第19話 初めての魔法とイメージの違い
「…………………。」 パタン。
床に開いていた魔法本を閉じる。
あれから約5時間、俺は眠気に襲われていたのも忘れて何度も何度も読み直しをおこなっていた。
両親もすでに寝室に入っており俺が魔法本を読んでいることを咎める者は誰もいない。
タイトルからも分かる通り中身は初歩的なことしか書いていなかったが、その情報を元に俺の魔法が作られていくことを思えば俺が何度も読み直していたことを理解してもらえるだろう。
ここで間違った認識のまま魔法の基礎を固めて鍛錬を続けていくようなことになればそれは大きな徒労に終わってしまう可能性が高い。
下手をすれば変な癖がついてしまって上手く魔法が使えなくなるなんてこともあるかもしれない。
だからこそ俺は何度も読み直し入念なチェックと情報の刷り込みをしていたというわけだ。
何度も読み直して俺なりに理解した本の内容がこれである。
1.魔法とは人の目には見えないがこの世界に満ちている魔素(酸素や窒素のようなもの)と体内にある魔力とを混ぜ合わせることによって現象として発動させたものである。
2.魔力には個体差があり、その量によって威力、質といったものに変化が出る。
3.魔力は魔法を使用すれば使用するほど成長するほか魔物の討伐などによるレベルアップでも成長する。
4.体内の魔力が枯渇すると間もなく強烈な倦怠感に襲われ強制的な睡眠状態へと陥る為、魔法を使用する際は周りの安全に気をつけ魔力が枯渇するような事態にならないよう気を付けなければならない。
なお枯渇一歩手前といった状況下の場合、強制的な睡眠状態への移行といったことは発生しないが倦怠感や一時的体調不良などは起こるのでどちらにせよ気をつけなければならない。
5.魔法を発動させるにはイメージが大切である。
例えば【下位生活魔法】[灯り]を発動させたい場合はロウソクの火をつけるようなイメージを持つと成功しやすい。
6.一般的な魔法の種類としては、日常生活でよく使われる【下位生活魔法】と少し才が必要とされる【高位生活魔法】、四元素を祖とする火水風土の【属性魔法】がある。
そのほかにも氷や雷、光や闇などといった四元素の派生から生まれたとされる【派生属性魔法】や適性といった形で時々確認される血や影といった【固有魔法】、精霊たちと思いを通わせることによって使えるようになる【精霊魔法】、そして滅多に見ることがないと言われる重力や時を司るという【創生魔法】などがある。しかしまだまだ解明されていない魔法は多く存在しここに書いてあることが全てではない。
かなり大まかな形式となるが書いてある内容としてはおおよそこういったものだ。
本の読みすぎで固まった体をぐっと伸ばし息を吐く。
さて、内容はしっかりと把握したしそろそろやってみるか…。
初めての魔法ってやつを!!
「ふっ!」
右腕を前に突き出し右手の人差し指あたりに魔力が集まるようなイメージを固めて目を瞑る。
イメージ…。イメージ…。イメージ…。……っ!!
今まで感じたことなかった暖かさが指先に集まっていくのを感じる。
よし、ここでロウソクの火をイメージするんだ…。
俺はロウソクのイメージを霧散させないうちに使いたい魔法の名前を唱えた。
「とーち」
すると指先にあった暖かさはふっと消え、その指先に
ポッと弱々しい光の玉が浮かんだ。
やった!成功だ!俺が魔法を使ったんだ!
しかし初めての魔法成功に興奮したせいで集中力が乱れてしまい光の玉は弱々しかった光をもっと弱めやがて何事もなかったかのようにその場から消えてしまった。
あぁ、しまった…。
慣れてしまえば無意識に使えるようになるらしいが今の俺はまだ素人に毛が生えた程度の存在でしかない。
やはり練習あるのみだな!
俺はさっき同じように腕を突き出し指先に神経を集中させる。
しかし俺はここであることを閃いた。
最初の[灯り]はロウソクの火をイメージして発動させたわけだが、同じ灯りなら蛍光灯はどうだろうか?試してみる価値はあるんじゃないか?
そんなことを閃いてしまっては試さないわけにはいかない。
指先に暖かさが集まっていくのを感じた時に俺は蛍光灯をイメージしてトーチと呟いた。
「とーち」
カッ!
トーチと呟いた瞬間、それはまるで朝日のように部屋の中を照らした。
窓を貫きその光は裏庭すらも照らしてみせる。
最初のトーチとは比べものにならないくらいの光の大きさ。
魔法がイメージだとはよく言ったものだ。
同じ魔法だというのにイメージ次第でここまで変わるものなのかと驚愕する俺。
これは考えて練習しないと確実に両親とミューラにバレるな…。
しばらくはロウソクのイメージで安定した強さの光が出せるように練習だ!
蛍光灯のイメージを封印しロウソクでの魔法練習を続けることにした俺。
「っ!?」
何度目の発動だろうか、俺の体を突然の倦怠感が襲ってきた。
おまけに頭も痛くなりコンディションとしては最悪の状態となってしまう。
なるほど…これが魔力枯渇の一歩手前ってやつか…。
そりゃ魔力枯渇には気をつけろって書かれてるわけだ…。
めちゃくちゃきついじゃないか…。
その場に倒れこむようにうつ伏せになり魔力の回復を待つ。
体感にして10分と言ったくらいだろうか。
ようやく頭痛もおさまり体の倦怠感も薄れていく。
俺は体を起こしステータスの確認をするためにこころの中でステータスと呟く。
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レオン・フォードベルク
種族 人間
Lv.1
HP 25/40
MP 7/63
ATK 20
DEF 20
INT 28
DEX 21
AGI 23
LUK 34
スキル
【隠蔽】【下位生活魔法】【魔力操作】
ユニーク
なし
エクストラ
【全魔法適性】 【神眼】 【万物創生】 【空間把握】
【限界突破】 【超吸収】 【簒奪】【創造神の加護】
パッシブ
なし
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お、スキルに【下位生活魔法】が追加されてる!
【魔力操作】っていうのは指先に集まった暖かさみたいのを感じ取れたから習得したんだろうか?
それに体力も最初に見たときより少し上がっているようだ。
そして肝心のMPだが最初に見た数値よりかなり上がっていることが分かる。
残りのMPが7ということはステータスをこまめに見ていたわけじゃないからわからないが全魔力の十分の一以下の魔力になると枯渇寸前の判定ということだろうか?
確認したい気持ちもあるがもう一度あの倦怠感と頭痛がくると思うと流石に今日は無理だという考えに至ってしまう。
仮定とはなるがとりあえずは十分の一を目安に鍛錬を続けていこうと俺は決める。
今日の鍛錬はこのへんで終わりにしておこう。
ステータスを閉じ俺は疲れた体を労わるため寝床へと戻っていく。
初めて魔法を使ったにしてはイメージによる強さの違いも知れたわけだ今日の鍛錬はかなり上出来な結果だと言えるんじゃないだろうか?
明日は別の生活魔法も使ってみようと考えながら俺は瞼を閉じる。
そしてその次の日もそのまた次の日も俺は魔法の鍛錬に身を費やした。
そして4年の月日が経った。
やっぱりステータスやスキルのことを書いてる時が一番楽しく書けますね…!




