表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
東方天風譚「裏」風神録編 ~Wind of the guidance and true faith~ 1・21   作者: 新景正虎
第六章 EX・導きの風、吹き抜けしその跡‥‥‥
83/93

永劫の輪廻

「‥‥例え何度でも、いや、何度目だからこそ別れは辛いものなんだ!別れが一度だけなら時間が経つ事で皆、忘れていく。

‥‥けど、それが何度もあるのなら‥‥その度にこんな思いをしなくちゃいけない。それに、そうして別れる度に思う‥‥今度こそ永遠の別れになるんじゃないのかって‥‥そんなのはわたしら以上に生きているお前の方が分かっている!‥‥‥だからお前は‥‥いなくなる時わたし達の記憶から自分の存在を消し、自分がいる時だけ自分の事を認識できるようにしているんじゃないのか!」

 そう叫びながら振り向き、まっすぐ嵐を睨み付ける萃香。それを正面から見据える嵐。しかし、彼女はなにも言わず、その代わりに早苗が嵐に向かって叫ぶ。

「‥‥‥忘れません!わたし‥‥先輩が帰ってくるまで‥‥どんなに辛くても‥‥苦しくても‥‥絶対に先輩の事、忘れませんから!」

 そんな早苗の悲痛な言葉に対し、嵐はゆっくりとかぶりを振る。

「‥‥無駄よ、早苗。同じ言葉をこれまで数限りなく聞いてきたけど‥‥一人たりともその言葉を貫けた奴はいない。霊夢も魔理沙に紫‥‥慧音や永琳でさえ、あたしがここに戻ってくるまで‥‥あるいは再会するまであたしの存在を覚え続ける事はできなかった。

‥‥‥かつて出会った何人もの『あなた』もね」


「‥‥え?」


 その‥‥容易には理解し難い嵐の言葉に早苗は呆然となる。だが‥‥

「‥‥‥そう、あたしにとってあなたとの出会いはあの日、あの場所が初めてじゃない。幾億、幾兆もの輪廻、生まれては滅ぶ宇宙の因果の中、あんたたちとあたしは幾度と無く出会っている‥その出会いには同じようなものもあれば、全く違う出会いもあった、そして‥‥別れも」

 その言葉で早苗は何かを直感的に悟る。だが‥‥‥理解が追いつかない。だが嵐の言葉を聞いて、次第に理解が追い付いて来ると‥‥‥早苗の表情がみるみる青ざめていく。

「‥‥永劫の輪廻。滅び、そして新しく生まれ変わる。それがこの世の摂理。

同じ遺伝子、同じ生まれを経て出会った東風谷早苗だけど、でもやっぱりそれぞれどこかが違う。あたしとの出会いでそうなったのか、そうでないのか‥‥」

「まさか、まさか‥‥先輩はその‥‥わたしの‥『わたし達』との記憶を全て‥‥」

「覚えているわ。忘れると言うのは本来不要、あるいは膨大な情報に対する心の防御反応みたいなものだし。でも、あたしたちにはそんな必要はない。だからその気になればいつでも思い出せる。あなたの事、そして‥‥あなたの『前』に出会った幾人もの『東風谷早苗』の事も‥‥」

 その言葉に早苗は愕然となる。例え自分達が嵐の事を忘れても、自分達の存在がこの世界から消え失せても彼女は自分達の事を未来永劫、覚え続ける‥‥しかし‥‥それは‥‥それは‥‥

「‥‥それって辛くないんですか!苦しくないんですか!わたしは辛いです!先輩に二度と会えなくなったらと思うだけで辛いです!悲しいです!それに‥‥例えまた先輩が『わたし』と会えたとしても、それは先輩のことを覚えていない全くの別の『わたし』かもしれないんですよね!そんなの‥‥‥酷すぎます!」

 そう言いながら早苗は思い出していた、嵐と初めて会った時の事を。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ