4話 盗賊対決
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森の中を進みながら、千里眼で盗賊の動きを把握する。
今だに盗賊たちの動く気配は無い。
「それで、どうするつもりじゃ?」
「空間魔法の『空間湾曲』を使って、奴らを森から出すんだよ。もちろん、罠を仕掛けた場所にね…」
俺が向かった先は森を抜けた平地だ。
そこに空間湾曲の方がを設置し、その足元に落とし穴を作る。
単純だが、天地創造で作った落とし穴並ばれる心配はない。
他にも色々とあるが、今はこの2つにの仕掛けだけ報告しておこう。
「問題は魔法使いとリーダーの実力だな…」
落とし穴に引っかかってくれるなら問題ない。
しかし、俺が考えているような実力があったら…。
その考えがあるからこそ、俺は2重3重の策を考えることにしたのだ。
「よし!後は盗賊を呼び込むだけだ…」
俺は慎重に盗賊のいる小屋へと向かう。
俺の存在がバレるわけにはいかないので、慎重の上にも慎重を…と歩を進める。
「見えてきたな…」
俺は一定の距離を保つと、空間湾曲の魔法を小屋の扉の出口部分に設置する。
扉を開けて出てくると、罠のある場所に出ると言う仕掛けを施したのだ。
俺はどうするかって?もちろん奴らが空間を渡った瞬間に転移で移動する算段だ。
「後は勇気を振り絞るだけだよな…」
正直、勝率は限りなく100%であったが、不測の事態と言うのが起こる可能性は常に考えなくてはいけない。
だからこそ、勇気を出す必要があるのだ。100%の勝利を掴むために…。
「よし!やるか」
気合を入れ、タカアキは小屋の300メートルほどまで近づく。
多分、もうそろそろ気配に気づかれる距離だろう。
俺は咽喉がゴクリと鳴るのを感じていた。
「…そんじゃ、派手に行きますか…」
覚悟を決め、俺は息を勢いよく吸い込む。
「出てこい!盗賊ども!!」
俺は思いっきり叫んだ。
その瞬間。思いっきり扉が開いた。
そして全員が飛び出してきて…消えた。
空間湾曲で作った場所を通ったからだ。
俺は魔法を解除して、転移を使う。
なんで解除したかって?戻ってこられたら困るからだ。
「な、何だァ?どこだココは?」
「俺たち、さっきまでアジトいたはずだよな?」
「クソッ!どうなってやがる?」
「落ち着け!これは魔法の影響だろう…。エブライ」
「…空間を操る魔法と言うのがあると聞いたことがある。多分、これがそうだろう…」
騒ぐ手下たちを制し、バリウスはエブライに尋ねる。
エブライの言葉に納得したところで、目の前に少年が現れた。
タカアキである。
「申し訳ないんだけど…この森から出ていってもらうよ、盗賊の皆さん」
「何だ?ガキが偉そうに!」
「なめてんじゃねーぞ!」
「じゃあ、どっちが強いか試してみる?」
「フ…面白れぇ。全員でリンチにしてやれ!」
「「オーッ!」」
一斉に俺に向かってくる盗賊たち。
そして…地面が崩れ落とし穴に落ちていく。
だが…やっぱりと言うか、魔法使いのエブライとリーダーのバリウスは咄嗟に避けていた。
「クソッ。なんて巧妙な落とし穴だ…」
「やられましたね…」
「いや…これからだよ。――解除!」
俺が『解除』を口にした瞬間、穴のある真上の空間から黄金の球が落ちてきて穴を塞いだ。
これが俺のもう1つの策だ。
これで、穴に落ちた奴等は出てこれない。
「な、何だ?これはまさか…金か?」
「そうだよ。それは金の塊さ。これで、手下はもう出てこれない。後はアンタたち2人だけさ」
「フン!我ら2人で十分だ。今度はこちらから攻撃させてもらう…風精刃!」
「――ぐっ。効かないねぇ…」
俺が構えた『黒鋼の盾』で魔法を受けきる。
さすがダイヤモンドと同等の強度である傷1つとしてついていない。
とは言っても衝撃はそれなりに感じたのだが…。
「悪いけど、地べたに這いつくばってもらうよ…天地創造!」
大地が突起となって空中にいるエブライを撃つ。
エブライは衝撃でそのまま地面に落ちる。
「絡め取れ!」
突起になった地面がエブライに向かってぶつかり、エブリは土に埋まる形になった。
「総合生産…金塊」
イメージは大岩の金塊。
それが、エブライの上に落ちたのだった。
これで、残るは後1人。
「やるじゃねぇか…。何モンだ小僧…」
「盗賊に名乗る名前は無いですよ。…次元斬!」
抜き身の『黒鋼の剣』が青白い光を纏う。
俺は、真っ向勝負を挑んだ。
「実力の差が分からないようだな…。良いだろう。かかってこい!」
「…転移」
「――き、消えっ」
「―――っ!」
「チィィッ!」
寸でのところで攻撃を避けるバリウス。
俺は、バリウスが余裕をかましているのを見越して、転移で背後に瞬間移動して剣を振るったのだ。
その攻撃をバリウスはギリギリのところで躱したのだ。
「かかった!」
「――なにっ!?」
全てはバリウス誘い込むための攻撃だった。
バリウスが躱した先には『もう1つの落とし穴』を作っておいたのだ。
これにはさすがのバリウスも反応できず落とし穴へと落ちていった。
「解除…」
俺の言葉で、落とし穴のある上空から金の球が落ちて穴を塞いだのだった。
「一先ずは、盗賊は捕まえた。出られないとは思うけど、千里眼…」
穴の中を千里眼で覗く。
…どうやら、全員気絶しているようだった。
「天地創造…」
千里眼で様子を見ながら天地創造で土を操り、盗賊たちを拘束したのだった。
「これで良い。さて…と、転移」
俺は転移で盗賊たちのアジトに跳んだ。
「ご苦労じゃったのう…」
「みんなもありがとう」
「なに、たいしたことはないさ」
「小屋の中の人間は全員無事だよ」
俺は盗賊との戦いに際し、キリンたちに小屋の警護を頼んだのだ。
もしもの時のための保険だったわけだ。
「子供たちを解放しないと…」
小屋の中に入ると、鉄格子の中の子供たちが体を寄せ合っていた。
誰1人顔を上げようとはせず、身体を震わせていた。
どんな扱いを受けていたか一目瞭然だ。
「もう、大丈夫だよ。みんな、ここから出よう」
そう言って、俺は鉄格子を開けたのだった。
鍵はどうしたかって?
次元斬の魔法のかかった剣で鉄格子を切り落としたのだ。
「僕たち助かったの?」
「出られるの?」
「お前は誰だ?」
「俺はタカアキ。さあ、ここから出よう」
俺が差し出した手を取り、3人は鉄格子から出た。
話しを聞くと、2人はここから近い町から攫われたらしい。
名前は、ジウとマークと言うらしい。
そしてもう1人は…。
「俺は…捨て子だから…」
「名前は?」
「…ない」
「そっか…」
どう見ても犬耳と尻尾だよな。
つまり、獣人というヤツだな。
しかも、微かな胸の膨らみから女の子であることが分かる。
「名前が無いと不便だよな…。うーん…じゃあ、ハナコでどうだ?」
俺は窓の外に見える花を見てそう名付けた。
「ハナコ…ハナコ、ハナコ……」
名前を連呼するハナコ。
どうやら気に入ってくれたみたいだ。
顔に笑みが浮かんでいたから…。
「名前も決まったし、町に行く前に…清潔浄化!」
俺がそう言うと、小屋全体が綺麗になり、同時に3人の汚れも綺麗になり、新品同様になる。
ついでに体の汚れもなくなり、臭いもなくなった。。
「それじゃあ、町に行こうか…」
途中、盗賊たちを回収して俺と子供3人は町に向かって歩き出した。(精霊獣たちは見えていないので、あえてカウントしなかった。)