は無さそうに見える。
「あ、あれは美味しそうですね」
目敏くビエルが何か見つけた様子。
大型のイカだ。
大王烏賊ってやつだな。
あれも魔獣の内かな。
魔獣っぽいと言えば魔獣っぽい。
普通のイカなら良さそうだけど、あれほど大きいと、
大味になって美味しくは無さそうに思える。
「イカの中に肉を沢山詰めて焼くんですよ、美味しいですよ」
イカ飯を連想させる料理だな。
しかし、あのイカを料理する発想が湧かないな。
あ、もしかしてドラゴン料理?
魚市場を見物しながらウロウロしていると、声が掛けられた。
「そこの冒険者の方達、ちょっと良いですか?」
声がした方を振り向くと、三人の冒険者達がいた。
名前を、男の冒険者の剣士のケワレグ、女の魔術師ポトラ、女の治療術士ベセア
魔獣討伐のクエストを受けたいけど、メンバーが心許ないらしい。
そこで魔族の多い6名パーティーのこちらに勧誘の声を掛けたとの事。
年長のナサラトット氏がチームリーダーと思われているようだ。
まあ、観光がてらの旅だから、特別急ぐ旅じゃない。
複数メンバーでの魔獣討伐という経験しても良いかな。
見れば、ルリアもキスナエレアも目を輝かせている。
ビエルは物足りなそうな顔をしている。
彼女にしてみればそうかもしれない、何たって人化したドラゴンなんだから。
冒険者ギルドに依頼票を見に行く。
壁に貼られている依頼内容は、
『魔獣マンティコア討伐。報酬:金貨50枚。複数のマンティコアが出没して、
シィニギ村が困っています、討伐をお願いします』
というのがあった。
マンティコアかぁ、人面で獅子の体で、尻尾にに毒がある奴か。
確かに誘ってきた人達じゃ心許無さ過ぎるな。
「ふうん、どうするかな」
「兄ちゃん、受けてみようよ、そのクエスト」
「私がいれば大丈夫ですよ」
「ビエルもやりたそうだなぁ、受けるか」
俺達は依頼を受け、宿屋へ戻り、馬車を出してシィニギ村へ行く事にした。
「あなた方のパーティーは、魔術師の方がリーダーじゃないんですか」
馬車に同乗したケワレグ、ポトラ、ベセアが驚いている。
またここにも驚く奴がいるのか、もう慣れっこだけど。
ナサラトット氏が人員紹介をする。
魔術師のナサラトット
音響魔術師で召還士のニホバル
ニホバルの妹のルリア
剣士のツェベリとキスナエレア
お目付け役のビエル
だーっ!その音響魔術って何だよ、ナサラトット氏の頭の中では、そういう理解かも知れないけど。
「音響魔術ですか、初めて知りました。それはどういうものなので?」
「パーティーのお目付け役? 意味が解りません」
「それにしても皆さんお強そうで、え?ギルドレベル1なんですか?」
そんな話をしながら、ニホバル達一行の馬車はシィニギ村へ向かう。




