4
小屋の扉を開けて外に出ると、風が勢いよく吹き寄せてきた。ぼくの髪、衣服は煽られ、なびき、乱れた。
思わず目を瞑ったぼくは、その夜風に対し、特別な感情は持たなかったが、何か嫌な予感でも抱かせようという自然の悪意のようなものを感じ取ったという、そんな気がした。
目を開けると、彼方で爆ぜる流星の爆風が見える。ちょっと綺麗だが、不吉極まりないもので、破滅の象徴だ。じっとしていれば、押し寄せてくるその破滅の時の濁流に飲み込まれ、ぼくは死んでしまうに違いない。
ぼくは、生きねばならないのだ。死にたいとか、死のうと思うことがない以上、ぼくの生命が続く限り、ぼくが生きることが可能なところで、その力を全て余すところなく消費しなければいけないのだ。
そしてぼくが今いるここは、先日まで病弱な母と共に暮らしていたこの粗末な草庵は、ぼくがサバイバルしていくことを不可能にするところなのだ。
やがて流星はぼく等のところにも落っこちることだろう。爆風で焼け死ぬにせよ、流星に潰されるにせよ、死はここにおいては確定事項であり、楽観視出来ることではなかった。
粗末な環境で育ってきたぼくは、粗末な装備品を肩に掛けたカバンに詰め込み、旅立ちの壮途に立つ。
悲壮なのだろうか。あるいは、世界各地でぼくのような危険な運命に見舞われた子供がいるのだろうか。
感傷に浸っている余裕はなかった。流星は彼方に降っている。であれば、向かう先は流星の頭の方ではなく、尾の方だ。
ぼくは夜空に向かって指を差し向け、断続的に落ちる流星の弧をなぞる。
うんと頷く。
そしてぼくは、山脈まで続く平原の広がりを背にすると、海のある方に振り向いて、小走りで出発するのだった。