差し出された手の温もり
ここから五章となります。
「‥‥‥勝負ありね」
時雨子の様子と空の様子を交互に見やり、空から完全に彼女の影響が消えたことを確認した嵐は、倒れた時雨子の元へと歩み寄ると、彼女を抱き上げ、介抱する。
「‥命に別状は‥‥なさそうね。まあ、この子は一応神だし、これは所詮弾幕ごっこだからね‥‥」
そうして嵐が時雨子の体の具合を確かめていると、時雨子が意識を取り戻し‥‥
「‥‥う‥うう、また負けた‥‥」
そう呟き、嵐の腕の中で悔し涙を流す。と、そんな時雨子と嵐の元に早苗が歩み寄る。
「‥‥時雨子さん」
それを見た時雨子は苦渋の表情になって早苗から視線をそらすと‥‥
「‥‥わ、わかったわよ‥‥あたしだって神の端くれ、嘘は‥‥つかない。負けた以上‥‥あんた達に従うわ‥‥好きにすれば‥‥いいじゃない‥でも‥覚えておきなさい‥‥あたしは‥あんたたちに‥‥完全‥‥服従するつもりは‥ないわ‥いつか‥また‥‥力を得たら‥‥」
だが、そんな事を言う時雨子に対し、早苗は彼女に向かって『見えるように』手を差し出す。
「な、何よ‥‥その手は?」
「仲直りの握手です」
その言葉に時雨子の表情が変わる。
「‥‥わたしたちもこうやって幻想郷の皆さんに受け入れてもらいました、だからわたしたちもあなたに対して支配とか従属とか言いません。
これからは同じ雨風を司る神として一緒にがんばりましょう」
その言葉を聞いた時雨子はしばらくの間、早苗から目を背けていたが、やがて‥‥
「‥‥ふ、ふん、なによ。あんた‥‥少しは‥‥神様に対する態度が‥‥分かったみたいじゃない‥‥ま、まあそう言うことなら‥‥いいわ」
早苗からは目を背けたまま、そっと手を差し出してくる。それを見た早苗はその手をやさしく握りしめ‥‥
「‥‥これでいいんですよね、先輩?」
と、嵐に確認を取る。それに対して嵐は‥‥
「‥‥そうね。まあ、一応合格かしら」
それを聞いた早苗はにっこり笑顔になり、
「やりました!ミッション成功なのです!」
と、時雨子の手を握ったまま思わずガッツポーズを取る。だが‥‥
「‥‥まだ終わってないわよ」




