第27話 植物ノ浄化二犠牲ハツキモノデース
「結構な量があったからなぁー」
俺は今、雑貨店へと来ている。
もちろん意味なく立ち寄ったわけではなく依頼で回収するヤスラギ草を持ち運ぶ鞄のようなものを買う為だ。
元々簡易なものとしてポーチバックは身につけてきたが、王都に来るまでに見たヤスラギ草らしきものの数からいって明らかに容量不足だと感じる。
何度も往復するのは面倒な為、最初から大きめの入れ物を用意しておこうというわけだ。
「うーん、これにしとくか…。」
俺が選んだものは6500イルするなんの変哲も無いリュックのような鞄だ。
他の商品の中には時間停止機能のついたものだとか見た目以上に中身が入る空間拡張機能のついたものなど俗に言う【マジックバック】や【マジックポーチ】と呼ばれるものもあるがさすがに値段が高すぎる…。
将来的には手に入れておきたいが今の俺には無理だ。
冒険者をやる上での1つの目標としよう!
俺はマジックバックを1つの目標とすることを決め、料金支払うと王門へと向かう。
金銭的にも鞄を買う余裕があるわけではなかったわけだが、なにせこれから採りにいくものは10本2000イルのお宝なのだ!
40本も採ればお釣りがくると考えれば今回容量の大きい鞄を用意しておくのは決して悪くない選択のはず!
俺が見た量は40本なんて少ない量じゃなかったから確実に元は取れる!
もしかしたら今日だけでかなりの大金を稼ぐことすら可能なはずだ!
それを繰り返せば一年もしないうちに…うへへ!
もう違約金すら払えないんだ!絶対に成功させなければ!
ヤスラギ草成金を妄想しながら歩くうちに俺は王門へとたどり着く。
入門の時は閉門の時間の関係もあって行列ができていたが、今は早朝である為か俺以外の人は門番を務める王国兵以外誰もいないようだ。
あれ?あの人は…。
俺は門番の中に数少ない知ってる顔を見つけた。
「おはようございます!」
王門へ少し駆け足で近付き昨日お世話になった王国兵さんへ俺は挨拶と共にギルドカードを見せ渡す。
この国では入門の時だけではなく出門の際も身分の証明を求められている。
一見、あまり意味のない作業に見えるが実際は、入門と出門の両方をチェックすることでその者が無事に帰ってきていることを確認したり、出門のみのチェックしかない密入者を捕らえる確認であったりと結構に意味のある作業のようだ。
「おはようございます。ん?君は…あぁ、昨日の!無事冒険者になられたようですね。おめでとうございます。」
俺が見せるギルドカードに昨日の王国兵さんが微笑み祝辞を述べる。
毎日何百という仮通行証を発行する者がいる中、向こうも俺のことを覚えててくれているとは嬉しいことだ。
「ありがとうございます!」
俺が冒険者になれたことを祝福してくれたことに俺はお礼を返す。
「いえいえ、こうして王国を拠点する仲間が増えるというのは良いことですから。今日は初依頼ですか?頑張ってくださいね。無理は禁物ですよ!」
王国兵さんはそう言って預かっていたギルドカードを俺に返した。
「は、はい。頑張ってきます!」
王国兵さん聖人すぎない!?
王国兵さんの聖人ぶりに驚きながらもなんとか返事を返すと俺は王門を潜り外へと出てヤスラギ草の群生地へと向かっていった。
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「たしかこの辺だったと思うんだけどなー。」
昨日の記憶を辿るように歩き、群生地付近であろう場所を見渡す。
しかしあたりにはヤスラギ草と見られるものは生えておらず、代わりにヤスラギ草に似た紫色の花を鮮やかに咲かせている草が生えているだけだ。
ちなみにだがヤスラギ草は紫色の花ではなく白色の花を咲かせている。
おかしい…昨日はたくさん生えてたはずなのに…。
それに…。
「それに、こんな花昨日見たっけ?」
しかし俺の記憶には道中にこんな花が生えていた記憶はない。
つまりは道を間違えているというのが一番考えられる可能性のわけだが、森から王都までは一本道でその道も整備されているから間違えようがないのだ。
仕方ない、とりあえず見てみるか…。
俺は生えている紫色の花を咲かせた草を一本摘み取り鑑定をかける。
【ドクラセ草】
ヤスラギ草が強い魔物の魔素を受け変異したもの。
本来持つ癒しの効果がなくなる代わりに強い毒性を得ている。
効果としては致死性はないものの激しい頭痛、嘔吐感といった効果があるため間違って使用しないよう注意が必要。
「………。」
[ヤスラギ草が強い魔物の魔素を受け変異したもの。]
「………。」
[癒しの効果がなくなる代わりに強い毒性を得ている。]
つ、つまりだ…ここに生えてる沢山のドクラセ草は全部…お、俺が昨日見たヤスラギ草ってこと…なのか?
「フザケンナぁぁぁぁぁぁぁぁぁー!!!!!」
ちくしょう!なんてこった!もう違約金も払えないんだぞ!?
どうするんだよ!?他のところを探しに行くしかないか!?まてよ?魔石を売れば大丈夫なのか!?
くっそ!アレクが意味深な言い方をしてたのはこういうことが起きることを知ってたからか!?
10本2000イルなんて破格の値段が付くのはこういうことがあるからなのか!
俺のヤスラギ草を毒化させやがったボケ魔物め!
絶対に見つけ出して制裁してやらぁ!
狙っていたヤスラギ草を毒化させた魔物と何も教えてくれなかったアレクにヘイトを高める俺。
実はアレクが意味深にしてたのもヤスラギ草の値段が高い理由も全く違う理由があるのだが今の俺は気付かない。
ヤスラギ草を毒化させるほどの強い魔物がここを通ったという事実にも。
この湧き上がる怒りをどうしようかと考えていた時、不幸な被害者が何も知らず俺の気配探知に引っかかった。
ドクラセ草と同じ紫色の体をプルプルと揺らしながらその被害者はドクラセ草をムシャムシャと食べ始める。
俺は少し申し訳ない気持ちになりながらもこの怒りをぶつけさせてもらうことして鑑定をかけた。
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ポイズン・スライム
種族 スライム
Lv.4
HP 327/327
MP 46/46
ATK 145
DEF 98
INT 157
DEX 64
AGI 102
LUK 34
スキル
【毒液 lv.3】【吸収 lv.Max】【吐き出し lv.5】
【危機察知 lv.5】
ユニーク
なし
エクストラ
なし
パッシブ
なし
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すまないなスライムくん。
君がしてるその食事が最後の晩餐となるみたいだ…。
「風の刃!!」
俺はポイズンスライムが気付がないうちに背後から3つの刃を飛ばす。
「ピギィ!」
命中まで残り2メートルといったくらいか。
しかしその刃は当たることなくポイズンスライムにかわされる。
正確にはかわすというよりも当たる予定だった場所から逃げ出したという方が正しいわけだが…。
さすが危機察知のレベルが高いだけはあるようだ。
ポイズンスライムは危機察知で刃から逃げ出すと同時に俺と対峙するように移動するとその体を震わせる。
「おのれ…俺に気付かなければ楽に逝けたものを…」
悪役みたいなセリフをナチュラルに言う俺。
「ピギ!」
そのセリフを合図と言わんばかりにポイズンスライムが紫の液体散弾のように飛ばす。
ちっ、速いな!かわすのは難しい、だったら!
「水の散弾」
俺はポイズンスライムの毒液と同じように水を散弾のように撃ち込み毒液を相殺する。
ここまで緻密な制度で魔法が撃てるのは魔力操作レベルが高いおかげだ。
「ヒギャギ!」
散弾のような攻撃では効果がないとわかったのかポイズンスライムはさらに体を震わせさっきとは違う毒液を塊のまま吐き出す。
魔法風な名前をつけるとしたら毒の砲弾といったところだろうか。
俺に向けて撃ち込まれる毒の塊はさっきまで毒の散弾を相殺していた俺の魔法に打ち勝ち俺に迫る。
魔法に打ち勝ったことで勝利を確信したのかスライムが嬉しそうに体を震わせている。
しかしそれは悪手だぞスライムくん?
散弾ではなく一点集中にすることで俺の魔法を貫くことはできたようだが、そのせいで毒の塊のスピードは倍以上落ちていた。
これならかわすことは容易い。
俺はその場から駆け出し毒液をかわすと勝利を信じて疑わないポイズンスライムに肉薄する。
「俺の勝ちだ。風の刃!!」
至近距離から撃ち込まれる3つの刃。
「ビギッ!?」
危機察知で俺に攻め込まれてることに今更気付いたようだが高速で撃ち込まれたその刃をこの距離でかわせるわけもなくポイズンスライムはその体を6つに切断される。
直後俺の体に溢れるような力の感覚。
レベルアップの感覚が俺に勝利を確信させるのであった。
「ふぅー。」
レベルアップで魔物を仕留めた確信を持った俺は体の力を抜く。
そういやまだあれからステータス見てなかったっけ。
そう思った俺はステータスを確認する。
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レオン・フォードベルク
種族 人間
Lv.4
HP 683/683
MP 2073/2104
ATK 307
DEF 269
INT 588
DEX 364
AGI 224
LUK 135
スキル
【隠蔽 lv.8】【生活魔法 lv./】【魔力操作 lv.8】
【火魔法 lv.5】【水魔法 lv.5】【風魔法 lv.5】
【土魔法 lv.5】【無属性魔法 lv.5】【剣術 lv.Max】【体術 lv.8】【双剣術 lv.4】【消化液 lv.6】
【吸収 lv.Max】【棍棒術 lv.4】【指揮 lv.2】
【隠密 lv1】【毒液 lv.2】【吐き出し lv.4】
ユニーク
【無詠唱 lv.8】【二重詠唱 lv./】【三重詠唱 lv./】
エクストラ
【全魔法適性 lv./】 【神眼 lv.3】 【万物創生 lv.1】 【空間把握 lv.3】【限界突破 lv./】 【超吸収 lv./】 【簒奪 lv.1】【創造神の加護 lv./】
パッシブ
なし
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「げっ、やっぱり毒液も追加されてるのか…。」
ステータスの上昇率は異常だと既に知っていたから今更驚きはないが明らかに使えば俺の方がダメージを受けそうなスキルが増えてしまったことに少し嫌な気持ちになる。
「まぁ、気をつけるしかないわな…。」
下手に毒液なんかを誤使用しないように気をつけようと心の中に書き留めて、切断されたポイズンスライムの死体から魔石を探そうとする。
しかしここで俺はあることに気付く。
「あれ?なんかスライムの色薄くなってないか?」
切断されたスライムの体は何故だかわからないが当初の鮮やかな紫の色ではなくほんのり紫といった薄色へと変化していた。
不思議に思いながらも魔石をほじくり出しポケットにしまうといつものように火葬し、これからどうするかとさっきまでポイズンスライムが食事をしていたドクラセ草の辺りを見つめていたその時。
「ん?あ、あれは!」
見渡す限りの紫!紫!紫!の花の一部にある色の花が咲いているのが見えた。
俺は急いでそこまで走り鑑定をかける。
【ヤスラギ草】
癒しの効果を持つ植物。
回復ポーションの原料になるが非常にデリケートな植物の為、採取には根ごと掘り出すだけの繊細さが必要。
根が少しでも傷つくとたちまち癒しの効果は低下しポーションの質も下がる。
また魔物の魔素が一切溜まっていない最高品質で採取されたヤスラギ草は超級ポーションの原料となり非常に高値で取り引きされる。
ヤスラギ草という鑑定結果に驚きを隠せない俺。
なんでだ?さっきまでは全部ドクラセ草だったはずだ…。
俺は頭をフル回転させて理由を考える。
ドクラセ草を食事にするポイズンスライム
ポイズンスライムがもつ3つのスキル
なぜか色が薄くなっているポイズンスライムの死体
ポイズンスライムが触れたドクラセ草
「はっ!!」
俺の中で全てのピースが揃い、ある仮説が生まれる。
俺はその仮説を試す為にドクラセ草を一本摘み取る。
俺のたてた仮説とはポイズンスライムは花を食事にしてるのではなく吸収で花の毒素を食事としていたのではないかというものだ。
その証拠にポイズンスライム触れていた花だけがヤスラギ草に戻っていてなおかつ花自体には消化されたような跡すらないのだ。
「吸収!!」
俺はスライム達から簒奪した吸収スキルを使いドクラセ草から毒素を吸収しようとする。
するとドクラセ草から紫色のオーラのようなものが出始め持っていた俺の手に染み付くように入ってきた。
「ぐっ!?あぁっ!?」
ドクラセ草の特徴である強烈な頭痛と嘔吐感がドクラセ草を口にしていないのにもかかわらず俺を襲う。
つまりこれはドクラセ草の毒素吸収に成功したということだ。
「は、花は!?」
俺は襲いかかる頭痛と嘔吐感に耐えながら鑑定を使う。
【劣化したヤスラギ草】
癒しの効果を持つ植物。
回復ポーションの原料になるが非常にデリケートな植物の為、採取には根ごと掘り出すだけの繊細さが必要。
根が少しでも傷つくとたちまち癒しの効果は低下しポーションの質も下がる。
また魔物の魔素が一切溜まっていない最高品質で採取されたヤスラギ草は超級ポーションの原料となり非常に高値で取り引きされる。
「よ、し…せい…こうだ…!」
劣化したとはついているがドクラセ草がヤスラギ草に
変わった!
俺の仮説は正しかったんだ!
これでここにあるドクラセ草は全部ヤスラギ草に変化するぞ!
「やった…ぞ!」
しかし一本の解毒でこのダメージである。
致死性はないってあったけどそれでもきつすぎるだろ…。
ここに生えるドクラセ草の数は少なくとも数百はある。
これから数百回以上の苦しみが続くという事実からか
あまりの頭痛と嘔吐感からか顔を青ざめさせる俺。
しかしさすが神様のくれたチートスキル、俺を苦しめていた頭痛と嘔吐感は突然霧のように消えてしまった。
「な、なんだ?」
突然苦しみが消えたことに驚く俺。
ステータスを開きHPが減っていないかどうかを確認するがその時、スキルが増えていることに気づく。
なるほどこれのおかげで助かったわけか…。
俺のパッシブスキルには【毒耐性 lv.4】というスキルが追加されていた。
これはきっと超吸収による効果で習得したものだと思う。
レベル4で消える毒という事実が中々に凶悪な毒だったということを伝えてくれる。
ほんとつらかったからね…。
「だが克服した以上、ここからは俺のターンなわけだ!」
俺はさっきまでの痛みはお金持ちになる代償として受け入れることにして今度は染み込んだ毒素を吐き出すことができるのかを試す。
スライムの毒液をイメージしながら頭の中で吐き出しと唱える。
するとさっきドクラセ草から染み出してきた時と同じように俺の腕から紫色のものが染み出すとそれは空気に紛れるようにして消えてしまった。
「よし、吐き出し成功だ!」
イタズラが成功した悪ガキのように俺は笑うと小さくガッツポーズをとる。
これで俺の身の安全を確認できた。
あとは…。
「全部浄化してやるだけじゃぁぁぁぁぁ!!!」
こうして俺による大規模浄化作戦が始まったのであった。




