第20話 七天の騎士
「よし、今日の鍛錬はここまで!」
「はい!ありがとうございました!」
父さんとの剣術の鍛錬を終え、俺は木に掛けていたタオルで汗をぬぐう。
この次は母さんと魔法の鍛錬でそれが終わったら自主練とカイル&クロエを愛でるという重要事項が待っている。
新しい魔法本も買ってもらえるようになっており今の俺は【下位生活魔法】の他にもいくつかの魔法を使えるようになった。
この4年間、俺にとってはたくさんの変化があった。
ちなみにカイルとクロエとは双子で生まれた我が家の新しい家族、つまり俺の弟と妹である。
カイルが弟、クロエが妹だ。
2人は最近2歳になったばっかりだが俺のようなストイックな生き方はしていないため魔法の練習をしたりといったことはない。
一般的には5歳ごろから教師となる者を雇い、学ばせていくみたいだが俺は父さんと母さんから教えを請いている。
なぜ教師を雇って学んでいかないのかというと答えはシンプルで父さんと母さんの方がそこら辺の教師なんかよりよっぽどすごい人だからだ。
俺は最初、我が家の家柄は大豪商なんじゃないかと予想していたが実際は商業の「しょ」の字もない家柄だった。
さて、突然だが俺の転生したこの世界には大きく分けて6つの国がある。
一つ目は俺の生まれた国でもある国
『ヴァンデルシア王国』
二つ目はミューラの生まれ故郷
『獣王国デルファスト』
三つ目は多神教の国
『宗教国家エンゲージ』
四つ目は農耕や森林、緑の国
『緑園国グリムシード』
五つ目は砂漠と古代遺物の国
『砂国ラムシール』
六つ目は鍛治、技術の国
『ドワーフ国パルライム』
その他にもエルフの国や精霊達の国といった異世界といったら!という国も存在はするが上の6つ国と比べると規模はかなり小さいため説明は省かせてもらった。
で、『ヴァンデルシア王国』には通称[四大公家]と呼ばれる貴族の中でもかなりの権威をもった家柄が四つある。
[ラダムース家][ローズヴァニア家]
[ナイトストン家][リンクベール家]の四家だ。
そしてそれに対抗できるだけの独立した権威を持った貴族ではない、国の史記にも書かれているこの世界に生きる者なら子供だって知っているくらい有名な七つの家柄もある。
通称[七天の騎士]。
『月光』アルティミーニ家
『火天』ヴァージェス家
『水蒼』レイルード家
『木翠』クレラント家
『金鳳』マールジンク家
『土剛』グランレニア家
『日輪』フォードベルク家
これら七家が現代の七天の騎士である。
え?見たことある家名があるって?
奇遇だな、俺もすっごい親近感のある家名がある気がするよ!
もう分かってると思うけど一応最後まで聞いてくれ。
[七天の騎士]とはこの王国に生きる騎士の中でも群を抜群を卓越された強さ持つ者に与えられる称号のようなものなのだが国王から強さの証として与えられるその称号がもつ権威は計り知れない。
ちなみに元々家名をもつ貴族の人間であってもその称号を得ることは不可能ではないが[七天の騎士]とは王国最強の矛であると共に権力に縛られることのない最強の盾でなくてはならない。
故に貴族とは別の独立した権威をもつわけだから、その称号を賜るには貴族としての名を捨てる必要がある。
ここで最初に戻るわけだが…。
俺が転生する前に選択した家柄の条件を思い出してほしい。
『裕福であるが貴族ではない所』
ふむ、この条件ならば俺が最初予想していた大豪商という線も間違ってはないように思える。
だがしかしうちは商人ではない。
そしてなによりも俺にはフォードベルクという家名が付いていて…。
そこらの教師なんかより剣術の上手な父さんがいて…。
まぁ、つまりだ…。
貴族じゃないのにお金持ちで商人でもなく世界的に有名な家名がついている我が家の家柄、それは王国最強の騎士、『七天の騎士』と呼ばれる家柄であった。
ちなみに母さんは貴族ではないものの元王宮仕えの魔導士でお城に用事のあった父さんが母さんに一目惚れしてそこからトントン拍子で結婚まで至ったようだ。
最強の騎士の一角である父さんと元王宮魔導士の母さん、この2人以上に教えを請う相手として相応しい相手がいるだろうか?いや、いない!
そういった理由で俺は両親に教えを請うているのだ。
ちなみに俺が父さんと母さんに鍛錬をしてもらうようになったのは約1年ほど前からだが5歳未満の俺にわざわざ教えてくれているのにもまた理由がある。
その理由というのは俺の魔法による事件がきっかけだった。
あの日初めて魔法を使った日から1ヶ月もしないうちに魔法本に書かれていた【下位生活魔法】の全てを覚えてしまった俺だが、もちろんそれでも鍛錬は行なっていた。
そして何度も同じ魔法を練習しているうちに俺はあることに気付いた。
これは偶然分かったことなんだが魔法を使うために魔力を集中させた場所は集中していない部位に比べてかなり丈夫になっているみたいなのだ。
それを認識したからなのか別の条件があったのかは分からないがその夜、ステータスを開いたときスキル欄に【身体強化】のスキルが追加されていた。
毎日魔法の鍛錬をしていたおかげで【魔力操作】のレベルや魔力の値も上がっていたので俺は【身体強化】のレベル上げもしようと全身に【身体強化】をかけて高速ハイハイなどを試していたんだがそれがいけなかった…。
赤ん坊の肉体に【身体強化】の反作用は耐えられなかったのだ。
【身体強化】とは文字通り身体を強化するといったものだが、それは成長や鍛錬された筋肉があるからこそ正しく使用できるものだ。
強靭な肉体があるからこそ強化された動きにもついていくことができる。
つまり強靭な肉体を持っていないのにもかかわらず
偶然発見し正しい使い方を知らずに【身体強化】を使用したからこそ俺は反作用によって身体を傷つけてしまったわけだ。
当然ながらそれは一歳にも満たない赤ん坊が負うような身体のダメージではない。
倒れて動けない俺を見つけた母さん達の慌てようはそれはもうすごかった。
すぐさま母さん達に連れられて俺は診療所のような場所で治癒魔法をかけられる。
その時の検診で【身体強化】を使用したことがバレてしまったわけだ。
それを聞いた両親の驚き顔は当分忘れることはないだろう。
その後、治癒魔法をかけてくれた男が治療の完了を伝えると俺はすぐさま教会へと連れて行かれた。
本来ならばこの世界の成人の歳である16になった時に成人の儀として教会で洗礼を受けその後ステータスを見てもらうというのが通例らしいが、その時両親は俺の持つスキルに暴発系の何かがあるんじゃないかと思ったみたいで何とか対策をとろうとスキルの確認をしようとしたようだ。
当然俺のスキルには隠蔽をかけてあるわけだから確認されたところで高いステータスに驚くくらいなのだが
俺はそこで一つのスキル情報を開示した。
隠蔽を解いたそのスキル…。
それは【創造神の加護】である。
もちろんこれは自分一人で決めたわけではない。
覚えていると思うが【創造神の加護】には教会から連絡を取れるといったものがある。
両親が教会の司祭と話を纏めている間に俺はハグルウェットと連絡をとり事情を説明し、その結果として俺はスキルの開示を行なったのだ。
スキル鑑定を行われた後の惨状はそれはもうひどいものだった……。
スキル鑑定をした司祭みたいな人は俺をまるで神のように崇めはじめるし…母さんはよろけて倒れそうになるし…父さんは口を開けて固まってるし…いろんな意味で地獄絵図だった…。
その後、正気を取り戻した父さんが司祭に俺のスキルのことは黙っているように話をつけ、自宅に戻った後俺は知識もないのに意志を持って【身体強化】を使ったことを何度も叱られた。
と、まぁその結果として両親達は俺の特異性というか異常性というか他の赤ん坊とは違った理由を理解し、俺のやりたがることを応援してくれるようになったわけだ。
さて、そろそろ母さんのところに行かないと遅いって怒られちゃいそうだな…。
宮廷魔術士仕込みの練習法だから結構きついんだけどなぁ…。
だがこんなところでへばるわけにはいかない…!
俺はカイルとクロエを愛でないといけないんだ!
精神年齢を含めれば20年以上生きて初めてできた兄妹は可愛くて仕方がない。
俺はご褒美(愛でる時間)を糧に今日もきつい鍛錬を乗り越えるのであった。
またもや地の文続きになってしまった…
読みづらいような形なってしまい申し訳無いです…。
※今日中に国や家名を簡単にまとめた備考を追加しておきますので忘れてしまったことがあればそちらを参照して思い出していただけると幸いです。
今後も新キャラや新しい国や都市の名前が増えればそちらの方に追加していきます。




