第3話 お前はもう死んでいる
誤字脱字目立つと思いますが見つけていただけたら教えていただけると助かります!
皆さんに楽しんでいただけるよう頑張ります!
2019.11.5 改稿
『め……な……い。』
声が聞こえる。
それは耳に届くというよりは頭に直接響くような不思議な感覚。
美しい声だ。
俺は真っ先にそんなことを思った。
『めざ…な…さい。』
さっきよりもより鮮明に心地よい声が響く。
だがしかしまだ全てを聞き取ることは出来ない。
『…起きないわね…。あれ?私ちょっとやりすぎた?どうしよう…。』
ようやく聞き取れた美しい声の持ち主が不意に物騒なことを言う。
やりすぎたってなんだ?
俺、この人になんかされたのか??
そんなことを思いながら俺は暗く閉じられたままの瞼を開ける。
「うわっ、眩しっ!」
反射的に再び瞼を閉じてしまう俺。
目を開けたその先には光が溢れていた。
……ん?この光…ちょっと待てよ?
俺はこの光に見覚えがあることに気が付いた。
「あ!よかった…ちゃんと目覚めたわ!」
俺が反応を示したことが嬉しかったのか美しい声の主は弾むような声を上げる。
そうだ、俺は玄関で変な光に包まれてそれから…。
以降の記憶がないことに今更気付いた俺は手で目を守るようにして覆いゆっくりと周囲を眺める事にした。
ゆっくりと目を開けるとそこは玄関などではなく、まったく見知らぬ場所であった。
海外の神殿に使われているような装飾を施された純白の柱。
美しくまるで今にも動き出しそうな天使の彫刻。
そしてそれら全てを差し置いて圧倒的な存在感を持つ筆舌しがたいほどに美しい女性。
美しい金色の髪は綺麗なウェーブがかかっていてその髪を触ろうと無意識に身体が動いてしまうんじゃないかと思わせるほどに不思議な魅力に溢れている。
身につけてる服はギリシャ神話に出てくる女神様が着ているような滑らかな絹のローブ。
そしてローブ越しからでもわかるそのスタイル。
芸術に特に詳しいわけでもない俺ですらこれが芸術なのだと納得せざるを得ない程に完成された美がそこにはあった。
「んんっ、ようやく目覚めましたか。」
咳払いひとつとってもやはり美しい。
思わずずっとその姿を眺めていたい衝動に襲われるが俺はなんとか理性を踏み止まらせ現状の理解に努める。
そういえば今、やっと目覚めたって言っていたな?
彼女はここが何処なのか知っているかも知れない。
なんとも恐れ多いような気もするがまずは目の前の女性に声をかけることにした。
「あの、えっと。はじめまして。俺の名前は…。」
まずは自己紹介からと俺が話し始めたその時。
「柊 智也さんですよね。知っていますよ。」
「っ!?」
俺は恐らく初対面であるはずの彼女に名前を知られていたことに驚愕する。
「私があなたの名前を知っていることがそんなに驚きですか?」
俺の心を見透かしたかのように彼女が微笑む。
そして当の俺はといえば…。
「(俺の名前を知ってるってことはどっかで面識が…?いや、まてこれだけの美少女に会っていて今日まで記憶になかった?そっちの方がありえないだろ!)」
絶賛パニック中であった。
「智也さん?」
「っ!は、はい。」
突然名前を呼ばれ俺はテンパりながらもなんとか返事を返す。
「まずは初めましてですね。私の名前はエルフィーナ、あなたの世界で言う【女神】という存在になります。以後お見知りおきを。」
俺にはこの女性が何を言ってるのか理解できなかった。
女神?いや、綺麗なのは認めるけど自分でそれ言っちゃダメでしょ。
周りにチヤホヤされすぎてそういうキャラになってしまったのだろうか?
『なんというか可哀想』それが正直な感想である。
一見綺麗でまともそうな人に見えたけど頭が残念な人だったのか…可哀想になぁ…。
しかしこの女性が電波ちゃんとなるといよいよもってこの場所が分からない。
身代金目的の拉致か?
それともあれか怪しい実験の被験体にされるとか?
頼りの綱が電波だったという事実は俺にとってかなりのダメージだったようだ。
ありえもしない普段の思考ならば一蹴するような妄想が現実に思えてきてしまう。
どうしようかと本気で悩み始めた時、目の前の女性が急に怒りだした。
「はぁー!?誰が電波ですって!?私は正真正銘本物の女神様なのよ!?なんで信じないのよ!!天罰食らわせるわよ!!」
さっきまでの威厳ある口調はどこにいったのか子供っぽい口調で怒りだす自称女神様。
あれ?俺一言も電波なんて喋ってないよな?
てかやっぱりキャラ作ってたのかよ。
ってそれどころじゃなかった。
今はあんたの相手してる暇はないんだ!
「いや、普通初対面の人に自分は神ですなんて自己紹介されたらヤバイ奴って思うでしょ?嘘を司る神かなんかとかなら説得力ありそうですね!」
言いようのない不安がエルフィーナと名乗る彼女に八つ当たりとなって飛び出す。
しまった、これではただの八つ当たりだ。
俺はすぐに今のが失言だったことに気付き謝罪しようと声を発せようとする。
「あ、ごめん…。今のは…」
「あったまきた!女神に対してそんな態度をとる奴にはお仕置きが必要よね!?覚悟しなさいよ!!『落雷せよトール』!」
が、しかしそれが伝わる前に彼女の導火線は爆弾の点火を済ませてしまったようだ。
彼女の言葉に呼応するようにさっきまでの明るさは何処へやら周囲は暗雲立ち込める暗い世界へと姿を変える。
「いやいやいやいやいや!ちょっと待て!なんだこれ!?CGか!?CGだよな!?ごめんて!俺が悪かった!悪かったからぁぁぁぁーーーー」
無論これがCGなんかでないことは肌を刺すような威圧感から分かっていた。
ゴロゴロと彼女の怒りを表すような音が暗雲から聞こえる。
「大丈夫よ。死なない程度には加減してあげるわ?」
にっこりと微笑む彼女を俺はただ引き攣った顔で見続けることしかできなかった。
そうか…彼女は本当に女神様だったわけね…。
後悔先に立たず、目の前が真っ白に染まる。
それと同時にチリチリと感じる巨大な熱量。
至近距離に雷撃が落ちたのだ、これくらいは当然だろう。
そういえば雷に打たれても生きてる人っているんだったよな。
ははっ、じゃあ大丈夫なのかな…。
俺はいずれ訪れるであろう身を裂くような痛みを想像しないように現実逃避を始める。
力なき一庶民のできる唯一の対抗策など現実逃避くらいしかないのだ。
☆ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー☆
「これくらいでいいかしら。」
そんな風にして現実逃避を続けることしばらく、この地獄が終わることを意味する言葉が轟音に紛れて聞こえる。
あれ?もう終わりなの??俺まだ雷に打たれてないよ?
いや、別に打たれたいわけじゃないけど手加減って言ってたし絶対当てられるもんだと思い込んでいた。
だが実際はビビる程度で許されたらしい。
本気で怒ってたわけではないということを知り俺は安堵のため息をつく。
「うぇっ!?うっそ!なんであなた無傷なのよ!!」
だがしかし雷撃も収まり先ほどまでの明るさを取り戻して告げられた言葉はどう考えても当てるつもりだったとしか思えないセリフであった。
「待て、まさか本気で当てる気だったのか…?」
俺は信じられないものを見るかのような顔を浮かべる彼女に確認をとる。
「……ちょっとこいつの運命力をなめてたわね。いやいやだからって神の怒りを受けて無傷とかありえるの!?というかそれだけの運命力を持つ人間は私は…まずい…だいぶまずいわよね…!?いっそ存在ごと消し去って…。」
しかし彼女は俺の言葉など聞こえていないのかブツブツと何かを呟いている。
前半はともかく存在ごと消し去るってなんだよ!!
こえーよ!!
「あのー、エルフィーナさん?」
「…っ!なにかしら!?」
俺の言葉に彼女は肩を震わせ返事を返す。
「えっと、まずは先程の失言について謝罪を。電波とかいってすみませんでした!」
俺が真っ先に行ったのは謝罪。
決して存在を消し去るって言葉にビビったからではない。
ビビったからじゃないからな!!??
「……ふぅん。どういう心変わりか知らないけどまぁいいわ。私は女神だもの、寛容な心で許してあげるわ!」
「ありがとうございます!」
俺は安堵の溜息を再び吐く。
いやー危なかった。
あんな雷また打たれたら今度こそ精神的に死んでしまうところだ。
……寛容な心を持ってるならさっきのも…。
「もう一発いっとく?」
「すみませんでしたぁぁぁぁー」
女神様の有無を言わせぬ脅しに俺は全力で土下座する。
あぁ、やっぱりこれ心を読まれてるってやつか…すげぇ…。
「当たり前よ!女神をなめないことね!!」
ふふん!と自慢気に語る女神様。
どうやらこっちの口調が素らしい。
というか謎の光の次は女神様かよ…。
俺は今日、といっても俺がここでどれだけの時間意識を失っていたのかわからないが今日一日を振り返る。
事故死の可能性が二回にさっきの雷を含めて感電死の可能性が二回、そして他殺の可能性が一回に…あの光はまぁ死にそうな要素がないから省いてもいいだろう。
「九死に五生を得てしまったわけか…!」
俺は自分の運の良さに少しテンションが上がる。
「九死に五生??盛り上がってるところ悪いけど、あなた既に死んでるわよ?」
………は?
それは何気なく伝えられた衝撃の一言。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーー!?」
今日一の絶叫がその場に響いた。
※次回更新は未定です。
未完のまま放置は絶対にしないので気長に温かく見守っていただけると嬉しいです!




