2話 闇の精霊獣・ケルベロス
「掘ってみるか…天地創造」
早速、麒麟の能力で地面を掘り下げていく。
穴はどんどん深くなっていき、闇が広がっていく。
この間も『千里眼』が発動しているので、どんどん穴は深くなっていく。
この浮島の地面はどれだけ厚みがあるのか?
「もう少しで、『何か』がある場所まで掘れるぞ…」
「一体、何が埋まっておるんじゃ?」
「もう少しでわかる…はず」
穴はどんどん深くなり、ついに『何か』がいる場所にたどり着く。
いったい、何が埋まっていたのか?
「闇の中から『何か』が上昇してくる…」
それは明らかに『生き物』の反応だった。
「…この反応はもしや…」
「麒麟、何か知っているのか?」
「うむ…。まさか、ここにいたとはのう。ワシの仲間…精霊王の1種である…」
「「「―――ウオオオォォォンン!」」」
麒麟が正体を口にしようとした瞬間、獣雄叫びが響き渡る。
それも、重音で聞こえてきたのだ。しかも、3重音だ。
「やはりお主だったか…闇の精霊王…ケルベロス」
穴から出てきたのは3つ頭首の犬…地球では『地獄の番犬』と名高いあの『ケルベロス』だった。
「キリンの爺さんじゃないか?どの位ふりか…」
「久方ぶりに会ったなキリンの」
「ぎゃはは…老けたな、キリンの爺」
3者3様の口調が性格を表している。
最初に口にしたのが真ん中の奴で、次が向かって右側、最後のが左の奴である。
「相変わらず騒がしいのう、闇の…」
「それが我だからな…」
「それにしても…なんで地中にいたのじゃ?」
「居心地が良くて寝ていたんだよなー…ぎゃははは」
「それで、この300年ほど見かけなかったわけじゃな」
人間からすれば気の長い話である。
しかし、精霊にとっては300年というのはそうでもないらしい。
「しかし、我を眠りから覚ましたのはそこの小僧か…?」
「そうじゃ。ワシの力でお主を見つけてな…」
「タカアキと言います。闇の精霊王・ケルベロス」
頭を下げて敬意を示す。
精霊王には思考が読まれるようなので、失礼が無いようにと思ったからだ。
「精霊王と言うのは好かんな…。王と言うほど精霊たちを束ねたこともないしな」
「では…闇の精霊獣・ケルベロスとお呼びしましょうか?」
「精霊獣…悪くないな、ぎゃははは」
「では、その様に…」
麒麟と違い、ケルベロスから感じられる重い空気。
それは殺気とか嫌悪感などではなく『威圧』の部類…これって、ワン〇ースで言うところ『覇気』というヤツだろうか?
自然と遜ってしまう。そこに嘘はないし、敬う気持ちもあるが…どうも俺らしくないよな。
「しかし…キリンの爺さんが人間の子供と契約…どういった心境の変化があった?」
「この地に…『理想郷』を作ってもらおうと思ってのう」
「ここに…か?爺さん、人間を嫌っていたと思ったんだが…?」
「…そうじゃな。確かに好きか嫌いかで言えば今も好きではない。じゃからこそ、ワシはこの地に『理想となる国』を造りたいと思ったのじゃ。『誰もが笑顔で暮らせる場所』をな」
「ぎゃははは…みんなが笑顔になる場所ねぇ…悪くないな、ぎゃははは」
「実現できればな。だが、簡単ではあるまい」
「確かに、そこの子供は『面白い生まれの人間』ではあるな。我の力も貸してやっても良いが『条件』がある」
「条件ですか?」
俺の言葉に、ケルベロスはニヤリと笑みを浮かべる。
うおっ。鋭い牙が見えてちょっと怖くなる。
「地上が騒がしくなれば我の安眠が妨げられる。だから、我がゆっくり眠れる場所を地下に作ってくれ。それが我が望みだ」
「お約束しましょう。必ず、お造りします」
「では、契約を結ぼう…」
「くっ…背中が……」
背中が熱くなる。どうやら、ケルベロスは背中に精霊印を刻んだようだ。
これって、キリンへの対抗意識だろうか?
「これで、契約が結ばれた。我の力…ありがたく使うがよい」
「ありがとうございます」
「早速、ステータスを確認してみろよ、ぎゃははは」
「そうします。ステータスオープン…」
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―タカアキ フルムラ―
称号:光と闇の創造主
LV.1
VP:42/42
SP:∞(無限)
AP:21
DP:26
QP:15
RP:19
LP:199
固有能力
天地創造 空間魔法LV.2 転移LV.2 空間無限 千里眼LV.2
清潔浄化 照明魔法 総合生産 全世界言語スキル 魔洞窟創造
素材錬金魔法LV.2 素材合成錬金LV.2 素材ドロップ率∞(無限)
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「ユニークスキルが凄いことになってる…」
数もそうだが、スキルにLVがあることにも驚く。
それに、LVは1のままなのに基本数値が上がっている。
俺の中にあるゲームの智識など皆無とばかりに、常識外れの現象を目の当たりにして、俺は深く考えるのを止めた。
それよりも今はユニークスキルの確認が急務だ。
空間魔法LV.2…空間を削り取る魔法や、別空間に閉じ込める魔法や別空間を作り出す魔法がある。
転移LV.2…一度いった場所をイメージするだけで自分だけでなく3人まで瞬間移動できる能力。
千里眼LV.2…すべてを見通す能力。直進にして6000キロまでの全てを見通す。
清潔浄化…一定の範囲の全ての汚れを綺麗にしてくれる。(物・人も含むすべてである。)
照明魔法…ある一定の範囲を明るく照らすことと、使う者の手元を照らすのを選べる。(SPの消費によって持続時間を調整できる。)
総合生産…知識ある物をSPを消費して作り出すことができる。今作れるのは素材のみである。
全世界言語スキル…全世界で使われている言語理解て話すことができる。
魔洞窟創造…魔物が徘徊するダンジョンを作成する能力。
素材錬金魔法LV.2…素材を組み合わせて上位素材に作り替える魔法。LV.10までの素材を錬金できる。
素材合成錬金LV.2…素材を2重または3重合成して『製品』を作り出す。LV.20までの素材を合成できる。
素材ドロップ率∞(無限)…魔物を倒したとき、素材が必ずドロップする。
「ダンジョンは良いとして…やっぱりこの世界に魔物がいるのか…?」
「魔物もこの世界の一部じゃからのう。それに魔物からでしか得られない素材もある…」
「この世は、常に表裏一体なのだよ。我ら精霊のSPが『魔法』を使う1つの方法、もう1つが魔力であるMPを使い『魔法』を使う方法だ。魔物はこの魔力を持って生まれてくるのだ」
「あー…この世界にもやっぱりMPはあるんですね」
つまり、俺は精霊と契約したので『SP』になったと言うわけだ。
となると…。
「もしかして…魔族もいるんじゃないですか?」
「よく分かったのう。確かにこの世界には多くの種族が住んでおる。魔族もその1つじゃ」
「戦争もほとんどが人間と魔族の間で起こることがほとんどだったなぁ、ぎゃははは」
「それは、300年前までのことじゃよ。今では人同士の間で小競り合いをしておるよ」
「人の欲望は尽きぬ…か」
「でも、全員が全員そうじゃありませんよ。一部の権力者や独裁者が自分の利益や自己満足のために起こしているんですから…」
「まあ、そう言うことにしておいてやるよ。それよりも能力はどうだ?気に入ってもらえたか?」
「どれもこれもチート級で驚いています。でも…1つ問題が…」
「どうしたんじゃ?」
「他の精霊と契約するためには地上に下りないといけないと思うんですが…」
そう。色々な能力は得たし、どれもチート級の能力だ。
でも、実際問題として地上に降りるための能力はなかったのだ。
これじゃあ、理想郷がどうの言う以前の問題である。
「それなら大丈夫じゃ。ワシの転移で地上に送ってやるのじゃ」
「面白そうだから、俺らも付き合うぜ。ぎゃははは」
「じゃあ、地上に下りましょう」
闇の召喚獣・ケルベロスと契約を交わし、ついに俺は地上に降りる。
地上ではどんな出会いが待っているのだろうか?
気がつけば、太陽はすでに上がりきっていた。