1、事案発生
唐突だが、俺は平凡だ。
昔から成績は常にど真ん中だし、運動関連も大方真ん中。担任教師全てからもれなく過不足なし、しかし備考もなしの評価を頂き友達は多いがクラスの中心ではない、居ても困らないが居なくても大差ない、そんな日々を過ごしていた。
ざ、平凡。谷山という名字もたいへん気に入っている。いなそうに見えて学年に三、四人いるような立ち位置が素晴らしい。
まあつまり。
俺は目立ちたくない。しかし嫌われたくもない。そういうことだ。面倒な性格だということは小三の頃から把握済である。
しかし今年の春、放課後に事件は起きた。
うちのクラスの黒髪美少女、咲野美優から声を掛けられたのだ。
凛とした、とても可愛らしい声で俺を呼び止めた。
「谷山くん。少しお時間いいですか?」
その声は何処か緊張しているような響きを含んでいる。小学生の頃からの友人岡本が、何かを察した様にニヤニヤ笑顔で俺の肩を叩いた。「あとで報告よろしく」
咲野はいっそわかりやすく赤くなった。りんごみたいだ。
こちらもいよいよ照れ臭くなってくる。
「あの。岡本くんと仲良いんですね」
「え、岡本?ああ、アイツはただの腐れ縁だよ」
ふっと目尻を緩める。咲野はまた赤くなった。
ここまで来れば誰だって察せる。まあ冗談抜きで俺は顔だけは人より優れていると思うから、多分彼女は俺に好意をもっているのだろうとみて良さそうだった。
まあ基本的目立ちたくはないのだが俺も咲野のことは嫌いじゃないし、嫌でないのに目立ちたくないと断ればそっちの方が目立ってしまうだろうし嫌いじゃないしつまり嬉しい。あわよくば付き合いたい。
「えっと、要件はなに?」
しかし平凡な俺は動じない。あんまり表に出しても見苦しいからな。内心はドキワクだ。
咲野が頷いて、髪を耳にかけた。
「あのね、谷山くん。……今付き合ってる人とか居るかな?」
ふぅううううう!!ほぼ勝ち確!もじもじする姿がとても愛らしい!!
俺は顔に出さず答えた。
「居ないよ。……どうしてそんなこと聞くんだ?」
「あ、そうなんだ……!なるほどね、わかった」
顔を覆ってこくこく頷く咲野。反応がいちいち可愛らしい!そしていじらしいっ!!
「じゃあ、思い切って言うね。……谷山くん。お願いがあるの」
きたきたきたきたきたっ!来たッ!!
「なに?」
「私の為に、岡本くんと絡んでください!!」
「ああ、もちろ岡本ォ!?」