信仰の本質と、その源
「‥くっ‥で、でもまだよ‥まだ!‥ただ雲を晴らしただけじゃない!‥あれくらいまた発生させられる!だから‥‥あたしはまだ‥‥負けていないわ!」
背後から聞こえてきた時雨子のその言葉を聞いた早苗は、はっと我に返ると慌てて振り向き、身構える。だが‥‥
「‥‥後は任せたわ、早苗」
一方の嵐は素っ気無くそう言うと髪をまとめ、早苗から帽子を受け取ってそれを被ると、そのまま時雨子に背を向けてしまう。
「え?‥でも‥」
それを見た早苗はあっけにとられる。今の自分の力では畏れの力を得た時雨子には到底勝てない。このまま嵐が戦う方がいいのではないか?
そんな早苗の心中を見透かしたかのように嵐は振り返り、そして言う。
「‥大丈夫よ。気がつかない?あの子と‥なによりもあなた自身の変化に」
そう嵐に言われ、早苗は気づいた。自分の体の奥から湧き水のようにこんこんと力があふれ出ている事に。
「え‥‥あれ?力が‥‥‥」
しかも、その湧き出る力はどこか暖かく、弾幕勝負で消耗していたはずの体に活力を与えているように早苗は感じた。一方‥‥
「‥な、何なの?‥力が‥‥急に‥‥抜けていく‥‥」
すでに嵐の雷撃を受けたダメージから回復していたはずの時雨子。だが、彼女の表情は再び苦悶の表情となり、その身は宙に浮いたまま、ふらふらと定まりを失い始める。
しかし、それでも必死に戦おうとする時雨子に対し、嵐は背を向けたまま、こう告げる。
「‥‥所詮、あんたが得ていた力は雨雲で空を覆い、人妖を畏れさせる事で得たもの。でも今、早苗に集まっている力はそれを晴らした事で生まれたヒトの喜びや希望が集まったもの」
そう言うと嵐は続いて早苗の方を向くと、こう言う。
「‥‥‥分かる?皆、この異変がもうすぐ『あなた』の手で無事に解決され、ようやく実りの秋を迎えられるって実感し始めている。確かに神は時に自分の都合で人を苦しめ、虐げる‥‥でも、本来は人に喜びや幸福をもたらす存在。だからこそ人は神を信じ、崇め、そして奉る。それこそが信仰であり、神の力の源泉。
‥‥さあ早苗!今こそ彼女に『本当の神の力』を見せてやりなさい!」
 




