失ったもの、得たもの
「‥‥全く。天狗の奴、いいネタを見つけたみたいだな。これはまた‥‥騒がしくなりそうだ」
そう言ってけらけらと笑う。
一方‥‥
「あんた、いつまでそうしている気?あんたは見事にあたしを負かして異変を解決したんだから、もっとしゃきっとしなさい。そうしないと‥‥退治されたあたしの立場がますます無いじゃない」
そう時雨子が早苗に声をかけ‥‥そして、ぷいっとそっぽを向く。
「時雨子さん‥‥」
そうしてそっぽを向いていた時雨子だが、再び振り返るとわずかに笑みを見せる。
「これからは協力し合うんでしょ?わたし達。だったらあなたもあたしが協力するに足るだけのものを見せなさいよ」
「は‥‥はい!任せてください!」
時雨子の言葉になんとか元気を取り戻し、そう答える早苗、そんな彼女に、にとりが‥‥
「そうそう、何があったか知らないけど元気だしなよ~わたし達も出来る事なら協力するからさ~なんなら守矢神社を空に飛ばしたり、湖に潜れるようにしたりする改造をしてあげてもいいからさ~」
にこやかな顔でとんでもない事を提案するにとりに早苗は顔を引きつらせる。
「そ、そんなことしなくていいです!」
「そう?残念だな~面白そうだよ~信仰を集めるのにも便利そうだし。なにせ幻想郷では巫女は空を飛ぶけど、神社は飛ばないからきっと珍しがられるだろうしね~」
「面白くなくていいです~どうして皆さんそうやってやたらと面白くしようとするんですか~」
頭を抱えてにとりと文に抗議する早苗、それに対し文は‥‥心の底からの笑顔でこう言う。
「どうしてって‥‥そりゃあ傍から見ていると楽しいからですよ~今後のあなたの活躍にも期待していますからね~」
「そっち方面の期待はしなくていいです~」
そう抗議する早苗、しかしそんな抗議などどこ吹く風の文、一方それを尻目ににとりは:
「‥‥雨の神様。あたしはこれで帰るよ」
そう言って時雨子に頭を下げる。
「悪いわね河童。色々世話をかけたわ」
「いえいえ‥そういえば、あの社に供えられているお酒は誰が持ってきたのかな?」
その声を聞きつけた早苗はまたも首をかしげる。
「お酒ですか?‥‥あれは、見た感じ外のお酒のようですね‥でも‥‥わたしじゃないですよ」
「‥‥だったら紫のしわざだな」
「ゆかり?」
萃香の言葉に聞き返す早苗。
「通称スキマ妖怪。外の世界の物を幻想郷に持ち込めるのは『あいつくらい』だからな」
「なるほど~幻想郷にはそんな方もおられるのですね。それにしても、わたし達に何も言わず置いていくなんて‥‥その『ゆかり』さんという方はとても奥ゆかしい方なんですね」
まだ紫と面識が無いらしい早苗のその言葉に萃香と文は‥‥一瞬、呆気に取られ、次にお互いの顔を見ながらささやき合う。
「‥‥‥どう思う?」
「‥‥やっぱりこの巫女は天然なんですよ‥‥」
「‥‥違いない。じゃあ、わたしはこの辺でおさらばと行くか」
そう言うと萃香は再び姿を霧状に変え、どこかへと去っていこうとした‥‥その時、文が萃香を呼び止める。
「あっとと、待ってください。その前に一つ写真を撮らせてくださいよ~」
「なんでだ?」
いぶかしむ萃香に対し、文はさも当然のようにこう言う。
「もちろん、次の新聞に載せるためですよ~さあさあ、お二人もがっちりと握手しちゃってくださいな~」
にこにこの笑顔で写真機を構える文はそう言って早苗と時雨子を促す。




