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今でも容易に思い出すことができる。この世界に来たときのあの日。
たった一人、突如知らない地に送られた私たちは不安に押しつぶされそうな中ゲーム内に存在した同盟という繋がりに縋るしかなかった。
連絡を取り合い、身を寄せ合ったが、寄せ合ったからと言って状況が良くなるわけではなく、むしろ自体は混迷を極めた。
自殺する者も居り、誰にぶつけたらいいのか分からない苛立ちと不安が場を覆っていた。
今思えば、あの行動はそんな状況に耐え切れなかったからなのか、純粋に誰かの助けになればという思いで言ったのかは思い出すことができない。
私は盟主という立場を借り、彼らのリーダーとして纏めた。
この行動が結果としてのちの帝国の中央集権化を後押しすることになるとは思わなかった。
この世界は元々、都市国家に近い形態だったが、なぜ都市の外に領土を広げなかったかというと、城の外には魔物という存在が跋扈しており、これから身を守るために王の力という魔物の侵入を防ぐ防御術式が存在したおかげで都市周辺の安全は確保されていた。
だが、この問題は彼ら異人がこの世界に来てその知識を伝播し始めると状況は変化した。
魔物というのは凶悪な存在で訓練された兵士が束になってもなかなか倒せない相手であったが、異人が齎した銃などによって魔物の殲滅がより効率的に安全に達成することができ、人間の版図は急速に拡大した。
中央集権によって権力が集中していた帝国は動きの遅い他国と比べ急速に領土を広げ、いくつかの人間の国家も併合した。
そしてこの大陸中央には帝国という巨大な軍事国家が誕生することとなった。