二つのゴム鉄砲
新作の息抜きに執筆しました。
古い物にも古いなりの存在意義があると私は思います。
新しいばかりが良い事ではないのです。
そこは山の中の小さな小学校。子ども達は鬼ごっこや缶けり等をして遊んでいます。
ある日、学校の先生が子どもたちにゴム鉄砲をくれました。割りばしを削って長さを整え、輪ゴムを使って組み上げた先生のお手製です。
子ども達は新しいオモチャに大喜び。的を作って皆で射的遊びを始めました。みんなが楽しく遊んでくれるので割りばしのゴム鉄砲はとても喜んでいました。
それから少しして、別の先生がプラスチックのゴム鉄砲を子ども達に渡しました。輪ゴムが沢山一度に打てて、見た目もカッコいいゴム鉄砲を見て子ども達は大興奮。子ども達はプラスチックのゴム鉄砲に夢中になって割りばしのゴム鉄砲の事を忘れてしまいました。
子ども達はお家に帰り、お休みに入った学校でプラスチックのゴム鉄砲が言いました。
「子ども達はカッコ良くて新しい僕にメロメロさ。君はオモチャ箱の中でゆっくり休んでなよ」
割りばしのゴム鉄砲は言いました。
「確かにキミはカッコいいさ。輪ゴムだって僕なんかより沢山撃てる。子ども達はみんなキミに夢中だね。でも、僕はキミに負けているとはちっとも思ってないよ」
「ははは。負け惜しみだね。じゃあ、明日から次のお休みまでどっちが沢山子ども達に遊んで貰えるか勝負しようじゃないか。どうせ僕が勝つけどね」
プラスチックのゴム鉄砲は連日の子ども達からの人気っぷりに鼻高々でそう言います。
「いいとも。でも、一つだけ言っておくよ」
「なんだい? 負けた時の言い訳かい?」
「いいや、違うさ。オモチャはね、遊んで貰うだけの存在じゃあないんだよ」
「はん。遊んで貰えない負け惜しみだね」
次の日の朝になりました。遊びの時間になると子ども達はゴム鉄砲で遊び始めました。勿論使われるのはプラスチックゴム鉄砲で、割りばしのゴム鉄砲は見向きもされません。
「あんな事を言っていたけど、オモチャは子どもに遊ばれてこそさ。見なよ僕の人気っぷりを」
それからもプラスチックのゴム鉄砲はいつも人気で割りばしのゴム鉄砲はオモチャ箱の中に入ったままです。勝負の時間も二日過ぎました。
子ども達が帰った学校で、プラスチックのゴム鉄砲は言いました。
「もう負けを認めたらどうだい? 僕は沢山の子ども達に遊ばれたけど、キミはオモチャ箱の中から出れてもないじゃないか」
割りばしのゴム鉄砲は言いました。
「いいや、認めないよ。僕はキミにも負けてない」
「ふん、いいさ。あと三日オモチャ箱の中に入ってなよ。僕が勝つのは確実さ」
プラスチックのゴム鉄砲は勝利を確信していました。
しかし、次の日の遊びの時間に事件が起きます。沢山の子ども達に遊ばれたプラスチックのゴム鉄砲が壊れてしまったのです。
子ども達が先生に直して貰えるか聞きに行きますが、部品が無ければ先生達も直せません。先生は電話をして壊れた部品を注文しますが、届くのは三日後になるそうです。
子ども達はどうしようかと困っていました。すると一人の子どもが割りばしのゴム鉄砲の事を思い出します。
割りばしのゴム鉄砲はオモチャ箱から取り出され、子ども達と一緒に遊べるようになりました。
それから二日が過ぎて勝負が決まる最後の日に、子ども達と沢山遊んだ割りばしのゴム鉄砲も壊れてしまいました。
子ども達は先生に直して貰えるか聞きに行きました。すると先生はこう言いました。
「割りばしのゴム鉄砲は簡単には直せます。直し方を教えますから皆で直しましょう」
子ども達は大喜びです。みんなで割りばしを削って壊れた部品を作り、割りばしのゴム鉄砲はあっという間に直りました。
さらに、皆で沢山飾りを作り割りばしのゴム鉄砲にくっ付けてドンドンカッコよくなりました。
子ども達はみんな笑顔で割りばしのゴム鉄砲で最後の一日も遊びました。
子ども達が帰った学校で割りばしのゴム鉄砲は言いました。
「オモチャは子ども達と遊ばれるだけの存在じゃないんだ。子ども達を育てる存在なんだよ。子ども達は遊びながら沢山の事を勉強するんだ。僕達はその為にココに居るんだよ」
プラスチックのゴム鉄砲は言いました
「キミが子ども達と遊ぶ姿を見てよく分かったよ。キミは子ども達に自分で何かをする大切さを教える事が出来た。僕はただ遊ぶだけさ。どうか許して欲しい。僕はキミにとてもひどい事を言った。本当にごめん」
プラスチックのゴム鉄砲は心から謝ります。
「良いんだよ。明日にはキミの修理が終わる。これからは僕とキミとで子ども達を見守ろう」
「ありがとう。改めてよろしく頼むよ」
こうしてゴム鉄砲達は仲直りしました。それからは二つのゴム鉄砲が子ども達の大切な遊び道具になったそうです。