社の修復
嵐と時雨子の雷撃で焼かれ、倒れた木に対して萃香と嵐がそれぞれの能力『密と疎を操る程度の能力』と『空気(天地の理)を操る程度の能力』を使って、木の水分を霧散・蒸発・乾燥させると、その加工した木材をにとりが持ってきた図面どおりの形にすべく、一同で削っていく。
その様子は手馴れたもので、たとえ切り出した木材の寸法が不足していても‥‥
「‥‥これじゃあちょいと足りないねぇ」
「それじゃあ継ぎ手でもしますか。にとり、ノミを」
「オッケー」
などという風にすいすい作業が進む。
一方、建築の経験などあるわけない早苗は‥‥
「せ、先輩~なんか、釘とかがまったく無いんですけど‥どうやって建てるんですか~?」
と、金槌を手におろおろするばかり。そんな早苗に嵐は‥‥
「‥‥ああ、日本の木造建築物は、本来釘なんて使わないのよ。その多くが『ほぞ』や『楔』なんかを使った継ぎ手だけで組み立てていた‥‥んだけど、屋根床とかはそう言うわけには行かないのよね‥‥にとり?」
「大丈夫~、その辺りの物は後で仲間が持ってくるから~」
「‥‥仲間が、ねぇ‥‥そのお仲間、ちゃんと頼んだもの持ってくるんでしょうね?」
『河童達の気質』を知る嵐が不信の目を向けるも、にとりは一向に気にする様子を見せず、いや、それどころか‥‥
「大丈夫だって~それよりも‥『この仕事』も、ちゃんと出すものは出してくれるんだよね~?」
と、小声でそう念を押してくる。それに対し、嵐は苦笑すると‥‥
「もちろんよ。どうせここの修繕費を出すのも守矢神社‥‥というよりは神奈子だし。この間の件の迷惑料と、これから博麗神社の境内に建てるっていう守矢の分社の分も込みで盛大にふんだくりなさい」
「そうこなくちゃ~」
そう言い合うと、にとりと嵐は双方にやりと笑って作業を再開する。
彼女たちはノミを使って二つの木材にそれぞれ対となる凹凸を彫り上げると、その二つをつなぎ合わせて一本の木材へと仕上げる。
それと同じように凹凸を彫り上げた木材を翠香が用意した石の基礎の上で縦横に組み合わせ、社の床組、柱、桁、屋根の骨組みである小屋組を作り上げていく。
「‥‥なんかプラモデルみたいですね~」
それを見た早苗が呟いた、いかにも現代っ子らしい言葉に嵐は‥‥
「あら、知らなかった?プラモデルの原点はソリッドモデルとも言われる木材模型なのよ。だからこうした木造建築も使う素材や大きさなどが違うだけで本質的には同じと言っていいのよ」
「へ、へぇ~」
自分が発した何気ない一言が、思ってもいなかった話に繋がり、早苗は目を丸くする。
そんな時‥‥




