1.「関係ない」
この小説はフィクションです。また、リストカットなどの描写が含まれるため、苦手な方は閲覧をご遠慮下さい。
あたしは、いつまで、こんな紙切れを大事そうにとっておいてるんだろう―。
「ごめん」と書かれた、へんてこなキャラクターのメモ紙。そんなにこれが大切なのか…。
ほんと…
馬鹿みたい。
いつまでも思い出にしがみついて…。思い出の中を生きることなんて、出来ないのに…。
1年経った。
好きだと伝えた
あの日から。
会えなくなって…
半年かな。
学校もバラバラで、メアドを交換する勇気も無くて。
臆病なあたしは
アルバムの中を行ったり来たりして、ただ泣いた。
卒業式でさえも、
涙なんか一滴も流さなかったくせに、ほんと強がり。
あのとき、
涙ひとつ流せば、
何か変わったかな。
…きっと、
何も変わらない。
好き、それはいらない感情。
同じクラス、
隣の席、
他愛もない会話、
それだけで
良かった。
好き、気付かなければよかった、そんな感情。
あの人に可愛い彼女ができたとき、あたしはなんて言ったっけ。
よかったね?、
おめでとう?、
それとも…
どれにしても、
笑えない。
あの人に彼女ができる前、ある噂が流れた。
あたしとあの人が付き合っているという噂。
あの人のことを好きだった子に、逆恨みされたこともあった。
あたしはなるべく誤解されないように、あの人を避けた。
―あんたには関係ない。
いきなりそう叫んだこともあった。
話しかけられても、
無視した。
噂を流していたのは、
あたしの友達だった。
「ごめんね。」
一応、彼に謝った。
彼は無表情で
「なんで謝るの?」と訊き返した。
「噂のこと。」
あたしも無表情でそう言った。
彼は、それから黙ったままだった。
あたしも、もう一言もしゃべらなかった。