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第17話 三度目の正直…?

「勝手に逃げ出すことがまさか本当になくなるなんて…。」


いつもと違い目を離しても大人しくしている俺に母さんが呆れたように独り言を呟く。

まぁ俺の目的は魔法を学べる本だったからな。

それが初歩のものとはいえ手に入るならわざわざ書斎まで突撃する必要もない。


「この歳で魔法に興味を持つなんて本当に変わった子よねぇ…。最近は夜泣きも滅多にしなくなったし…私が知ってる赤ちゃんと何か違う気がするわ…。」


あ、あれ?なんか雲行きが怪しくないですか?

しまった!流石に気味悪がられてしまったか!?

たしかに俺の行動って赤ん坊らしからない行動ばっかりだったし…。

あー!どうする!?どうするよ!?

くっ!こうなったらやるしかない!


「あーうー。まーまー?」


決まったぁぁぁ!

どうだ!これぞ全ての母を喜びの渦へ導く初めてのママ呼びだ!

これで怪しい雲行きは吹き飛んで快晴に…


「!?今この子ママって…!?やっぱりこの子…!アインー!アインー!」


しまったぁぁぁ!一歳にもなってないのに喋るなんてやりすぎた!

赤ん坊らしからない行動が原因なのにそれ以上にらしからない行動をとってどうするんだ!

なにが快晴だよ馬鹿野郎!

自らの失策に頭を抱えそうになる俺。

くそっ!賢い賢いって喜ぶような親バカタイプじゃなかったというのか!?

まずい…まずいぞ…!母さんが父さんを呼びに言ってしまった!

俺の【気配探知】にもかからない父さんなら俺の隠したステータスを見破る術を持ってるかもしれない!

今までは聡い子くらいにしか父さんは思ってたなかったかもしれないがさすがに母さんになんとかしろと言われたら何かしらの処置はとられるかもしれない…。

いや、待てよ?いかに父さんと言えど神様にもらったレベルの隠蔽は見破れないか!?

だがもし、もしも見破られたとしたら俺は赤ん坊ながらバケモノじみたスキル持ちだ…どんな未来が待ってるのか想像もつかない…。

どうする…どうする…!


「一体どうしたんだ?そんなに慌てなくてもレオンがどうしたと言うんだ?」


「いいからはやくー!あの子は…レオンは…!」


ああぁぁぁ!もう来てしまった!

母さんやめてくれ!俺はただ前世の記憶を持っていて神様に直接チートなスキルを多めにもらっただけの普通の赤ん坊より少し優秀な赤ん坊ってだけなんです!

悪魔や邪神の生まれ変わりってわけでもないですから!

お願いしますよ!神様仏様お母様ぁぁぁぁ!!!


「いい?アイン!」


やめて!


「あの子は…!」


お許しを!


「レオンは…!」


後生だから!


()()だったのよ!!!!!」

「(すみませんでしたぁぁぁ!!!!!!)」


……ん?今なんて?


「さっきね!レオンが私のことをママって呼んだのよ!まだ一歳にもなっていないのに!魔法にもこの歳で興味持ってるみたいだしきっとレオンは天才なのよ!」


前言撤回。

母さんはやっぱり親バカだった。


「なんだと!?もう喋ったっていうのか!?」


しまった!まだ父さんがいた!

父さんがキレ者だとしたら俺の行動はかなり怪しまれてしまうはず!

そうか…本当に警戒するべきは父さんだったの…


「カレナばっかりずるいぞ!レオン!俺はパパだぞ!パパって呼んでくれぇぇぇー!」


前言撤回。父さんも親バカだった。

………あー、終わったかと思った…。


「俺はパパだぞー!?レオン!頼む!後生だ!パパって呼んでくれぇぇぇー!」


人のことは言えないけど父さんの後生それでいいのかよ!!

しょうがないなぁ…。


「ぱーぱー!」


これでいいんだろ?父さん?

無駄に緊張したせいでかなり疲れてしまった…。

一回お昼寝でもしたいんだが…。


「うぉぉぉ!カレナ!今レオンがパパって言ったぞ!おおおおー!パパって言ったぞ!この子は天才だ!」


「ね!?この子はやっぱり天才なのよ!」


両親がこうも喜びはしゃいでると寝るに眠れないよなぁ。

はじめこそ気味悪がられているんじゃないかと焦ったが蓋を開けてみればただ喜んでいただけだった。

その理由が俺が初めて喋ったからっていうのだからなにかむず痒いような気恥ずかしいような変な気持ちである。

天才!天才と未だもてはやす両親。

そ、そろそろ恥ずかしいんだけど…。

するとそこにミューラが割って入ってきた。


「アインズ様、カレナ様、レオン様の成長は大変喜ばしい限りですがどうやらレオン様は疲れているみたいですよ?そろそろお昼寝をさせてあげたほうがよろしいのではないですか?」


おお、さすがミューラ!

俺の腹減りを最初に理解しただけあってよく俺の状態をわかっているな!


「す、すまん…。すこしはしゃぎすぎたようだ…。」


「ほ、本当ね…。レオンごめんね?」


父さんと母さんがはしゃぎすぎたことに謝罪する。

いや、むしろそんなことで喜んで貰えて俺としては嬉しいんだが…。

まぁここはお言葉に甘えさせてもらうとしよう。


「あーい!」


元気よく返事をする俺。

俺はハイハイで移動し、ベビーベッドから卒業してから用意されている布団のようなものにくるまる。

母さんも父さんも俺が眠るからか私室の方に戻るようだ。

ふあー…眠い…。今日のはすこしやりすぎたかと焦ったがどうやら両親はそれも天才という考えでいるみたいだ。

両親がそう思ってくれているなら期待を裏切ることはできないな!

俺は近々買ってきてくれるという魔法本を楽しみにフワフワとまどろみに落ちかけていた。

しかしそのまどろみは一人の人物に霧散させられてしまう。


「レオン様、まだ起きていらっしゃいますか?」


ミューラだ。普段このように起こす真似はしないためミューラの発言に驚く俺。


「あい?」


わざわざ俺を起こした理由ってなんだ?

すこし考え嫌な予感が背を伝う。

もしかして真の敵はミューラだったのか…?


「………。」


沈黙保つミューラ。

くそっ!油断した…っ!

最後の最後で油断してしまったことを今更嘆いても仕方がない。

俺は意を決してミューラの言葉を待つ。


「レオン様…。」


く、くるならこい!

紡がれる言葉に覚悟を決める俺。


「私の名前はミューラでございます。」


………は?


「私の名前はミューラでございます。」


な、なんだ?ミューラって呼べばいいのか…?


「……みゅーら?」


俺がミューラと口にした瞬間ミューラはガッ!っとガッツポーズをしていつにない笑顔で部屋から出て行った。


…………お前も親バカ組の仲間かよっっ!!!!!!


3度目の緊張は今度こそ確実に俺の体力を奪いきり、俺は今度こそ深いまどろみに沈むのであった。



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