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第32話 王都のギルドマスター

チート探求を読んでいただきありがとうございます!

お待たせいたしました。

数日ぶりの更新となります。


2018.9.8 Dランクへの到達期間を一月から半年に修正しました。


王都の中央広場より北、メインストリートを抜け、歩くことしばらく。

そこは上品な白色で彩られた門があり、その奥にはすこし広めの庭園が広がっていた。

ここはカフェ・アルストロメリア。

王都に住む者ならば知らない人はいないと言えるほどの人気店であるが、特に女性からの人気が圧倒的なのである。

その特徴といえば花々が魅了する色彩の調和、つまりは貴族の屋敷庭と言われても納得してしまうほどに美しい庭園だ。

庭園には、白を基調とした机と座席がいくつか設置されており、そこに紅茶でもあればさながらお姫様のティータイムといったところだろうか。

そういった言葉に言い表すことのできない上品な雰囲気がそこにはあった。

花のことはよく分からない俺ですら見事と言うほかのないほど手入れも行き届いており、沢山の花々の香りに包まれるその庭園のセンスはとても素晴らしいもののようだ。


「さぁ!行きましょう!」


つまり互いの自己紹介の後、兵舎に居た衛兵に気絶した詐欺師を引き渡し、何故かやる気に満ちているリーナに言われるがまま連れてこられた良いお店というのがここというわけなんだが…。


「…えっと、本当にご馳走になってもいいのか…?」


見るからに高そうな雰囲気に尻込みしてしまう俺。

彼女を詐欺師から助けたお礼ということで食事をご馳走になるという話になっていたのだが、なにせここは超人気のカフェテリア。

昼のピークを過ぎているというのに客足が途絶える様子はなく、未だに列ができている。

事実、この店の料金設定は少し高めに設定されているわけなのだが普段串焼きといったような庶民食に慣れ親しんだ俺はその雰囲気に圧倒されているのだ。


「はい!大丈夫ですよ!私に任せてください!」


俺の不安気な気持ちをかき消すように笑顔で答えるリーナ。

うーん…本当にいいんだろうか…。

今更プライドがどうのと言い訳をするつもりはないが、元日本人としての気持ちが残っているのか人に奢らせると行為にどうにも違和感を感じてしまう。

ましてやそれが高めのランチともなればその違和感はそれはもう大きなものだ。


「(魔物と戦うことは何とも思わないのに変なところで染まりきれないなぁ…。)」


別に魔物を殺すことができる自分が非道な人間なんだと悲観している訳ではないが、なんとなく自分がまだ異世界に染まりきれていないような気がして少し気落ちする。

ちなみにだが、戦闘行為に忌避感を覚えないのは加護による精神安定作用のおかげであるのだが俺がそれに気付くことはない。


「あの…やっぱりご迷惑でしたか…?」


少し悲しそうな声色と表情で俺の顔を覗くリーナ。

しまった、どうやら俺の余計な思案が顔に出ていたようだ。


「あー、いや違うんだ!人に奢らせるっていうことにどうにも違和感があってさ、それも高そうなお店だし、ちょっと考えこんじゃってね。」


俺は正直に難しい顔をしていた理由を話す。

実際、リーナのような美少女との食事が嫌だなんてことは全然ない。


「よかった…迷惑がってた訳じゃないんですね…!」


俺の話した理由に安心したのかさっきまでの悲しそうな表情は消え、笑顔に戻る。

誤解が解けたようでなによりだ。


「お気遣いありがとうございます。でもこれはお礼なんですからあんまり難しく考えなくてもいいんですよ?レオンさんに助けてもらえなかったらもっとたくさんのお金を失うことになっていましたし、それに比べればちょっと高めの食事くらい安いものです!」


そしてリーナはお礼なんだから気にするなと言わんばかりに力強く返事を返した。

ふむ、どうやら俺の方が気を遣われてしまったみたいだ…。

大人しく着いてきてしまった時点で今更ではあるが、これ以上遠慮の意を示すのは彼女の顔を潰すようなものだろう。


「ん、わかった。それじゃお言葉に甘えてご馳走になるよ。」


俺は文字通り彼女の厚意に甘えさせてもらうことにした。

そして、その言葉を待っていたかのようにリーナもまた笑顔でうなずくのであった。


☆ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー☆


「いらっしゃいませ。2名様でのご来店でお間違えないでしょうか?」


列に並び始め、リーナと他愛のない会話をしながら待つこと20分といったところだろうか。

やっと順番がきたのか促されるまま門をくぐるとそこにはイケメン君が待っていた。

オレンジ色を少し暗くしたような派手すぎず地味すぎない絶妙にオシャレな髪色、それでいて短く切りそろえられた髪の毛が清涼感を醸し出している。

俺だって見た目こそ上の下でイケメンにあたるはずだが、このイケメン君は上の中の上といったところだろうか。

なるほど…これもこの店が人気である理由の一つな訳だな…。


「……?あの、お客様?」


返事のない俺たちにイケメン君は首を傾げている。

おっと、男を凝視なんてしてる場合じゃなかったな!


「あぁ、すみません。2名でお願いします。」


俺は一言謝罪をして人数を答える。

ちなみにリーナはと言えば、入門まであと少しという時くらいから羽織っているローブのフードを被って俯くように顔を下に向けていた。


「かしこまりました。ではこちらへ。」


イケメン君に案内されながら席へと向かう俺たち。

その間も彼女はずっと下を向いている。


「ご注文がお決まりになられましたらウェイターへとご申し付けくださいませ。それではごゆるりと。」


そう言い残すとイケメン君は門の入り口まで戻っていく。

さてと…


「…イケメン君はもう戻っていったけどさっきからどうしたの?」


途中から明らかに挙動不審な彼女に声をかける。

考えられる理由としては門で待機していたあのイケメン君くらいしかないと思うのだが何かあるのだろうか?

俺の問いかけに辺りをキョロキョロと見渡すと彼女はフードを外した。


「ははは…あまり気にしないでください!それよりもほら!早く注文をしちゃいましょう!ね!?」


「え、あ、うん。そうするか…。」


かなり強引に話を持っていくリーナ。

彼女の迫力に思わず頷いてしまう。


「どうしてここに…おにい…いっつも…だから…!」


ブツブツと小声で何かを呟いている。

な、なんかよくわかんないけど人間聞かれたくないことの一つや二つあるもんだしな…うん、これ以上聞き出そうとするのはやめておこう…。

俺はこれ以上の言及をやめ、リーナの言う通り注文をすることにした。

ウェイターを呼び注文を伝える。

当然頼んですぐに料理ができるわけではないので俺たちはまたもや他愛のない話をしながら時間を潰す。


「じゃあレオンさんは昨日冒険者になったばっかりなんですか?」


「そうだよ?それで今日が初依頼で一応依頼品は調達出来たんだけどなんでか達成にならなくてね…。明日の朝ギルドに来てくださいって言われて実際のところ失敗なのかすらも分からないままなんだよ…。」


俺はリーナの質問に愚痴を交えながら話す。

今日会ったばかりの関係だがかなり打ち解けてきた気がするな。

多分だが彼女の人あたりの良さが関係しているのだろう。


「明日来るようにですか?初めて聞く対応ですね…。というかその場で依頼の達成、未達成を教えてもらえないなんてことが初耳です!」


うーん…やっぱり異例のことなんだよな…。俺なんかやらかしてるのかなぁ…。

初耳という言葉に俺はドキッとする。


「あ…でも失敗ってことはないじゃないですか?失敗ならその依頼は継続して貼り続けられる訳ですし結果を伝えず他の人にその依頼を回すなんてことよっぽどないと思いますよ!」


俺を励ますように意見をくれるリーナ。

しまった、また顔に出てしまっていたようだ。


「そうなのかな…ん、ありがとう。少し気が気が楽になったよ!ところでその格好を見るにリーナも冒険者なのか?」


俺の話を続けると暗い空気になりそうだった為、それとなく話をすり替える。

俺だって好き好んで暗そうな話をする気は無い。

できるならば楽しくワイワイと話したいのだ。


「私ですか?ふふ、そうです。私も冒険者なんです。とは言っても半年前になったばかりのDランクの初心者なんですけどね!」


そう言うと彼女は少し恥ずかしそうにそれでいて少し自信ありげに笑う。

どうやら話題変更はうまくいったようだ。


「え!もうDランクなの!?早くないか!?すげぇ!」


自分から話を振っておきながら俺はというと正直かなり驚いていた。

Dランクと言えば既にベテランの領域である。

冒険者なりたての一般人がそこに至るには少なくとも1年、2年の歳月は必要だ。

それを目の前の美少女が半年程度で到達しているのは真か嘘かと聞かれれば失礼な話だが嘘と答えていたであろう。

人は見かけによらない、それを変な角度から知ることができた瞬間であった。


「そんな大それたものじゃないですよ!でも、実はちょっとだけ…ちょっとだけですけど私、魔法が得意なんです。もちろん短い期間でここまで来れたのは周りの人達のおかげなんですけどね!」


普通、短期間でのDランク到達ともなれば周りが騒ぎ立て、本人も天狗になってしまって仕方がないようなことであるが彼女は驕ることなくしっかり自分と向き合えているようだ。

そういう奴は強くなる。そんな期待をギルドから寄せられていることに彼女はまだ知らない。


「でもレオンさんならもっと早くランクアップするんじゃないですか?だってレオンさんの家名って…」


俺の賞賛を謙遜していた彼女が少し遠慮がちに声をひそめる。

あれ?あぁ、そっか。俺そういえばレオン・()()()()()()()って名乗ったっけ。

そのことを思い出した俺はリーナと同じように声をひそめ答える。


「あー、うん。今更だからあれだけど俺の父さんは七天の騎士とやらだよ。やっぱり家名ってすぐバレるもんなの…?」


俺のそんな返答にリーナは呆れたような表情をすると当たり前です!と答えた。

うーん、どうしよう…ギルドカードも本名でいれちゃってるんだが…

そんなことに少し悩んでいると…。


「お待たせ致しました。こちらご注文の品となります。」


どうやら料理の方が出来たみたいだ。

ゴクリッ。

ウェイターの運んできた料理の香りに思わず喉を鳴らす。

俺たちの頼んだ料理はリーナがイチオシとしたモウエン茸のクリームパスタとレモスティーである。

まぁ簡単に言ってしまえば名前からなんとなくわかる通りキノコのクリームパスタとレモンティーだ。

レモスと呼ばれる果物は実家でも時々出てきてたのだが名前も見た目も味も全部がレモンそっくりで思わず笑ってしまった覚えがある。

モウエン茸というのは俺は食べたことはないがリーナいわく名前ほど辛くはないがピリッとした辛味があってクリーミーなソースと抜群の相性なのだそうだ。

つまりは猛炎茸ということだろうか?


「それじゃあお話はこのくらいにして冷めない内にいただきましょうか!」


俺はリーナの言葉に頷きモウエン茸とパスタ絡め口へと運ぶ。


「〜っ!!うまいっ!」


あまりの美味しさに思わず声を漏らす。


「ふふ、オススメした甲斐がありました!」


リーナは俺の反応に満足げに微笑む。

俺は噛み締めた旨味の余韻に浸っていた。

想像以上だ…この衝撃はおじさんの串焼き以来だな…

クリームソース単体でもかなり濃厚でもちろん美味しいのだろうがそこには『くどさ』という問題が発生する。

しかしそれを解決するのがモウエン茸だ。

リーナが言った通りクリームソースの濃厚さとモウエン茸がもつピリリとした辛味が合わさって濃厚さの中にある『くどさ』だけを見事に打ち消している。


「想像以上だったよ…!まさかこんなに美味しいものがあったとは…!」


「ふふ、満足していただけたようでよかったです!」


笑顔で笑うリーナを尻目に俺は夢中で食べ続けるのだった。


☆ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー☆


「本当に美味しかった。ごちそうさま!」


カフェを出て、メインストリートを歩きながらお礼を伝える。


「いえいえ。私がしたことなんてお店を選んだくらいですから!私の方こそ今日はありがとうございました!お礼のつもりだったのについつい楽しんじゃいました!」


笑顔で答える彼女に皮肉や嘘は感じられない。

どうやら本心で言ってることのようだ。

えぇ…なんだこの子…天使かよ…。

美少女オーラに押し負けて顔がにやけ面にならないように顔筋の維持に努める。


「あ、あれ?レオンさん、なんか顔が引きつってますけど大丈夫ですか…?」


ピクピクと震える俺の顔を見てリーナが心配そうにこちらを覗く。


「ダイジョウブ…ダイジョウブ…。キニシナイデ!」


「は、はぁ…。」


にやけ面にならないように頑張ってるなんて言えるものか。

俺の返事に納得がいったわけではないだろうが彼女がそれ以上追求してくることはなかった。

よかった、なんとか面目は保たれたかな…。


「あ、私はこっちの道なのでここでお別れですね。」


リーナが急に立ち止まる。

楽しい時間は一瞬に、とうとう終わりの時間がやってきてしまった。


「ああ、そうか。じゃあ俺も宿に帰るとするかな。じゃあ、今日はほんとありがとう!また会うことがあったらよろしく!」


とはいえ互いに冒険者なのだ。今後ギルドで会うこともあるだろう。

俺はリーナに再度お礼を伝え頭を下げる。


「はい、その際はよろしくお願いします!レオンさんさえ良かったらまた一緒に食事でもしましょう!」


「あぁ、また行こう!今度は俺にお金がある時にでもね!」


俺の返事にクスクスと笑う彼女。

うんうん、やっぱり天使なんだろうな。うん。

こうしていつかまた食事をする約束をしてリーナと別れた俺は宿へと向かうのであった。

宿へと向かうそのつもりだったのだが…。


「アレクのやつギルドにいるかな?」


リーナと別れてしばらく、俺も最初はそのまま帰るつもりだったのだが不意にアレクのことを思い出し冒険者ギルドに向かうことにした。

アレクなら今回のようなギルドの対応も何か知っているんじゃないかという勝手な考えがあったからである。

何か知ってるといいなと考えながら、いつのまにか着いていたギルドの門扉を開け中へと入る。

忙しさと騒がしさのピークである夕刻までにはまだしばらく時間があるためギルドの中は今朝ほどではないがかなり空いていた。


「うーん、いないな…。」


人が少なく見やすいギルド内をキョロキョロと見渡してみるが残念ながらアレクらしき姿は見当たらない。

今朝会った時に言っていた用事とやらがまだ終わってないんだろうか?

しかし居ないならば仕方がない。

少しガッカリとしてギルドから出ようとした時だった。


「あぁー!レオンさん!丁度いいところに!!」


受付側から声が届く。

うん?今の声はエレナさんか?

そう思い振り返ると向こうからエレナが走り寄ってきていた。

なんだろう?呼び止められるような理由としては依頼のことくらいしかないと思うのだがそれは明日の朝と聞いている。予定が早まったりでもしたのだろうか?


「こんにちは。えっと丁度いいところっていうのはどういう意味なんです?」


俺はエレナの言ったこと丁度いいということについて尋ねる。


「呼び止めてしまってすみません。えっと、意味については多分直接聞いた方が早いと思うので…。レオンさん、この後お時間の方いただいてもいいですか?」


え、なに…展開が読めなさすぎて怖いんだけど…。

よくわからないが、どうやら至急伝えたいことがあるらしい。

俺は別に問題はないことをエレナに伝える。


「あぁ、よかったです!それでは私に着いてきてください!」


どこに連れて行くというのだろうか?

エレナの態度からして何か怒られるようなことではないと思うのだが…。

とりあえず着いていかないことにはなにも始まらない。

俺は頷き、エレナに着いていく。

カウンターをくぐり、裏口のような扉を通り階段をのぼる。

な、なんだこれ。どうして俺がギルド職員しか使わない二階にいるんだ?

二階の廊下真っ直ぐ進み続けるエレナとそれに追従する俺。

理解しがたい状況に混乱していると不意にエレナが立ち止まった。

つ、着いたのか…?

俺の考えがまとまる前に彼女はドアをノックする。


「ギルド職員、エレナ・ローウェインです。Gランク冒険者、レオンをお連れしました。」


仰々しい物言いで話す彼女。

そしてその物言いにご苦労と威厳ある声が目の前の扉の奥から届く。


ガチャリ。


その返事を合図にエレナが扉を開き中へと進む。

そこには一人の男が待っていた。


ギルド職員しかいないような二階にいて…?

二階の中でも最奥の部屋にいて…?

職員であるエレナが敬語を使う…?


まさか…まさか…!


「ようこそ!俺の名前はヒューズ。知ってるかと思うがここ王都の冒険者ギルドでギルドマスターをやってるもんだ!」


見た目通りの豪快な挨拶。

そしてその手には()()()()()が握られていたのであった。


最初は3000文字くらいだったのですが気付いたら7000文字近くになってました…。

ここ最近ほのぼの日常系が続いてるので早くバトルといきたいところです…!

戦闘パートまで本当にあと少しなので今後ともチート探求をよろしくお願いします!


ブックマーク、レビュー、感想、どしどしお待ちしておりますのでよろしくお願いします!

また誤字脱字等も教えていただき気付き次第直していきますので教えていただきますと幸いです!


(面白いと思っていただけたらブクマだけでもしていってくださいね…!)ボソリッ

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