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第22話 初戦闘!冒険者達の育ての親!

少し長くなってしまいました…。

次回からは通常と同じくらいの長さに戻りますのでよろしくお願いします。

「はぁ〜、にしても広いなぁ〜」


両親達に背を押され冒険に出て体感にして約二時間。

俺は今、王都に向かうため草原の真ん中を真っ直ぐに進んでいる。

草原といっても道は整備されているし状況としては草原の真ん中に整備された道を進んでいるが正しいわけだが…それにしても広すぎる…。

俺が元いた世界にも牧場のように草原はあったが流石にここまで広い草原は覚えがない。

これは迷子になってもある意味気付かないな。

景色に変化が無さすぎて目が疲れた気がする…。

早めに一息つきたいところだな…。

ちなみに王都に向かうためには、この草原を抜けた先にある『カリジュの森』という場所をさらに真っ直ぐ抜け1時間ほど歩いた先にあるという。

カリジュの森表層部は草原の魔物より多少強い程度の魔物が生息しているくらいだが森の最深部にはそんな魔物なぞ足元にも及ばないほど凶悪な魔物が生息している。

だから森を抜ける際は森の奥に近づかないよう気をつけなければならない。

とはいえ草原の道から入る森は最深部からかなり離れた部分だから俺が自ら奥へ進まない限りよっぽど大丈夫だと思うけどな。

そんなことを考えながら草原を進み続ける俺。

一向に変わることのない風景。

だがそこで俺の気配探知に引っかかるものがあった。


「ん?なんだ?」


俺は足を止めて気配がする方へ警戒を向け目を凝らす。

気配はゆっくりと近付いてきており、やがて5mほど離れた場所にある草むらがガサガサと揺れ動き始めた。

ガサガサと音を立てながら出てきたもの。

それは薄い青色の透き通った体をもつ『雑魚の中の雑魚』の異名を持つ冒険者の育て親と言っても過言ではない存在、スライムだった。

そんなスライムがポヨポヨと草むらから五匹出てきた。


「ま、魔物だ…魔物だよ…作り物やCGなんかじゃない本物の魔物だよ!ってそうじゃなかった!」


初めて魔物を見たことに軽い感動と少し興奮が収まらない俺だがすぐに意識を改め警戒をし直す。

もし俺が転移者だとしたら好奇心から知識もないまま捕まえに行ったであろうことが目に浮かぶが、今の俺は()()()だ。

魔物の危険性なんてものはこの十数年、父さんと母さんから何度も教えられた。

例えスライムといえど油断は禁物であろう。

今の俺の人生は決してゲームなんかじゃない。

魔物との戦闘とは命のやり取り。

魔物に負けるというのは命を取られるということであり、文字通りコンティニュー不可のゲームオーバーになるわけだ。


「はぁーふぅー」


冷静になって今の状況を把握する為、俺は大きく息を吸い深呼吸を行う。

よし、これで頭がしっかりまわる!


『スライムだからと油断はしない』


うん、これは大事なことだ。

何かの拍子に突然身動きが取れなくなってそんな時に顔へスライムが張り付いてきたらそれだけで俺は御陀仏だろう。

まぁ、そんなほとんどありえないような可能性を考慮するのは流石にやりすぎかもしれないが初めての戦闘だ、やりすぎなくらいで丁度いいだろう。


『ならばここは逃げるべきか』


いや、それはないだろう。

これから森も抜けて行かなくちゃいけないのにスライムくらい倒せないようじゃ森を抜けて行くなんて出来るはずがない。

冒険者なんて夢のまた夢だろう。

少なくともスライムは初心者向けのかなり初歩的な魔物のはずだ。

まぁゲームによっては物理攻撃が効かないとか雑魚の名を返上するようなやつもいるらしいが、ここは王都から数時間の距離にあるような草原だ。

もしそんな強敵ともいえるような特質をもつ魔物が近くにいるのならそんなところに王都なんて作らないだろう。

つまりこのスライム達は雑魚である可能性が非常に高い。

そんなスライムが全部で五体出てきた。

これは俺の実力を試してみる絶好の機会、俺は剣を構えスライムとの距離を少しずつ詰める。


「でも一応鑑定しておくか、もしかしたら危ない魔物なのかもしれないし。」


距離詰めつつ俺はスライムに鑑定をかける。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ブルー・スライム

種族 スライム

Lv.1

HP 67/67

MP 32/32

ATK 83

DEF 58

INT 54

DEX 53

AGI 54

LUK 32


スキル

【消化液 lv.2】【吸収 lv.1】


ユニーク

なし


エクストラ

なし


パッシブ

なし


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「よかった、強敵ってわけじゃないみたいだな。」


鑑定結果に安心し、俺は内心ホッとする。

ステータスだけなら俺の足元にも及ばないし五体同時に相手にしても難なく勝利できると思う。

強いて言えば【消化液】ってスキルが危険かもしれないな…。

それと、もう一つの【吸収】だがスキルの方に入っているということは俺の【超吸収】とは全く別物のスキルってことだろう。

まぁ同じようなスキルだったとしても今から俺とのステータス差を埋めることは出来ないし大丈夫だと思うけどね。

俺が考察をしている中、一匹のスライムが急に飛び跳ねた。


「キュピァッ」


む、どうやら気付かれてしまったようだ。

まぁこの距離だし気付かれるのは時間の問題だったかもしれないけどね。

仕方ない、そろそろ戦闘開始といこう!


「はっ!」


俺に気付きポヨポヨと飛び跳ね迫ってくるスライムを

俺は剣で斜めに切り裂く。

切り裂かれたスライムはベシャリと音を立て地面に落ちるとそのまま動かなくなった。


「まずは一匹!」


その勢いのまま俺はスライム達に走り出し、一匹を足で蹴り飛ばし、そのまま横にいたスライムへ剣を振っる。

切り裂かれたスライムは最初のスライムと同じようにゼリー状の中身を地面にこぼしながら動かなくなる。

蹴り飛ばされたスライムも中身こそ出ていないが倒した二体と同じように原型を失い平たく潰れ動かないため多分仕留めたはずだ。


「これで三匹!」


そのまま四匹目を仕留めようとスライムのいた方向へ足を踏み込んだその瞬間、背後から迫る気配を感じる。


「しまった!一匹見てなかった!」


突然の回避行動に全身の筋肉は悲鳴をあげるが俺は踏み込んだ足の力を無理矢理に真横へ捻じ曲げギリギリで飛び退くことに成功する。


「あっぶねぇ!」


どうやら回避できたようだが俺が飛び退くと同時にバシャッというバケツで水を撒いたような音が聞こえた。

急ぎ状況を確認すると俺がさっきまでいた場所には透明で小さな水たまりができており、地面からはシュオシュオといったまるで溶けているかのような音がしている。

まるでというか本当に溶けてるようにしか見えないのだが…。


「こっわ!スライム全然雑魚じゃないじゃん!めちゃくちゃ危険すぎるだろ!!」


あの時背後の気配に気付かなければ消化液が自分に当たっていたかもしれない事実に恐怖すると共にこの野郎!といった怒りが湧く俺。

この時の俺は溶かされるんじゃないかとかなりスライムに恐れを抱いているわけだが後日俺はスライムの真実を知る。

これは後から知ったことなんだが、実はスライム程度の消化液を受けたとしても皮膚が溶けるといった事実はなかった。

シュオシュオという音はスライム程度の消化液では威嚇くらいの効果しかなく掛かったとしてもせいぜい少し皮膚が爛れるくらいの下位ポーションを振りかけるだけですぐさま治るような威力のだった。

まぁ、この時の俺は知らなかったんだからどうしようもないわけだが…。


「ピギギギィ!」


「おっと!」


消化液に怯んだ俺の隙を狙うように四匹目の経験値となるはずだったスライムが体当たりを仕掛けてくる。

くっそ、さっき無理矢理に避けたせいで動けねぇ!

ならここは…!


炎の矢(フレイムアロー)!!土の棘針(アースニードル)!!」


俺は体当たりを仕掛けてきたスライムを[土の棘針]で串刺しにし、消化液を放ったスライムには[炎の矢]を撃ち込んだ。

本来魔法とは基本、詠唱というものが必要なわけだが、この詠唱とは曖昧なイメージを強固なものにするため唱えるものであるため科学な世界から転生してきた身でありながらチート持ち俺からすれば全くもって必要のないものだった。

その結果、今のような瞬間魔法構築が可能となり【無詠唱】のスキルと魔法の多重展開ができるようになったわけだ。

ちなみに多重展開はまだ【三重詠唱】までしか出来ないが無詠唱の方は現状会得した魔法は全て無詠唱で発動可能となっている。

しかしまさかスライム相手に上級魔導士クラスの技術を披露することになるとは…。


「「ピギィアア!」」


串刺しと火だるまにされた二匹のスライムは断末魔のような声を上げると先に仕留めた三体と同じように動かなくなった。

俺は魔物には魔石があることを思い出し、五体の死体を確認し小指の爪程の魔石を回収する。

スライムの魔石は霞んだ灰色のような色をしていてお世辞にも綺麗だとは言い難かった。

あたりには魔石をほじくり出したせいで見るも無残なスライムの死体の一部が飛び散っている。

流石に街道を魔物の死体で汚したままにしておくのは忍びない。

俺は魔石をズボンのポケットに入れ、草原の一部に穴を掘るとそこにスライムの死体を投げ入れ火魔法で火葬をした。

あ、剣を掃除するのを忘れていた。

この剣は王都までの身支度と一つとして父さんがくれた物だが一般的な店売りのものであるため大した価値があるわけではない。

だが王都までお世話になる相棒だ、ここで手間を惜しんだ為に大怪我を負うなんて馬鹿馬鹿しいにもほどある。

俺は火葬を終えた後、剣についたスライムの体液を水魔法で洗い流すとため息をつき疲れたように身体を弛緩させた。


「はぁー…これが戦闘か…。」


初めての戦闘で緊張していたのか、もしかしたら大怪我を負っていたかもしれないという恐怖心が今頃出てきたきたのか、心労によって思った以上の疲れが身体を襲う。

一度座り込んで休憩しようと思ったその矢先のことだった。

俺は自分の身体に違和感を感じた。


「うん?おかしいな?疲れたはずなんだけどなんか力が満ちてるような…。」


なぜか分からないが戦闘を始める前より…いや、生まれてから今日に至るまでのどの時より力が満ちている気がする。


「あぁ、そうか!魔物倒したからレベルが上がったのか!」


そんなことにすぐ気づけなかった自分が少し恥ずかしくなるが俺はどれくらい強くなったのかを確認するためステータスを開く。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


レオン・フォードベルク

種族 人間

Lv.2

HP 312/359

MP 1502/1524

ATK 218

DEF 167

INT 388

DEX 293

AGI 168

LUK 102


スキル

【隠蔽 lv.8】【生活魔法 lv./】【魔力操作 lv.7】

【火魔法 lv.4】【水魔法 lv.4】【風魔法 lv.4】

【土魔法 lv.4】【剣術 lv.Max】【体術 lv.8】

【双剣術 lv.4】【消化液 lv.3】【吸収 lv.2】


ユニーク

【無詠唱 lv.8】【二重詠唱 lv./】【三重詠唱 lv./】


エクストラ

【全魔法適性 lv./】 【神眼 lv.3】 【万物創生 lv.1】 【空間把握 lv.3】【限界突破 lv./】 【超吸収 lv./】 【簒奪 lv.1】【創造神の加護 lv./】


パッシブ

なし


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「おお…レベル1しか上がってないのにこんなにステータス上がってるのか…魔法系に関しては二倍以上伸びてやがる…。」


中々どうしてチートっぷりが激しいステータスの上がり具合だった。


「あと【消化液】と【吸収】のスキルが増えてるな。これが【簒奪】のスキル効果ってことか。」


スキル欄にはスライム達が持っていたスキルが追加されており、これが【簒奪】のスキル効果で奪ったものだということがわかる。

二つのスキルレベルがスライム達より上がっているのは同スキルを奪った時にスキル経験値へ還元されたということだろう。


「人間の俺が消化液とか使っても大丈夫なのか…?」


人の口から消化液か…ゲロで溶けるとか相手も嫌だろうし俺も嫌だな…。

俺は密かに【消化液】の封印を決意し記憶の片隅に置いておく程度にすることを決め、二つ目の【吸収】の効果を確認する。


「【吸収】はやっぱり俺の【超吸収】とは全く別物だったな。まぁでもある意味似てるっちゃ似てる…のか…?」


【吸収】の効果は栄養素の蓄え、つまりたくさん食って栄養素を溜め込んでおけば長期の間その栄養を使用することで何も食えなくても活動できるようになるといったスキルだった。

まぁ、それによってできるのは栄養の保持と補充だけであってお腹はふつうに空くのだから人間である俺にはあんまり活用する機会がないんだけどね。

新スキルが俺にとっては死にスキルだったのとに少しショックを覚えるが魔物を倒せば倒すだけ今みたいにスキルが増えていくっていうのは中々に面白い。


「まぁこればっかりは仕方ない!いつか有効活用できる日が来るかもしれないしゲットしただけよしとしよう!」


俺は今後新たに魔物から奪ったスキルに今回のスキルが活かせる日が来ることを願い再び歩きだす。


「森では別の魔物と戦うことになるかもしれないし今度こそ油断しないよう気をつけないとな。目指すは王都!」


スライムとの戦闘を省みて今度こそ油断しないようにと気を引き締める俺。

拠点となる王都にたどり着くため俺は草原を進み、まずはカリジュの森を目指すのであった。



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