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第8話 異世界転生すらできない!?

「ゼェ…ゼェ…」


「ハァ…ハァ…」


泣かせる決意をした後も俺達の口論は続いていた。

言葉の殴り合いのしすぎで息まであがっている。

深呼吸をして息を整える。なんて不毛なんだ…。

このまま言い合いを続けてもエルフィーナが反省するとは思えない。

だから俺はここで切札を使うことにした。


「……ふぅ…。お前が反省してないことはよくわかった…。」


「なによ!怒らないって言ったじゃない!この嘘つきー!陰険!おたんこなす!バーカ!バーカ!」


……我慢だ…。溜飲を下げ怒りを堪える。

これで決着だ!


「それだけ罵倒できるならもう遠慮はいらないな!

もう許さねえ!桁違いの本気見せてやる!」


目を瞑り確実にその未来を手繰り寄せられるようイメージを固める。

俺が手繰り寄せた未来。

それは彼女の計画を台無しにする最高の切札。


ゴーン ゴーン ゴーン


この神界に設置されていた荘厳な鐘がまるで()()な者が来ることを告げるように響き渡る。


「っ!?なんで鐘が!?あんた…まさか!!」


ふふふ、後悔してももう遅い!

彼女の慌てぶりが未来の手繰り寄せに成功したことを実感させる。

しっかり反省してもらおうか!

俺を怒らせるということがどういうことか教えてやる!

鐘の音が徐々に小さくなっていく。

そして辺り一面を眩い光が包み込んだ。

俺が家で見た光よりも一際強い光。

光が収まったあと鐘の下には何者かが立っていた。

俺が切った切札。それは…。


「ぐぬぬ…!まさかこの儂が召喚魔法を誤発動させてしまうとは…。変に発動したせいで儂の方がどこかに飛ばされてしまったわい!ここはどこなのかのう?」


「……あぁああ…そ、創造神…様……。」


「むぅ?おお、エルフィーナか。久しぶりじゃのう。エルフィーナがここにおるということはここはエルフィーナの神界ということかの。ん?そこにおる少年は誰じゃ?」


鐘の下には髭を蓄えたまるで仙人のような爺さんが立っていた。

そしてエルフィーナの言葉から分かるようにこの爺さんは創造神様である。

そう!俺の手繰り寄せ未来とは創造神様に会いたいという未来だ!


「お初にお目にかかります。私、柊智哉と申します。実はそちらにいます()()様に召喚されまして…。これから()()様の管理するという異世界へ()()する者でございます。」


わざとらしく女神と転生を強調して話す俺。

ふははは!お仕置きの時間だ!


「はて?召喚?儂ら神同士の呼び出し使うことはあるが下界の人間を召喚…?」


「……あぅ…。」


当然疑問に思う創造神様。

そして顔が真っ青なエルフィーナ。

その反応にしてやったりとニヤつく俺。


「………ふむ。なにやら事情がありそうじゃな。どうやら儂の孫娘が迷惑をかけたみたいじゃな…。少年よ、なにがあったか話してはくれんかのう?」


孫娘!?

エルフィーナって創造神様の孫娘だったのか…。

え?てことはエルフィーナも結構な神様ってことか?

急に飛び出した衝撃情報に面食らう俺。

だが目的を忘れてはいけない。お仕置きしなければ!

青い顔をするエルフィーナを尻目に俺はここに至る顛末を話すのであった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「つまりエルフィーナがしでかしたミスを隠すために君は何度も死にかけ挙句召喚までされてここにきたと?」


「はい、その理解で間違っていません。」


創造神様の言葉に頷く俺。

俺の行く異世界でエルフィーナがしでかしたこと、エルフィーナが下界に干渉してきたこと、俺はエルフィーナが隠していたことも全てを話した。


「……はぁ…。エルフィーナよ、この少年が語ったことに嘘偽りはないのじゃな?」


「はい…。おじいさま…。」


創造神様の孫娘とバレてしまった為かおじいさまと呼ぶエルフィーナ。

さっきまでの態度はどこえやら既に彼女は借りてきた猫みたいである。


「まずはお前さんに謝罪しなければならないのう…。この度は儂の孫娘が大きな迷惑かけた。本当にすまなかったのう。エルフィーナにはキツイ罰を与えるゆえどうか許してはくれないかの…。これ!エルフィーナも頭を下げんか!」


「は、はい!すみませんでした!」


俺に頭を下げる創造神様とエルフィーナ。

創造神様なんて偉大な方に頭を下げさせるなんてなんとなく申し訳ない気持ちになる…。


「あ、いや!異世界に行きたかったってのは事実なので頭をあげてください!存在が無かったことになるっていうのも俺にとっては転生になるってことくらいしかデメリットはないので!」


そうなのだ。

俺は反省してないエルフィーナを反省させたかったというだけで異世界に行くことはむしろ俺が望んでいることなのだ。

存在が消えたことになるというのも確かに少し寂しい気持ちにはなるが行方不明で騒ぎになるというよりかはよっぽどマシで強いて言えば転生しかできないというくらいしか気になることはない。


「ありがとうの。そして本当にすまんかった。それにしてもお主の運命力は本当に凄まじいものじゃのう。バケモノじみておる。お主が悪に染まるような者でなくて本当に良かった。」


褒められているのか貶されているのか分からないが創造神様からみても俺の運命力は桁違いらしい。


「創造神様から見てもやはり桁違いなら思えます?

まぁ、でもこの力のおかげで異世界に行けるので私としてはラッキーくらいのものですけどね。」


「ふぉふぉふぉ!それだけの運命力を持っていながらラッキー程度としか思わんか!大した少年じゃのう!それと儂の名前はハグルウェットじゃ。創造神様などと仰々しく呼ばなくてもよい。」


創造神様はそう言って豪快に笑う。

話が分かりそうな方でよかった…。

今更ながら創造神様という存在と話してることに驚きを感じる。


「そうですか?ではお言葉に甘えてハグルウェットさんと呼ばせてもらいますね。」


仰々しくとは言うが偉大な方であることに違いはない。様とはいかなくとも敬称くらいはつけさせてもはおう。


「うむ、それでよい。して、お主の今後についてじゃが…。」


ハグルウェットが本題を切り出す。

よっしゃ!ついにきた!念願の異世界だ!

だが、ハグルウェットが語った一言は俺とエルフィーナを混乱させた。


「お主の今後についてじゃが…。残念ながら今のままでは孫娘の世界に送ることはできん。そして元の世界に戻してやることもできぬ。」


………え?イセカイニイケナイ?モトノセカイニモカエレナイ?


「ちょ、え?ま、待ってくださいよ!?それなら俺は一体どうなるんですか!?このまま消えてなくなれってことですか!?ちょっと待ってくださいよ!なんで!?異世界はどうなるんです!?」


「おじいさま!?私の世界がそれだと消えちゃうんだけど!?」


こんな反応になるのは当然だろう。

俺が行かなきゃエルフィーナの世界は崩壊して他世界に影響を出してしまうし、俺だって異世界に行けないのなら居場所がなくなってしまう。

冷静さを失い掴みかからん勢いで混乱する俺。

しかし、これは俺の早とちりだと言うことを次の一言で知った。


「二人とも落ち着けい!エルフィーナの世界はちゃんと儂が対処するから安心なさい。それとお主をエルフィーナの世界なら送れないと言ったのにはちゃんと理由がある。そこも解決して異世界転生とはなるが絶対にちゃんと送るゆえ安心するんじゃ。」


ハグルウェットの絶対という言葉に多少落ち着く。


「お主の運命力は本当に桁違いじゃ。エルフィーナは焦っていたのかそのままのお主を送ろうと考えていたようじゃが、お主は運命力のことを既に知ってしまった。そんなお主を崩れたバランスの世界に送ればある意味バランスが更に崩れて大変なことになってしまうじゃろう。」


ハグルウェットの言うことはもっともだった。

それは例えるなら氷を正常な状態である水に戻そうと太陽を加えたら水を超えて水蒸気になってしまったみたいなものだ。


「じゃ、じゃあ俺はどうやって異世界に行くんです?」


「おじいさまが約束してくれるなら…。おじいさま絶対助けてよ…?」


俺は不安に思いながらもハグルウェットの提案を待つ。まさか運命力のおかげで異世界に行ける権利を得たのに運命力のせいで異世界に行けないとは…。


「うむ、任せておきなさい。まず、もうするのかじゃがお主は儂の管理する世界に転生させることにするのじゃ。」


「え、でもそれじゃあ何も変わらないんじゃ…。」


ハグルウェットの言った言葉をそのまま考えると俺が行く異世界がエルフィーナの世界じゃなくなったというところしか変更点がない。

俺の不安をよそにハグルウェットは話を続ける。


「まぁ最後まで話を聞くのじゃ。お主の転生する世界が儂の管理する世界となればお主の魂を送る際にその運命力をスキルに変えることでスキルを沢山もつが運命力は並といった魂に変えることができる。普通の魂なら送るだけでよいのじゃがお主は召喚で呼び出された為肉体を持つ魂だけの存在というイレギュラーな者になっておるのじゃ…。ゆえに魂を送る前に細工を施す必要があるということじゃな。もちろん儂が力を使って細工できるのは儂の管理する世界に送る魂だけじゃ。ゆえに儂の世界に来てもらう必要があったということじゃ。お主はそれでもよいかのう?」


なるほど、恐ろしいほどまでの力技だった。

しかしそれによって異世界に行けるなら願っても無い。

しかも俺の運命力をスキルと交換ということはまさにチート転生というわけだ!

俺はハグルウェットの力技に感謝し、了承の意を示した。


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