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第37話 変わらない日常

新章開幕です!

開幕ですが…日常的な描写が多すぎて遅々として物語が進まない…!

もっとテンポを意識していきたいと思います。

「レオン!!」


バタンと乱暴に開かれた部屋の扉。

その音をかき消すほどに大きな声で俺を呼ぶその男。


「あー、っと…よう!」


色々と伝えるべきことはあるのかもしれないが俺はとりあえず軽い挨拶を返す。

挨拶は日常生活の基本である、だからこそ挨拶をされてそれを邪険にするやつなど…。


「なにが!よう!だ!この馬鹿野郎!」


…いないと思ったが俺の勘違いだったようだ。

ゴチンッと響く鈍い音。

その音は俺の頭上へと振り下ろされた怒りの鉄槌によるものである。


「いってぇ!!っ!?うぉっ!?ってぇ!!」


身体の芯まで届くような重厚な衝撃。

その衝撃は痛みとなって脳天を揺らす。

あまりの痛みに一瞬仰け反るが、その動きによって今度は筋肉痛のような痛みが全身を駆け巡り俺は二重の苦しみを味わうことになった。


「いきなり何するんだよ!こっちは怪我人だぞ!?」


「うるせぇ!この自殺志願者が!約束も守らず散々な無茶しやがって!」


「なんだと!?やんのかこの野郎!!」


「上等だ!お前の無謀さを身をもって知らしめてやるぜ!」


売り言葉に買い言葉。

痛みに悶える俺とその男、()()()()との口喧嘩勃発である。

まぁ、ヒューズが何のことを言っているのかは分かっているが冒険者とは常に死と隣り合わせの職業だ。

たしかに今回は無茶をした自覚はあるが、何度も言ったように逃げられる保証なんてものはなかった。

だからこそ俺は戦うことを選んだのだ。

その結果、俺がたとえ死んだとしてもそれは自己責任である。

冒険者である以上、そんなことは当たり前だというのにこの男は何をそんなにキレているのか。

ギルドマスターともあろう者がその辺りを理解していないわけがない。

なんだ?会って間もないというのにそこまでの情が俺にあるとでも言うのだろうか?

……いや、分かってる。

そんなものは建前だ、きっと俺がひねくれているのだろう。


「俺はなぁ…お前に…もしものことがあれば……あれば……。」


声を押し殺すように話すヒューズ。

あれ?な、なんだよ?マジで心配して……?


「きっと責任問題になって今の役職は剥奪!そのあとアインズさんに何をされるか……お前にこの恐ろしさが分かるか!?!?」


「全部自己都合じゃねぇか!!!」


心配の[し]の字もなかった。

まったくなんて野郎だ!

そこは嘘でも心配を装う場面じゃないのか!


「うるせぇ!我が身かわいさで何が悪い!」


「それでもギルドマスターかよ!?」


「そうだ!それでも俺がギルドマスターだ!」


ダメだ、この野郎開き直ってやがる…!

俺が更なる文句を言おうとした時。


「さっきからあなた達うるさいんですよ!!ここは教会ですよ!?もう少し静かにしてください!!」


「「あ、はい!」」


突如として開けられた扉と叫ぶような大声。

神父風の…いや、神父の声に俺たちは気圧されてしまう。

さっきまでの言い争いはどこへやら今この部屋は静寂に包まれた。


「………。」


「………。」


き、気まずい。

しかしながらその静寂はヒューズの方から崩された。


「…いくつか話があるんだが、とりあえず、お前がここに運ばれるまでの経緯を話さんといかんな。」


俺はヒューズの言葉に頼むといった風に頷く。


「まず今の時刻は丁度昼ぐらいだ。お前は丸一日以上眠り続けていたんだよ。経緯といっても大体が予想通りだと思うが一昨日お前にギルドからの指名依頼という形をとった後のことだ。ウォー・アトラスの報告をした調査員から新たな情報が入った。カリジュの森付近に真新しい、とある大穴が開いているとな。」


ヒューズに言われて窓の外を覗くと、そこには平和に広がる青空があった。

どうやらここは二階らしい。

下に見える人々の営みがより一層平和さを際立てる。

俺が倒れた時は既に日没寸前、空の色を見れば確かに俺は眠り続けていたようだが、1日以上というのは驚きであった。


「目撃されたウォー・アトラスに新規で出来た大穴なんてもんの情報が同時期に重なれば、そこに()()が存在している可能性は、ほぼほぼ1間違いねぇ。あの時は流石に冷や汗をかいたぜ?だから俺はすぐさま森へと向かった。」


「…?ギルドマスターが直々に?」


「馬鹿野郎、一刻一秒の時間も惜しいって時にいちいち冒険者を募るなんて時間があるわけねぇだろ?それに並の冒険者を向かわせたところでヤツ、王鎧蟲には勝てやしねぇ。だから俺がわざわざ出向いたんだよ。」


なるほど、理由としてはキチンと筋が通っているように感じる。

まぁ、これがギルドの長たる責任者がやっていい行動かと問われれば批判する者もいるかもしれないが俺個人としてはその姿勢を称賛したい気持ちになった。


「森の入り口なんざいたるところにあるからな、探知スキルをフルに使ってひたすら走り回ったよ。…どんくらい探し回ったのかは忘れちまったが結構な距離を走り回った結果、俺の感知に森の中腹には相応しくないバカでかい魔力が引っかかってな。その魔力の方向に進んでいくと今度はアホみたいな火柱が上がっていたわけだ。」


ヒューズの言葉は続く。


「俺がそこに着いた時には既に息絶えたウォー・アトラスと王鎧蟲、その横でぶっ倒れてたお前、そしてそんなお前を守るように寄り添う疲労困憊な一匹の魔物…いや、あの様子だと従魔か。

そんな光景が広がってたよ。まぁ、あとは想像できるだろう。俺は王鎧蟲共の死骸を回収した後、ぶっ倒れたお前達を背負ってここに連れてきたわけだ。」


やれやれといった様子で肩をすくめるヒューズ。


「そうか…さっきは悪かった。まずはありがとうって言うべきだったな。」


聞く限りかなりの迷惑をかけてしまったようだ。

俺は素直にヒューズへ頭を下げる。


「あー…いや、こっちも悪かったな。今回は全容がはっきりする前に依頼した俺のミスだ。もう少し情報を集めて確証を得てからにするべきだった、すまん。」


俺の謝罪にヒューズもまた頭を軽く下げる。


「じゃあ、おあいこって事でいいか?」


「…ふっ、お前はどんな大物のつもりだよ。」


暗くなった空気から和やかなものへと空気が変わる。

少しおどけたような俺の言葉にヒューズは笑った。

こういうのは長引くと面倒なことになるからな。

とっとと円満な空気にするに限るのだ。


「そういえば、ガルの姿が見えないけどあいつはどこに?」


「ガル?あぁ、レオンの従魔か。あの犬っころなら俺の権限で保護してあるから安心しろよ。もう二、三日もすれば動けるようになるだろうし、そしたら迎えにこればいい。にしてもあんな魔物をよく手懐けたな?」


ヒューズの保護という言葉に俺は安心する。

よかった…森の中に置いてきたとかじゃなくて…。

にしてもギルドマスターがわざわざ権限を使ってまで保護というのは少し引っかかる…けどまぁ無事ならいいか。


「ガルは犬じゃなくて狼だぞ?手懐けたっていうか餌づけしたっていうか…まぁいいや、それで話っていうのは?」


「ん?あぁ、そうだったな。話ってのは他でもないお前のランクについてとそれに付随することだ。」


なるほど、そういえば俺が森に行った理由ってその為だったな。

少しばかり波瀾万丈な出来事が多すぎてすっかり忘れていた。

俺はヒューズに会話を続けるよう促す。


「まず今回の依頼についてだが、もちろんこれは達成となる。更に当初の依頼内容であればC〜B程度といったランクのものであったが今回に至ってはそこに王鎧蟲というイレギュラーな存在が混ざりこんでしまったわけだ。それによって依頼内容が大きく変化するのは分かるな?にもかかわらずお前は見事、王鎧蟲を討伐してみせた。成果でいえばA〜Sランクに相当する功績となるわけだ。」


おお、改めて言われると最下級の冒険者がそんな上位の依頼を達成するとすごくないか?

まぁそれだけ死闘だったのも確かだけどさ…。

俺はヒューズの言葉に頷き続く言葉を待つ。


「よって、この功績をもってレオン、お前を冒険者ランクをAランクまで引き上げしようと思うんだが…」


「Aランク!?」


ヒューズの口から発せられたのは驚きの発言であった。

Aランク…いきなりAランクっすか…。


「あぁ、こんなことは異例中の異例だが幸いにも俺自身が倒れたお前と息絶えた王鎧蟲を発見したということ、更には王鎧蟲そのものの死骸、その二つの証拠がある。もちろん妙な疑ぐりや一定層の批判はあるだろうが、そんなものはCだろうがBだろうが大幅な引き上げしてそれを公表した時点で確実にわいてくる存在だ。だったら上げられるところまで上げてしまった方が後々が楽なんだよ。」


ふむ…つまりは格上げをされたという事実がある限り例えばCからBといった段階的なランクアップを果たしても確実に噛み付いてくるからAランクスタートにすることでその回数を減らすということだろうか?


「まぁ、そういう理由でAまで上げてしまいたいところなんだが…その為にレオンにやってもらいたいことがもう一つあってな。」


「?俺に?」


「あぁ、Dランク以上の冒険者から入ることが出来る()()()()を踏破して、ある称号を入手してきて欲しいんだ。」


「…称号?」


聞きなれない言葉に俺は首を傾げる。

いや、称号って言葉自体は知っているよ?

でもこの世界においての称号というものがいまいちピンとこない。

俺の思う称号とは例えるのなら二つ名のような誰かに呼ばれてそれが定着したものといったイメージがある。

だが、ヒューズの言い方ではまるでアイテムのように自分で獲得するもののように感じる。


「うん?称号のことは冒険者登録をする時に習っただろ?」


「えっ?」


初耳であった。

そんな話…されたか?

いや、待て!そういえば俺、依頼についても聞かされてなかったよな!?

つまりは聞き逃しではなく本当にされてない可能性のが高い気がするんだが!?


「はぁー…ちゃんと話は聞いておけよ…。」


俺の全く知らないといった態度に呆れ半分にため息をつくヒューズ。

待て待て待て待て!俺、本当に聞かされてないんだって!


「いいか?称号ってのはな…。」


理不尽な評価を受けた気がするがヒューズが説明を始めた為、俺はぐっと堪える。

ちくしょう…俺は無実なのに…!


「何かの偉業を成した時や同種の魔物を一定数討伐した時に手に入るものが称号だ。前者で言えば今回お前にとってきてもらいたい【試練の塔踏破者】や有名なもので言えば【〜魔法を極めし者】とかそういった類のやつだな。後者はそのまま【ゴブリンキラー】だとか文字通りの称号が多い。称号によってはステータスに補正がかかるものも多いから冒険者ならちゃんと覚えておけよ?」


「な、なるほど。」


確かにそれは有益な情報であった。

俺は聞かされてなかったけど。

称号でステータスに補正がはいるというのなら是非集めておきたいものだと思う。

俺は聞かされてなかったけど。


「で、話は戻すがBランク以上のギルドカードを作るには【試練の塔踏破者】って称号が必要でな。こればっかしは俺の権限どうので解決できる問題じゃないんだよ。Cまで上げてから気付いたんだがすっかり忘れてたぜ…。」


面倒くさいと言わんばかりに首を振るヒューズ。

俺としてはもっとスキルが欲しいと思っていたところなので願ってもないことである。


「分かった。じゃあその塔とやらを攻略してくればいいんだね?」


俺は素直に試練の塔へ向かうことを了承する。


「あぁ、頼む。だが、試練の塔はソロで挑むことは禁止されている。もちろん従魔を連れていたとしてもダメだ。お前にあてがなければこちらで適当に募集でもかけておくがどうする?」


む、ソロでは挑めないときたか。

俺の素性上、全く知らない人とパーティーを組むのはあまり得策ではない気がする。

Dランク…Dランク以上か…。

あ、一人いるわ。

一人いるけど…。


「どこにいるかが分からん…。」


「ん?どうした?当てがあるのか?」


当てがあると言えばある。

本人の了承を得られるかは別として()()ならば条件を満たしていると思うがあいにく名前以外の情報がない。


「リーナ・エルグリンドって女の子なんだけど、声をかけようにもどこにいるかが分からないんだよ。」


俺はヒューズの問いに答える。

ヒューズが彼女の居場所を知っていれば話は早いんだが冒険者はそれこそ沢山いるのだ。

俺ように目立った行動をしていれば記憶に残るかもしれないが流石に全ての冒険者を覚えているなんてことはないだろう。

そんなミラクルが起きれ…。


「あぁ、ローグのとこの娘さんか。」


「え、知ってるの!?」


ミラクル起きたわ。


「知ってるも何もローグは学園時代からの友人だからな。それに彼女自身も短期間でDランクまで上がった期待の新星だ。ギルドマスターという立場だけでも彼女のことを知らんということはまずないだろ?」


なるほど、そういうことだったのか。


「彼女の実力ならば塔への同行者として問題ないだろう。ここ最近はギルドの方でも彼女の姿を見ていない、ローグの家は中央通り抜けた先にあるでかい店だ。まずはそこに行ってみろ。」


「ん、ありがとう。早速行ってみるよ。もしダメだったら募集を頼むと思うからよろしく!」


ヒューズの情報提供に感謝する俺。


「早速ってお前…身体の方もういいのか?」


「まぁ、話をするだけだし歩くくらいなら平気なんじゃないか?多分。」


「お前が言うなら別に構わんが…一応神父さんに一言告げてから出て行けよ?」


「分かってるよ。」


確かに動くと全身に痛みが走るが痛みのレベルでいえば強い筋肉痛程度のものである。

戦闘ともなれば流石に動けないが歩く程度の運動であれば問題なくできるはずだ。


「じゃあ俺もそろそろ行くとするか…。塔に出発する日が決まったら悪いが俺のところまで伝えに来てくれ。あとは…そうだ、Aランクに上がった時用に家名の方を考えておいてくれるか?」


「ん?家名?つけなきゃダメなのか?」


俺のギルドカードには現在、家名が入っていない。

フォードベルクとつけて大多数の人間に身バレするのを防ぐためだ。

まぁ、バレたところでそんなに問題はないと思うが念のためである。


「当たり前だろ…何のためにAランクにすると思ってるんだ…。名前ってもんは一番身近な信用要素だろ?Aランクなのに家名がない冒険者とか怪しすぎるだろ!」


なるほど、言われてみれば確かにそうかもしれない。


「フォードベルク…をそのまま使うのは流石にまずいかな?」


「いや、それが一番の信用と格になるのは間違いないだろうがその家名だと親の七光りだの馬鹿共が騒ぐぞ?」


「うわ…まじか…。」


うわー…それは面倒くさい…。

そんな心底めんどくさそうな俺の顔が面白かったのかヒューズが笑う。


「ワハハ!まぁ、そんな面倒なことに巻き込まれたくないなら別の家名をつけるべきだな。家名に誇りをもっているだろうがフォードベルクを名乗るのは今でなくてもいいだろ?もっと功績をあげて誰もが知るような冒険者になってから正体を明かせば誰も何も言わんだろうさ。」


そんなもんだろうか?

俺としても面倒ごとはできれば避けたいしヒューズがそう言うのならそれでいいか。


「分かったよ。試練の塔とやらを踏破するまでには考えておく。」


「あぁ、お前のネーミングセンス、期待してるぞ!あとはガル…だったか?お前の従魔もギルドの執務室にいるから早く迎えに来いよ?」


そう言って部屋から出て行くヒューズ。

さて、俺も行くとするか。


「おぉ…おおおお…ぐおおおぉ…!」


立ち上がろうするだけでこの痛み。

だが違和感なく動くことから身体のダメージはそこまで深いものではないようだ。


「くぅー…!」


ベッドから降り、凝り固まった筋肉をほぐすように筋肉痛に耐えながらも全身を動かす。


「っし!」


ぐるぐると全身を動かしたおかげでこの痛みにもだいぶ慣れてきた。

俺はそのまま部屋を出て階段を降りるとお世話になった神父にお礼を伝え教会を出る。


「んーーっ」


久しぶりに感じる日光の心地よさに思わず背を伸ばす。

まぁ、久しぶりといっても2日も経っていないわけだが。


「んじゃ、行きますかね。」


俺がヒューズから教えてもらった店に向かおうとした時だった。


「その男を捕まえてくれ!!」


近くで聞こえる男の叫び声。

その声に振り向くとそこには衛兵と俺の記憶にある()のような服装をした男。

声の意味からして叫んだのは衛兵であろう。

そしてその走りは止まることはない。


「どいてくれでござる!!」


またもや巻き込まれそうな面倒ごとに俺はただ嘆息するのであった。



※活動報告には書いておりませんが31話、32話にてリーナの髪色を茶色→金色、冒険者期間を一月→半年に変更しましたのでよろしくお願いします。


ブックマーク、レビュー、感想、どしどしお待ちしておりますのでよろしくお願いします!

また誤字脱字等も教えていただき気付き次第直していきますので教えていただきますと幸いです!


(面白いと思っていただけたらブクマだけでもしていってくださいね…!)ボソリッ


2018.9.11 Twitter始めました('ω')

次話投稿、更新のお知らせの他にぐだぐだとした日常的なことも呟いたりするかもしれませんが宜しければフォローの方お願い致します!

アカウントについては作者プロフィールの方に記載しておりますのでそちらを見ていただければと思います('ω')

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