表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コンビ二家族とAIの妖精  作者: 坂崎文明
コンビニ家族編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/25

ドミナント戦略、開店セール

 翌日から<8-12>本部の一夜城店舗の開店セールがはじまった。

 コンビニの開店セールとは思えない、八割引という破格の値引き戦略に村上家のコンビ二は苦境に陥っていた。

 本部直営一夜城には、朝からお客が殺到して、逆に村上家のコンビ二は閑古鳥(かんこどり)がないていた。


「テンチョウ、キョウハ、オキャクサンイナイネ ヒマダネ」


 (グエン)さんはしょんぼりして、うなだれている。

 責任を感じているのだろう。


(グエン)さん、俺らの様なちっぽけな人間が、<8-12>の本部に逆らうような大それた真似をしたのが、そもそも、間違いだったんだよ」


 店長の春樹はリーダーにあるまじき弱音を吐いた。


「何を言ってるの! お父さん、あなたがしっかりしないと、このコンビには潰れちゃうのよ」


 副店長の妙子は叱咤するが、春樹の背中に力はない。


「お父さん、見損なったわ。こうなったら絆ひとりでも徹底抗戦よ!」


 絆はコンビ二の前にテントを張りはじめた。

 ヘルプにハネケと風守結菜ついて店頭販売をはじめた。

 声を枯らして、叫び続けて声がガラガラになっていく。

 そして、夕方、絆は泣きながらコンビ二の休憩室に帰ってきた。

 ハネケも風守結菜も疲れを隠せない。


 春樹は最早、戦意を喪失したのか、まだ夕方六時だというのに、決して閉まらないはずのコンビ二のシャッターを閉め始めた。

 雑誌を立ち読みしていた客ふたりも仕方なく引き上げていく。

 副店長の妙子も諦めたのか、春樹に従って店じまいをはじめた。


 その日の村上家のコンビ二の売上げはたった十万円だった。

 絆たちの店頭販売の健闘によるものだった。

 それに対して、本部直営一夜城店舗は脅威の日販三百万を記録した。

 この調子で売上げが推移すれば、村上家のコンビ二は早晩、潰れるしかないのは容易に想像できた。


 元々村上家のコンビ二の前は水田だったのだが、<8-12>本部が大枚はたいて購入してアスファルトで固め、広大な敷地に大型トレーラーで輸送してきた移動店舗を設営した。

 それが<一夜城>の手品の種であった。

 しかも、もはやコンビ二とは言えない、スーパーかショッピングセンターのような多店舗コンビ二群が展開していた。





        †





「皆さん、名演技でしたね」


 AIの妖精ルナがタブレットPCの上に浮かび上がって、にっこり笑っていた。

 そこは村上家のコンビ二の休憩室である。


「絆ちゃん、女優かと思っちゃたよ」


 ハネケが大笑いしている。


「<泣きの絆>という仇名にしちゃおうかと思う」


 風守結菜が絆をからかう。


「私も必死なんだから」


「ごめんね。でも、笑いを噛み殺すのが大変だったんだから」


 結菜も大笑いする。 


「オトウサンモ ヘタレ スゴカッタデス」


 (グエン)さんも春樹の迫真の演技を褒めた。


(グエン)さん、あれはうちの人のいつもの愚痴よ。演技じゃないわ」


 妙子が皮肉る。


「おいおい。そうじゃないだろう! (グエン)さんだって」

 

 春樹は反論した。


「ボクノ エンギモ ウマカッタデスネ」


 (グエン)さんはどうだと言わんばかりに胸を反らす。

 みんなが大爆笑する。


「それにしても、ルナちゃんの作戦を聞いた時は、本当に驚いたよ。武田信玄かと思ったよ」


 春樹は正直な感想を言った。


「この作戦のポイントは、私達が負けてるように見えて、実は勝ちつつあるということを、敵に気づかせないことでした。それで、皆さんにそういう演技をお願いしました。最後に立ち読みしていたお客も敵の手下の黒服軍団の変装した者でした。ただ、今回の作戦において、春樹お父さん、妙子お母さんの存在が大きくて、そして、絆ちゃん、ハネケちゃん、結菜ちゃん、(グエン)さんなどのコンビ二のメンバーの力も必要でした」


 AIの妖精ルナはそこで一息入れた。


「すでに私達は勝ちつつあります。あとは明日に備えて寝るだけです」


 ルナの言葉にみんなが応えた。


「明日はガンバルぞー!」


 春樹の掛け声にみんなの声が重なった。

 村上一家のコンビ二の反撃がはじまる。

 次回、AIの妖精ルナの恐るべき作戦が炸裂する。

 コンビ二家族とAIの妖精の前半のクライマックス「ドミナント戦略 VS 弱者のランチェスター戦略」をお楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ