第26話 初依頼、アレクの正体
長らくお待たせしました。
土曜から月曜の間とお伝えしましたがかなりギリギリの結果となってしまって申し訳ありません!
今回少し長めとなっております。
「ふあぁぁぁ…」
目覚めと同時に大きく心地の良いあくびする。
重い瞼を半開かせ俺は窓の外を見た。
空は既に青みがかっていて、街中に広がる薄い霧とちらほらと歩いている街人たちが朝の始まりを感じさせる。
どうやら俺はあのままずっと眠りこけていたみたいだ。
朝を告げる鐘が鳴った覚えがないということは時間でいうと朝6時前といったところだろう。
ぐーっと背筋を伸ばし、眠りで凝り固まった全身をほぐしながら俺はまだ眠気で微睡んでいる意識をゆっくりと覚醒させていく。
「あとは…」
俺は部屋に置いてあった少し大きめの桶を運んできて、そこに水魔法で冷水を貯める。
え?なんで水を貯めているのかだって?
そんなの顔を洗うためにきまってるだろ。
今、水を貯めているこの桶は元から部屋に備え付けられているもので本来は泊まった冒険者の客が部屋で防具を磨いたりだとか整備用の水を貯めるために設置されているわけだが水を貯めるという行為自体は元から想定されているものなんだから作りたての水で顔を洗うのは何も問題はないはずだ!
そんな説明をしている間に桶に水を貯めきった俺は冷水で顔にかけ洗いながら意識の完全覚醒をした。
いつもならこのまま朝シャワーといきたいところだが
残念ながらここは我が家ではない。
大浴場こそあるもののそこの使用時間は決められていて、もちろん今の時間は対象外となっている。
「仕方ない…。」
俺は衣服と全身に【クリーン】と【ウォッシュ】をかけ部屋を出ると一階へ降りていった。
「あら、おはよう。冒険者さんが早起きなんて珍しいねぇ。」
俺が階段を降りている途中、一階から恰幅のいい女性に挨拶をされる。
まぁ、なんとなくわかると思うが彼女はこの宿の女将さんにあたる人だ。
こんな時間から働き始めているとは恐れ入る…。
「えぇ、おはようございます。冒険者と言っても昨日なったばかりで今日初めて依頼を受ける新人ですけどね。女将さんも朝早くからご苦労様です。」
人の心象はとても大事なものだ。
俺は女将さんにお疲れ様の念を込めて礼儀正しく返事を返す。
しかし女将さんは俺のそんな返事に少し驚いたような表情をしていた。
「…?どうかしましたか?」
俺は不思議に思い首をかしげる。
「あぁ、なんでもないんだよ。すまないねぇ。新人冒険者だっていうのに、やけに礼儀正しかったから驚いただけだよ!最近の新人冒険者さんにはこう言っちゃなんだけどふてぶてしい人が多くてねぇ。まぁそういうのは新人だけってわけでもないんだけどね。」
なるほど、そういうことか。
どうやらギルドの受付嬢が言っていた話を聞かない新人冒険者然り、女将さんのいう新人以外の冒険者然り、どうやら一部冒険者達の中には横柄な態度をとるふてぶてしい奴らがいるようだ。
まぁ、今のところそんな奴らには会ったことすらないわけだが、なんとなく身内ごとのように恥ずかしい気持ちになる。
「そうなんですか?嫌な冒険者もいるもんなんですね…。わざわざ横柄な態度をとって自ら自分の印象を悪く思わせるなんて愚考、俺にはよく分からないですねぇ。あぁ、それと話は変わるんですが宿泊の延長って出来ませんか?出来るなら二週分ほどお願いしたいんですが。」
俺は会ったこともないそんな奴らを皮肉ると同時に宿泊の延長をしたい旨を伝える、
すると女将さんは一瞬目を丸くさせると豪快に笑いだした。
「はっはっはっ!やっぱりあんたは変わった冒険者だよ!気に入った!いつもは断るけど二週分の延長だね、わかったよ。料金は先払いになっちまうけどそれでもいいかい?また宿泊を延長したくなったらあたしに伝えてくれればいいよ。あんたみたいに礼儀正しい冒険者さんならうちも大歓迎さ!」
おお、よかった。
どうやら女将さんのもつ俺への印象は礼儀正しいという良い印象のようだ。
そのおかげかどうかは分からないが普段は応じて貰えない宿泊期間の延長もしてもらえた。
やっぱり人の心象は大事だな…。
「無理なお願いを聞いてくださってありがとうございます!お代は先払いで構いません。今お支払いしますね。」
俺は銀貨と小銀貨を取り出し女将さんへ渡す。
「いいってことさ、お代の方も…うん、確かに受け取ったよ!さて、あたしも仕事に戻るとするかね。話し込んじゃって悪かったね!朝の食事にはちょっと早いかもしれないけど食堂に行けば食事を用意してもらえるはずだよ。しっかり食べて初めての依頼、頑張るんだよ!」
そして女将さんに激励されながら俺はその場を後にするのであった。
☆ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー☆
「うーん。」
依頼の貼られた掲示板を見ながら俺は悩む。
早朝の冒険者ギルドは俺の他に冒険者はおらず受付嬢も二人しかいないためほとんど貸切のような状態だ。
あの後、女将さんに言われた通り食堂へ向かった俺は美味しい料理に腹を膨らませ、その足で冒険者ギルドへと来ていた。
ちなみに料理は女将さんの旦那さんが作っている。
しかしなんというか…かなり寡黙な人みたいで注文を頼んだ時も美味しかったですとお礼をした時も終始無言だった。
もしかしたら時間より早く来た俺に腹を立てていたのかもしれないが…。
それだったら申し訳ないな…。
と、まぁそういうわけで今はギルドで依頼を選んでいるわけだが悩んでいるのには理由があった。
その理由というのが…。
【廃屋の撤去手伝い】ランクF
[内容]
崩した廃材の運搬、廃屋の破壊など。
[期間]
第二週 月光の日から水蒼の日までの三日間
昼の刻から夕の刻まで
[報酬]
15000イル
【迷子の猫探し】ランクG
[内容]
迷子になって帰ってこない飼い猫の捜索。
[期間]
無期限
[報酬]
10000イル
【荷降ろしの手伝い】ランクG
[内容]
引っ越し先への荷物の運搬など。
[期間]
第二週 火天の日から水蒼の日
昼の刻から夕の刻まで
[報酬]
9000イル
と、いった具合にある程度額があって今日中に終わる依頼がないのである。
ちなみに今日は第一週水蒼の日だ。
というか、〜〜を何体討伐とかそういう系の依頼が全くないんだが!
今確認した依頼以外もランクGやランクFが多いし討伐系の依頼はEランク以上で別の掲示板に貼られるとかそういうルールでもあるのか?
それとも単純に王都は平和すぎて討伐依頼がないのか…?
もし後者なら俺の思い描いてた異世界と違うというかなんというか…。
それに今朝の先払いで正直なところ懐が少しピンチな俺としてはこれはまずい。
なにか…なにか良い依頼はないのか…!
「お?レオンじゃねぇか。朝早くから何してんだ?」
俺が難しい顔で長考に入ろうとしたところ、誰かに声をかけられた。
あれ?今名前で俺のこと呼んだか?
じゃあ俺のことを知ってる人だよな?一体誰だ?
俺は声のした方向へ顔を向ける。
そこには昨日ギルドで出会った親切な冒険者アレクが立っていた。
「あぁ、おはようございますアレクさん。昨日はどうも!」
挨拶と共に頭を下げる。
こう何度もペコペコしてしまうのは元日本人としての性だから許してほしい。
「おう、おはよう。それはもう気にするなって言っただろ?それに俺相手に敬語なんて使わなくていいぞ。もっと気楽に話してくれ。」
ふむ、そこまで言われて敬語を使うのは壁を作ってるみたいで逆に失礼か…。
ならお言葉に甘えさせてもらうとしよう。
俺は敬語を辞めて素の口調で返事を返す。
「ん、わかった。じゃあこれからはアレクって呼ばせて貰うよ。」
「おう、やっぱ敬語じゃない方がレオンとは話しやすいわ。で、何をしてたんだ?」
「えーと、アレクも知っての通り俺は昨日冒険者登録を済ませて黄昏の穂波亭ってところを拠点にして活動していこうと思ったんだけど泊まるにはお金が必要だろう?とりあえず二週分は先払いしたんだけどおかげで懐が結構ピンチで…だから討伐系の依頼でその日その日で稼いでいこうとしたんだけど見て分かるとおりそういう依頼がここにはないみたいでね…だからどうしようかと悩んでたってわけ。」
俺はアレクの質問に状況をかいつまんで簡単に説明する。
それ聞いたアレクは最初こそ少し驚いたような顔をしていたが討伐系の依頼と伝えた辺りで呆れたような表情へと変えていった。
うーん?王都に討伐依頼なんてあるわけないだろってことか?
俺が返事を終えアレクの表情を不思議に思っているとアレクが口を開いた。
「あのなぁ…。お前昨日ちゃんと受付からの説明をしっかり聞いていたのか?あの宿を二週分先払いできるくらい金を持ってたのも驚きだがそれは置いといて、お前が見てるその掲示板は住民からの依頼板だろ?だったらギルドからの依頼である討伐系依頼がそこに貼ってあるわけないだろ…。」
アレクの言葉に俺は驚愕する。
え?ここ以外にも依頼が貼ってある掲示板あるの?
高ランク冒険者限定とかじゃなくて?
「ちゃんと話は聞いてたよ!話してくれた受付の人も話した甲斐があったって褒めてくれたくらいには!
ランクについて聞いていた時に掲示板を教えてもらったけど受付の人にはこの掲示板しか教えてもらってないよ!?」
やや興奮気味に反論する俺。
「いや、教えてやるから落ち着けって!いいか?まず掲示板には3つの種類がある。1つは今レオンが見ていた住民依頼掲示板だな。これは文字通り住民からの依頼を貼り出した掲示板だ。簡単に言っちまえば要は住民のお手伝いってことだな。ランクが低いのが多いのも言い方は悪いが所詮はお手伝いだからってことだ。」
そんな俺を宥めるように返事を返すアレク。
俺がその説明に頷くとアレクが移動をして俺を手でこまねき話を続ける。
「もちろん貴族や大商人みたいな個人からの依頼なんかもあるがそれらは大体が高ランクの依頼だ。その場合はさっきの住民依頼掲示板じゃなくてこっちの公認依頼掲示板に掲示されることになってる。」
アレクがさっきまで俺の見ていた掲示板とは比べものにならないくらい依頼が貼られた掲示板をコンコンと拳で叩く。
えぇー…俺なんで気付かなかったの?
ここにしかないっていう思い込みのせいなの?
正直これだけ依頼が貼られてて気付かないとか恥ずかしくて消えてしまいそうなレベルなんですが…。
アレクはそんな俺を見てクククと悪そうに笑いながらさっきと同じようにまた移動をする。
「くくくっ!そんな顔するなよ。ありえないって顔してるレオンが中々面白くてな!まぁここに貼ってあるのは低くてもDランクからだ。ここに気づいていたとしてもどのみち受けることはできなかったんだから安心しろよ?」
なんだそのフォローなのかフォローじゃないのかよくわからない励まし!!
若干不服そうにしながらも俺は3つ目の掲示板へ向かっていくアレクへ着いていく。
「で、このでっかい掲示板がギルドから又は国直々の依頼なんかが貼られる国認依頼掲示板だ。レオンの言ってた魔物の討伐依頼や素材回収、国から頼まれる各地の新ダンジョン等の調査なんかがここに貼られる依頼だ。あとは有名になってくると個人への指名依頼なんてものもあるが今のレオンには関係ない話だな。
まぁほとんどの冒険者は公認か国認の掲示板から依頼を受けていくな。」
oh...なんてこった…。
二番目の掲示板よりさらにでかい掲示板なのになんで気付かなかったのか…。
その悲しみは言葉なって俺の口から吐き出される。
その呟きを聞き更に笑いだすアレク。
ちくしょう!もう好きなだけ笑うといいさ!!
その後、俺のちくしょうといった態度がよほどツボに入ったのかアレクはしばらく笑い続けるとようやく口を開く。
「あー、笑った笑った!まぁ依頼についてはこんなもんだ。にしてもレオンに説明した受付って一体誰なんだ?」
「笑いすぎだよ…。たしか名前は分からないけど綺麗な髪で色は薄い赤で目の色が翠色だったかな。あと最近の新人さんは話を全く聞かないって愚痴ってたよ。」
俺はアレクの質問に昨日のことを思い出しながら答える。
「あー、なるほどエレナか。納得した。」
「なにに?」
ただ特徴を伝えただけで何かに納得するアレクに俺は質問を返す。
「いや、お前が話を聞いてたっていうのに掲示板のことをよく知らなかったことにだよ。エレナは仕事はすごいテキパキできるんだけどちょっと抜けてるところがあってな…そんな愚痴を漏らしてたってことは話をしっかり聞いてくれるレオンの態度が嬉しくて多分説明が飛んだんだと思うぜ。」
「む、確かにアレクも組んでるパーティーの制度となそういうのも教えてもらってないような気が…ってそれちょっとで済むかな!?」
パーティーの制度とかほとんどが利用する掲示板の情報だけ伝え忘れるとか割とそれかなり重要なことじゃないですかね!?
俺はアレクの言葉に若干食い気味に反論する。
「俺が教えてやってるんだからいいじゃねぇか。そういうところも含めてエレナのチャームポイントだよ。
それともなんだ?レオン様は男なのにそれくらいのミスも水に流せずネチネチと文句を言う心の狭いお方なんですかねぇ〜?」
俺の反論にアレクが悪い笑みを浮かべながらおちょくるように煽ってくる。
「いや、別に文句があるとかじゃないけどさ。
新人冒険者を心配してるのは話を聞いてて分かってるからね。あと俺を煽るはやめろ。」
「おー、こわい!まぁ彼女をそんな風に分かってくれてる人がいるだけでも救われるってわけだ。ありがとな。さて、依頼については色々教えたわけだがなんか受けたいクエストっていうのは決まってんのか?」
少し脱線していた話を元へと戻し、少しまくし立てるかのように希望のクエストを聞いてくるアレク。
なんか変だな?ていうかなんでありがとう?
俺は不思議に思いながらも質問に答える。
「あ、あぁ。贅沢を言えば今日中に終わらせることができて俺のランクでも受けられるもので、ある程度稼げる依頼なんかがあるんならそんな依頼を受けたいけど…。」
我ながら思うが中々に強欲な条件だと思う。
要するに今日中に終わる簡単で儲かる仕事がしたいということだからな、見つからなくても当然だと思う。
「なるほどなるほど。じゃあこんなのどうだ?」
しかしなんてこともないようにアレクが一枚の依頼書を渡してきた。
あったの!?そんな好条件の依頼あったの!?
渡された依頼書を確認する俺。
【ヤスラギ草の採集】ランクG
[内容]
回復ポーションの原料となるヤスラギ草の採集
[期間]
無制限
[報酬]
一束(十本)につき1000イル
※品質により報酬額の上下あり
「えっ、そんな簡単なものでいいの!?」
予想以上に簡単な内容に思わず声をあげる。
いや、だってヤスラギ草なんてカリジュの森を抜けたあとここに来るまでところどころにたくさん見たんだよ?
名前からして回復効果がありそうってことくらいはわかってたけど正直道端の雑草くらいにしか思ってなかったし…。
ちなみにいつもフルパワーの鑑定状態だと疲れるから普段は見ようと思った時にしかフルの鑑定情報が表示されないようにしている。
これも長年の鍛錬の賜物だ。
「はははっ!そうか、そんな簡単なことって言えるくらいの依頼か!まぁ簡単だしな!うん、簡単簡単!」
何か強引に話を進めて何を隠すような返事をするアレク。
なんだろう…?なんか引っかかるな…。
依頼は簡単に見えるのにアレクの雰囲気に痒いのに痒いところが分からないようなモヤモヤとした気分になる俺。
だが考えたところで分からない…ならば!
こんな好条件の依頼、誰かに受けられる前に俺が受けなくては!
「うん、この依頼にするよ。アレク、ありがとう!」
俺はこの依頼を受けるとアレクに伝える。
「あぁ、気にするな。」
昨日と同じようになんでもないようなことといった具合に返事をするアレク。
「ちなみに依頼を受けるんだったらその依頼書を受付まで持っていって受注したことを伝えないとだめだぞ。」
「分かってるよ。本当に色々教えてくれてありがとう!時間をとらせて悪かったね、アレクもこんな朝からギルドに来たってことは用事があったんじゃないの?」
俺は重ねて礼を伝えアレクに質問をした。
俺のそんな質問にもアレクは問題ないといったような感じで返事を返す。
「あぁ、用事といっても急ぎではないから大丈夫だ。俺も朝から少し遠出になる依頼を受けようと思ってな。昨日も話しただろうが他にいるパーティーメンバーを待ってるんだよ。まぁ既に待ち合わせの時間は過ぎてるんだけどな!」
なるほど、パーティーメンバーを待っていたのか。
アレクが待ち合わせの時間より早く来るようなタイプの人間で助かった。
おかげでこんな割のいい依頼を受けることができる。
というかアレクがいなかったら途方に暮れていたな…。
「そっか、それじゃ邪魔にならないうちに俺は依頼に挑戦してみるよ。」
「あぁ、気を遣わせちまって悪いな。レオンも初めての依頼からしくじるなよ?頑張ってこい!まぁ、失敗したら失敗したで笑い話にはなるけどな!だから安心して失敗するといい!」
「失敗前提で話をするのやめようか!?」
俺の緊張をほぐすためにわざとそういう言い方をしているのだろう。
そうだよね?実は本当に俺が失敗するのを聞いて笑いたいとかじゃないよね!?
そのことに少し不安に思いつつもアレクと別れ受注を完了してギルドを出る。
さて、冒険者になって初めての依頼だ…!
俺は気を引き締めながら王都の門をくぐるのであった。
☆ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー☆
「まだGランクの新人なのにあの依頼が簡単ねぇ…。」
レオンがギルドから出て行ったのを確認し俺は独り言を呟く。
俺はこの目で確認した隠蔽で隠されていたレオンのステータスを思い出す。
「16歳であのステータスとか期待の新人すぎんだろ…。」
俺は呆れから表面上は肩をすくめてはいるがその内側にある燃えるような感情を俺は理解していた。
ギィィ…
ギルドの門扉が開く。
「おいおいアレックス!もう来てたのかよ!」
茶色の毛並みに動物の耳、すき透るような金の瞳。
その鋭い目付きが彼をオオカミだと思わせる。
彼は狼人族のヴェルグ、どうやら門扉を開けたのは俺が待ち合わせをしていた仲間の一人だったようだ。
「馬鹿野郎、俺が早いんじゃなくてお前が遅いんだよ。時間とっくに過ぎてるんだからな?あとアレックスじゃなくてアレクって呼べ。」
俺は待ち合わせに遅れてきたヴェルグの言い分に苦言を呈す。
しかしこれといって反省が見えないのはいつものことのようだ。
「仕方ねぇだろ?獣人族は朝が苦手なんだよ!ていうか大体の生き物が朝は苦手のはずだろ!アレックスが朝に強過ぎなだけだ!」
「苦手なのと時間に遅れることはイコールじゃないからな?それにさっきも言ったけど俺のことはアレクって呼べって何回言わせるんだよ。わざとか?わざとなのか?」
なんでこいつだけはいつまでもアレックス呼びなんだよ…。
他の仲間は俺の頼みを聞いてくれてアレクって呼んでくれるのに…。
その名前じゃないと色々と困るんだよ!
「そんなに気にしなくても結構みんな気付いてると思うけどな?なぁ、アレックス・レイルード殿?」
「お前やっぱりわざとだろ!?」
俺の反応にしてやったりといった顔をするヴェルグ。
ちくしょう!さっきの意趣返しのつもりか!?
そう、俺の名前はアレックス・レイルード。
現レイルード家の当主、つまり…
七天の騎士が一人、水蒼の騎士である。
既に考えてあるストーリーの伏線のため少し物語を動かしましたがしばらくの間はほのぼのと進めていきますので物語が大きく動き出すまで首を長くしてお待ちください。




