8話 道中③到着
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―――3日目の朝。
俺は、早朝3時くらいに起こされて火の番をしながら朝日を迎えた。
今は、時間に余裕もあるので朝食の用意をしながら過ごしている。
すでに焚き火の上ではコーンスープが煮立っている。
パンはコッペパンを作り、あんこ(つぶあん)とバター、イチゴジャム、ピーナッツバターの3種類を作る。
これだけでは甘すぎるしボリューム不足なので、バンズパンも作りハンバーガーも作る。
ハンバーグはちょい厚めで、レタスとトマトのスライス、ピクルスもちゃんと入れる。
コーンスープをいったん焚き火から下ろし、吹かし機器を出してジャガイモを吹かす。吹かした芋を短冊状に切る。その間に油の入った鍋を温める。温まった鍋に切った芋を投入し揚げていく。
揚がった芋に塩を振りかければ…フライドポテトの出来上がり…だ。
ヤバイ…朝から凝ってしまった。
家事スキルが生まれてからどうも家事仕事をするのが楽しく感じている…。
地球にいたころは知識は当っても料理なんてしたことなかったもんなぁ…。
でも、家事スキルができてから料理を考えるだけで作り方を把握し、作るのも手際よくできるのだ。
まあ、生きていく中で必要なスキルだし良いんだけど、俺は『何かを作る』と言うのが好きなのかも…と思うようになっていた。
「陽も良い感じに上ってきたし、そろそろ起こすか…」
テントに入り4人を起こす。
以外にもエリーがすんなり起きたのは驚いた。
「ついでだし…清潔浄化」
テント全体が綺麗になる。それは俺も含めた4人もだった。
野宿と言うことはどうしても汚いままだもんな。まだ臭ってないとはいえ、汗のベトベト感や土埃など取りきれるものじゃない。清潔浄化はマジに使えるスキルだ。
「身体の汚れがなくなった…」
「それに、なんか良い匂いがするよ」
「便利なスキルを持っているな、アキ」
「本当は昨日寝る前にやればよかったんだけど…。まあ、朝食ができているから食べよう」
「…ごはん」
「今日は何が食えるんだろう?」
「楽しみ~」
「アタイも楽しみだ」
テントを出ると、俺が作った料理がすでにスタンバっていたので、4人のテンションも一気に上がった。
…キリンたちはすでに自分たちの分を確保して食べている。
俺は苦笑しながらも、定位置に座って4人を見た。
「いただきます」
「「「「いただきます!」」」」
恒例の挨拶とともに、4人は勢いよく食べ始める。
朝から騒がしいのが心地よい。
俺は、コーンスープを一口飲む。うん。美味いな。コーンスープに舌鼓をうったところで4にを見ると、子供たちはコッペパンを食べて、あまりの美味しさに呆けていた。まあ幸せそうでなり寄りだ。
問題は、エリーだった。鬼のような形相でポテトをガツガツと勢いよく口に投入していた。
あの勢いは、他の人の分にまで及びそうな感じだった。
「え、エリー…俺のポテト、食べる?」
「食う」
「……」
二言だけ言うと、俺のポテトをどんどん口に入れていく。
何がそこまでエリーを駆り立てるのか?ただの揚げ芋に塩振っただけのものだぞ?
俺は、ジャムパンにガブリつきながら嘆息した。
「このホクホクの揚げたの美味しい」
「うん。この肉っぽいのをパンで挟んだのも美味い」
「…甘い」
「…くぅ。ポテトがもう無い……」
「え、エリー。ポテトはまた作るからほかの料理も食べてよ」
「…約束だぞ。じゃあ、このパンを食べるか…ハム…ング、あ、甘いぞこのパン…」
「それはイチゴジャム味だね。こっちがあんバタ味でそっちがピーナツバター味だよ」
「うむ…確かに甘さは違うがどれも甘いパンだな。このパンは何て言うんだ?」
「ハンバーガーって言って、肉を細かくにしてこねると粘りが出るからそこに卵と玉ねぎの微塵切りとパン粉を入れたらミルクも入れてさらにこねる。で、30分ほど置いておいたら掌に乗る程度に千切って、左右の掌で投げては受けを20回ほど繰り返して空気を含ませたら、フライパンで焼くんだ。焼いただけのモノはハンバーグって言うんだけど、これをパンで挟むとハンバーガーって呼び名になるんだ」
「ん…噛むほどにジュワッと肉汁が出て野菜との相性もバッチリだ」
今回のハンバーグのパテは通常よりも少し厚く作ってある。とは言っても、ハンバーグよりは薄いのだが…パンにはさむことを意識しつつ肉の味も堪能できる厚みにしてみたのだ。
「今日の朝食は気に入ってもらえたみたいだな」
「うん。スープも美味しかったよ」
「ハンバーガーをもっと食べたかったなぁ」
「甘いパン…」
「ポテト!ポテトをもっとアタイに」
「分かったから、町に着いたらまた作るよ」
まあ、今度は総合生産で作れちゃうから楽なんだけどね…。
俺たちは、それぞれ片付けをしていく。
俺はテントやトイレ、焚き火の後始末をする。
4人は鍋や容器などを洗いに川に行ったわけだ。
15分もすると洗い物を終えて4人が帰ってきた。
俺は鍋らを受け取り、アイテムボックスに仕舞う。
「よし。そろそろ町に行こう」
「やっと帰れる」
「母ちゃん、父ちゃん心配してるかなー?」
「そりゃしているさ。子供救出のクエストが出たってことは親御さんたちが頼まないと作られないんだからな」
「そっかー…。そうだよな」
「よし。早く帰ろう」
「……」
「ハナコには俺がいるよ…」
「…うん」
元気一杯に歩き出すジウとマーク。2人を羨ましそうに見ているハナコ。寂しそうなハナコの横顔を見て俺はハナコの手をギュッと握った。
すると、ハナコの顔がパッと明るくなった。俺はそんなハナコを見て少し安心できた。
正直、ここに来る前に俺も大事な家族を失い、俺自身も死んだ。そういった意味ではハナコの気持ちは分かると言えよう。
しかし、俺はそのとき17歳だ。ハナコまだ一桁台の年齢なのだ。計り知れないほどの心の傷を負っているだろう。
その全てを『分かってる』の言葉で語るのは間違っている。だから俺は、自分のできる範囲でやれることをやってあげたい。そして、できるだけハナコの側にいたいと思う。
町までの道のりの間に俺は町…と言うかこのリグエスタ王国について聞いてみた。
町の内情、役割、作物や流通、統治…この世界がどのように成り立ち、なぜ戦いを起こすのか?
あまり細かいことを聞き過ぎると俺がこの世界の住人じゃないことがバレるので大まかに聞いた。
それにしても、この世界…と言うか特にこのハルデノン大陸は国家間で戦争が多い。
小規模のものがほとんどなのだが、年間に5~6回は小競り合いをしていると言うことだ。
驚いたのは、この世界は12ヶ月で1年と言うサイクルで回っていること、1ヶ月が40日で10日サイクルで1週間と言う扱いになっている。つまり、1年が480日と言うことである。
1週間を表す俺の世界での曜日様なのもあり、頭から『光の日』、『火の日』、『水の日』、『風の日』、『土の日』、『木の日』、『鋼の日』、『雷の日』、『氷の日』、『闇の日』の10日間で1週間となる。1年間を表す12ヶ月は、『星の月』、『光の月』、『火の月』、『水の月』、『風の月』、『土の月』、『木の月』、『鋼の月』、『雷の月』、『氷の月』、『闇の月』、『天の月』である。
しかも、この世界にも季節が存在する。『星の月』、『光の月』、『火の月』までが『春』、『水の月』、『風の月』、『土の月』が『夏』、『木の月』、『鋼の月』、『雷の月』が『秋』、『氷の月』、『闇の月』、『天の月』が『冬』ということである。
で、今は『星の月』の2週目の『火の日』である。あと、深くは聞けなかったが4週目は必ず太陽が2つ昇り、『赤い月』と『青い月』が交互に昇ると言うことだった。これはこの世界で生まれたときからそう言う風になっているらしい。
さらに時間だが、驚いたことに1日は24時間で、1時間は60分だと言うことだ。なぜ時間だけがそうなのかはエリーも知らないらしい。
そんな会話をしながら1時間ごとに休憩を挟みながら歩くこと4時間。
ついに町の外壁が見えた。結構大きい壁で、壁の向こうに屋根が見えないと言うことは…壁が思った以上に大きいか、もしくはほとんどの家が1階建てだと言うことだ。
「見えた!」
「俺たちの町だ!」
駆け出すジウとマーク。
近づくにつれ、外壁に門が見える。その門の両サイドには洋風の甲冑を付けた門番が立っていた。
「そう言えば、アキは旅人だからリグエスタ王国の入国者カードは無いんだよな?冒険者カードか商業者カードもないか?」
「うん。どれも持ってないな…」
「そうなると、入国料を払う必要がある。審査自体はそれほど大げさじゃないから心配はないけどな」
「お金か…。金塊はあるんだけど…」
「では、それをあとで換金してお金を返してくれればいい。ほら、入国料分のお金だ」
「ありがとう、エリー」
そう言うと、エリーが渡してくれたのは金貨1枚だった。
「この国の金貨の価値ってどれくらいなんだ?」
「そうだな…。慎ましく暮らせば、金貨1枚で1ヶ月は暮らせるくらいだな」
「…マジ?」
「マジって言うのが何か分からないが、本当のことだぞ。で、年間の入場料に金貨1枚いるってわけだ」
「な、なるほど…」
つまり、金貨1枚で俺の世界で10万円くらいと言うことだろう。
他の硬貨のことは金塊を換金して知ればいいだろう。
「アキ、町に入れたら冒険者ギルドで登録したほうが良いぞ」
「どうして?」
「冒険者カードは世界共通の入国証の役割も果たしてくれるんだ。まあ、こっちも年間使用料で金貨1枚を払う必要があるが、持っていればどこの国や町にも審査なくは入れるから使い勝手は良いぞ」
「そうだね。町に入ったら作るよ」
そしてついに、俺たちはルザーの町に着いた。
国造りのために、色々知っておきたいことがあるが…今は子供たちや捕まえた盗賊の処理が先だ。
逸る気持ちを抑え、俺は門番へと声をかけるのだった。