妖怪神社たる所以
「‥‥‥」
嵐の口から何気なく出たその途方もない数字にさしもの霊夢も絶句するが、嵐はそんな霊夢の様子など意に介さず、更に続ける。
「‥‥ああ、でもそれだけの数の技を出す気力と体力の方が問題か‥‥ぐーたらなあんたじゃねぇ‥‥」
「‥‥うるさいわね‥‥‥というか、そう言う問題なの、それ?」
ぷいっとそっぽを向く霊夢の姿に嵐は苦笑すると、
「‥‥さあね。まあ、それはさておき‥‥もしかしたらこの博麗神社の神を信仰しているのは人間よりも妖怪たちのほうかもしれないわよ」
その言葉に霊夢は鼻を鳴らす。
「妖怪退治を生業としている私がいるのに、何であいつらがこの神社を信仰するのよ」
霊夢のその言葉に嵐は笑いを噛み殺しながらこう言う。
「‥‥『自分や自分の仲間以外の妖怪』は退治してくれという事なんでしょ?それに『大結界』がなければそもそも妖怪達にはもう住む場所が無いし‥‥そう言う意味では幻想郷を支えているこの博麗神社を妖怪が信仰していたとしてもおかしくはないわ」
そんな嵐の解釈に霊夢は深いため息をつくと、思わずぼやく。
「‥‥その割にはあいつら、宴会ばかりで賽銭落としていかないんだけど?」
「信仰心の無い妖怪ばっかりね‥‥早苗が嘆くわけだわ~」
そうやって冗談めかす嵐を霊夢は睨み付けると‥‥
「‥うるさいわね。だいたいあいつらが賽銭箱に賽銭を入れて、手を合わせる姿なんて‥」
「‥‥おかしすぎる?」
霊夢の言葉の先を読んでそう言った嵐はふと、想像してみる。紅いリボンを金髪につけている少女妖怪や騒霊楽団の姉妹、春告げ妖精や三月精の妖精トリオ、鈴蘭妖怪に蟲妖怪、雪女などが揃いも揃って礼儀正しくこの神社を参拝し、賽銭を入れる様を。そして‥‥
「はははっ~確かに」
「‥‥‥でしょ‥くくくっ‥‥あはははっ」
どうやら嵐だけではなく、霊夢もそうした光景を想像したらしく、二人して大笑いする。
「‥‥まあ、あたしはお賽銭入れているけどね‥‥外の骨董屋で手に入れる古銭ばかりだけど、これなら幻想郷でも使えるでしょ?」
そうしてひとしきり笑った嵐がふと笑うのを止め、まじめな顔でそう言うと、懐から袋を取り出し霊夢に手渡す。渡された霊夢はその袋の中を覗き込み‥‥そして苦笑する。
「‥‥はいはい、ありがとさん」
そうしてひとしきり盛り上がった二人は、嵐が持ってきた外界の酒で二人だけの酒宴を楽しむ。
「‥‥それでどうなの?あの子‥‥‥早苗だっけ?」
「‥‥今回の事でだいぶ成長したでしょうけど‥‥まだまだね。多分これからも守矢神社の面々はしばらく騒ぎを起こすんじゃないかしら?」
「‥‥まったく、余計な連中を呼び込んだものよね」
酒の注がれたお猪口を片手にそうぶつくさ言う霊夢だが、そこに‥‥
 




