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第18話 便利と凶器は紙一重

「ほら、これが魔法本だぞー?」


時刻は夕方、格子窓からさすオレンジ色の光は元の世界よりも濃く風情を感じる。

ミューラは夕食の準備をしており、俺は今しがた夕食を終えたばかりだった。

ちなみにミューラの作る料理はめちゃくちゃ美味いらしい。

よく母さんと父さんがそう話しているの耳にする。

俺も早く食べてみたいものだ…。

お腹も満たされ少し眠さが押し寄せていた時、『はじめての魔法の手引き』と書かれた本を父さんが俺に差し出してきた。

これが魔法本…!この本で学べば初歩とはいえ、俺が異世界を夢見た理由と言っても過言ではない魔法に触れることができるのか!

突然の差し出しに眠気も吹き飛んだ。

そんな気持ちの高ぶりからか本に向かって反射的に手を伸ばしてしまう。


「こら!話を最後まで聞きなさい!」


しかし父さんの叱責同時にその本は父さんの元へと離されてしまった。

あぁ…俺の魔法…。


「いや…そんなに落ち込まなくてもいいだろう…」


あからさまに落ち込む俺の顔を見て父さんが呆れたようにぼやく。


「いいか?魔法っていうのはとても便利なものだ。水魔法が使えたら有事の際に飲み水を確保したり魔物と戦ってついた返り血を落としたり本当に便利な使い方ができる。他にも火魔法が使えるなら野営の際に焚き火を起こせたり食材に火を通したりそれこそ色々な応用ができるだろう。」


ふむ、水魔法で飲み水って作れるのか。

飲み水は冒険をする上でかなり重宝しそうだな!

父さんの説明に最初に覚えるなら水魔法かな?

と考える俺。

そこに母さんから呆れるように突っ込みがはいる。


「もう、そんなこと説明したってわかるわけないでしょ?レオンはまだ0歳なのよ?」


そうだ!そうだ!

俺はまだ(肉体年齢的には)0歳なんだぞ!

しかし父さんはそんなことは意に介さずといった様子で返事を返す。


「はははっ!それは分かっているさ。だが、なんとなくレオンなら理解しているような気がするんだ。なんていったってレオンは天才だからな!」


いやいや!いくら天才赤ちゃんだったとしても転生者じゃなかったら流石にこの歳で言語理解は無理だからね!?


「そういえばそうだったわね!」


あぁ…母さんも納得しちゃうんだ…。

ダメだ…この2人早くなんとかしないと…。

そりゃ確かに言葉はちゃんと理解してるけどさ…。

両親の親バカっぷりはもう放っておくとして俺は続くであろう父さんの言葉を待つ。


「それでだな、えーとどこまで話したんだったか。

あぁそうだ。確かに魔法は便利なものだがそれはあくまで正しい使い方をした時だけだ。例えば火魔法なんかは魔物相手に効果的な攻撃手段となる。しかしそれを人に使ったり、魔法を理解せず間違えた認識で使って暴発させてしまったりするとどうなると思う?人間より強靭な魔物にすら効果的な魔法だぞ?きっとそれは大怪我、下手したら生死に関わるような危険なものになってしまうわけだ。長ったらしく話だがつまりなにが言いたいかというと誤った使い方をすればそれは凶器となり危険なものになるってことだな。」


ふむふむ、元の世界でいう包丁の扱いみたいな感じかな?

包丁は料理に使えば便利な道具だがその力を人に向ければそれはたちまち人殺しの道具となってしまう。

もちろん人にその力を向けないなんてことは当たり前の心構えだがそれを実践できるのかはそれぞれの良心にかかっているわけだからつまりは正しい使い方を知った上で歪まず正しいう使い方ができる人になってほしいってわけか…。


「まぁそんなに深く考えることはないがな!レオンは賢い!そんなレオンが間違った使い方をするなんて微塵も思っちゃいないからな!」


真っ直ぐな信頼を寄せてくれる父さん。

ハグルウェットの時もそうだったが人の真っ直ぐな信頼っていうのはなんでこうもむず痒いのか…。

まぁ当然そんな歪んだ人間になるつもりはないからいいんだけどね!


「あい!」


わかってる、大丈夫だよと伝えるように元気よく返事をする俺。

俺の元気な返事に父さんも母さんもニコニコと笑っている。

どうやら俺の気持ちは伝わったみたいだな!


「よし!この魔法本は今からレオンのものだ!大事にするんだぞ?」


そして父さんは手に持つ魔法本を俺へと手渡す。

俺は小さな体で抱きしめるようにその魔法本を受け取った。

魔法魔法魔法うへへへへっ…。魔法魔法魔法…。

やっと手に入った喜びからか自分の世界に入り込む俺。

大事に本を抱え込む俺を見て父さんたちが笑っているが自分の世界に入り込んだ俺は気付かない。


「はははっ!そこまで大事されるとは買ってきた甲斐があったというものだな!」


「まだ文字は読めないはずなのにほんと不思議よね。そうだ!レオンには英雄譚の物語より魔法本を読み聞かせてあげたほうが喜ぶかしら!」


「そうかもしれないな!レオン、よかったな!ママが魔法本を読み聞かせてくれるみたいだぞー!」


魔法魔法うへへへへっ…。ん?なんだ?全部聞いてなかった!母さんが何を読んでくれるって?

俺が自分の世界に没頭しているうちに母さんが何かを読んでくれることが決定したようだ。

状況が把握できない俺はキョトンとした様子で首をかしげる。

うーん…まぁいいか…。魔法本は手に入ったし。

流石に文字を読むところを見られるのはまずいから隠れながら学んでいくことになるけどな!


「アインズ様、カレナ様、お食事の用意ができました。」


早く読んでみたいと思っていた時に丁度よくミューラが夕食の準備ができたことを伝えにきた。

ナイスタイミングだ!これで1人の時間ができる!


「ああ、ありがとうミューラ。すぐ向かう!」


「ありがとうねミューラ。今日の夕食も楽しみだわ!」


そして本を抱え込む俺の頭をくしゃくしゃと撫でると両親はミューラに感謝を伝えへミューラと共に部屋から出て行った。

俺は両親たちが階段を降りていく音を最後まで聞き終えると同時に魔法本を開き、少しでも早く魔法が使えるようになる為スキルごり押しで魔法本の読み取りを始めたのであった。




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