第14話 鑑定!鑑定!?鑑定…?鑑定…!
「あいえい!」
気合を込めて呂律もまともにまわっていない言葉で鑑定スキルを使おうとする。
「…………あう?」
しかし鑑定スキルが発動した気配は感じられない。
あれ?なんでだ?気合が足りなかったか?
よし、ならもう一度!
「あいえい!!!!」
さっきよりも大きく、お腹の底から絞り出すように一生懸命声を出す。
しかしさっきと同じようにやはりスキルが発動した様子はない。
なぜなんだ!?!?
これだけやっても発動する気配のないスキルに俺は焦りを感じていた。
どうしてだ?なぜスキルは発動しない?
もしかして発動には正確な発音が必要なのか?
だとしたら赤ん坊の俺には使えないってことじゃないか…。
なんてことだ…と頭を抱えそうになる俺。
どうしてなんで鑑定鑑定鑑定と心の中でブツブツと呟きながら俺は天井を見つめた。
その時だった。
俺の頭の中を何かがスッと横切ったような気がした。
なんだいまの!?まさか鑑定が発動したのか!?
なぜだか知らないが鑑定が発動したようだ。
なぜ発動したんだろう。
しっかりとさっきの状況を整理する。
たしか発動しないことに絶望して…どうしてなんだと考え始めて…それから…
そうだ!鑑定鑑定って心の中でブツブツ言っていた!
さっそく答えを確かめるために鑑定と念じながら天井を見つめなおす。
【?????】
[木。]
よっしゃきたぁぁぁ!
偶然の産物だったが鑑定スキルが発動した。
どうやら心の中で念じることでスキルは発動するようだ。
確認の為にもう一度試してみる。
【?????】
[木。]
よし、やっぱり念じて情報を見たいものに目を向けることで鑑定は発動するみたいだ!
最初失敗したのは声を出すことに意識を集中させすぎたからだろうか?
とにもかくにもまずはスキルを無事発動させられたことに安心する俺。
しかしここでもう1つ問題が発生する。
そう、鑑定結果のしょぼさである…。
[木。]ってお前…。そんなの見れば分かるよ…。
ここは異世界だがさすがに天井の作りを見れば木材が使われているであろうことは鑑定を使わなくとも簡単に分かる。
普通鑑定スキルって材料の固有名詞だとかどういう性質があるのかとかそういうものが見れるスキルじゃないのか!?
くそっ!次の鑑定だ!
首を横に傾け今度は俺が寝かされているベビーベッドを鑑定する。
【?????】
[布。]
チクショォォォォォォ!!!!!
やはり結果は変わらなかった。
[木。]も[布。]も見れば分かるんだよ!!
俺が知りたいのはその木がなんて名前なのかとかその布の性質はなんなのかとかそういうのを知りたいんだよ!
レベル1ってここまで酷いのかよ…。
【神眼】って大層な名前なのに木ってお前…布ってお前…。
あまりの酷さに失望する俺。
だが!俺は【神眼】さんのポテンシャルを信じてる!
というか厳選したスキルが死にスキルだったとかそんな未来絶対に受け入れたくない!
俺はスキル熟練度を上げる為、地獄の鑑定特訓を始めるんだ!
おらぁ!鑑定!鑑定!鑑定!鑑定!鑑定!
[布。][布。][布。][布。][布。]
まだまだ!鑑定!鑑定!鑑定!鑑定!鑑定!
[布。][布。][布。][布。][布。]
負けるかー!鑑定!鑑定!鑑定!鑑定!鑑定!
一心不乱に鑑定を続ける。そして努力が報われる時はやってきた。
[布。][布。][布。][布。][質の良い布。]
情報解禁きたぁぁぁぁぁ!!!
ついに[質の良い]って情報が追加されたぞ!
俺はステータスを急いで開き、【神眼】の内容を詳しく確認する為【神眼】の詳細を確認する。
【神眼】
統合スキル一覧
物質鑑定 レベル2/10
植物鑑定 レベル1/10
生物鑑定 レベル1/10
装備鑑定 レベル1/10
【神眼】の中の統合スキル一覧を覗くとそこには他のスキルよりレベルが1上がった物質鑑定があることがわかった。
よし、目論見通り同じスキルを使いまくることでスキルレベルは上がっていくみたいだな!
右の数値を見る限りスキルレベルの上限は10みたいだしまだまだ鑑定の伸びしろはありそうで安心する。
よかった!鑑定スキルは死にスキルなんかじゃなかったんだ!!
[使えば使うほど強くなる]
そう分かったならもうやることは決まっている。
俺は気が遠くなるであろう覚悟を決めた。
これより第2回鑑定特訓を開始する!
いくぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!
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「だぁー…だぁー…」
鑑定特訓は中々の地獄であった。
何度も何度も同じ情報ばっかりが頭の中で渦巻くこの感覚はかなりキツイものでもはや洗脳と言っても過言ではないレベルで神経を削りとられたと思う。
しかも恐ろしいことに天井は物質鑑定で情報量が変わることはなかったのだ。
天井は木で出来ているため植物鑑定の領分だった。
木と布、2つを並行して対応スキルを上げていくのは本当に地獄だったのだ。
しかし、その地獄を乗り越えたおかげで物質鑑定と植物鑑定はレベル5となった。
その結果、わかった情報はこうである。
【リンドブルムの木】
[緑園国グリムシードを原産地とする丈夫な木。この木を原料に作られた紙は貴族間で愛用され、高級品の一つとして有名である。雨などの天候にも強く、また木材となっても丈夫さは健在のためリンドブルムの木を使った家はかなりの人気を誇る。]
【ラムシールの絹布】
[バナス砂漠北東に位置する砂国ラムシールの特産品。デッドリーモスの幼虫から編んだ絹布は暑さを大幅に遮断し風通しもよく非常に人気が高い。家族や大商人御用達の呉服店にもこの絹布を使ったものも多く高級品としても名が高い。]
レベル1とは比べるまでもないほどの情報量だ。
それにしても流石わざわざ選んだ家柄である。
赤ん坊のベッドにこんな高級品を使い、家はリンドブルムの木とやらで出来ているときた!
お金がなければここまでのことはできまい!
というかミューラのような使用人を雇えている時点で気付くべきだったか…。
だがあの時は新世界に夢中だったのだ。仕方ないと言ったら仕方ない。うん、仕方ないのだ。
さて、スキルの上げ方も分かったわけだし他の鑑定も上げてしまいたいわけだが残念ながら周りに対象となる存在がないのだから仕方ない…。
たしか【空間把握】の中にもスキルレベルを上げておけそうなスキルがあったはずだ。
よし、じゃあ次は…あー…でも…これは眠い………。
抗えないほどの眠気が俺を襲う。
どうやら鑑定スキルのレベル上げに夢中で気付かなかったが俺の体はかなり疲れていたようだ。
起きたら次は【空間把握】を上げていこう。
俺はそう予定を立てながら再び眠りに落ちるのだった。




