回天する幻想の空、君臨する影
まるで天蓋をも吹き飛ばしかねない程の爆発的な暴風が嵐を中心にして巻き起こる!
『きゃぁぁぁぁぁぁっ!』
今度はその暴風に『吹き飛ばされまい』と必死にその場に踏ん張って耐える早苗と時雨子。そして、その暴風が収まった後で二人が目にしたのは‥‥
「‥‥うそ‥‥空が‥‥」
ついさっきまで暗雲垂れ込めていた幻想郷の空が、遥か彼方に至るまで雲一つ無く晴れわたっている光景だった。
それを見た時雨子は愕然とした面持ちで呟く。
「そ、そんな‥‥一瞬で‥こんな‥あ‥ありえないわ‥‥」
「すごい‥先輩!すごすぎです~!」
真っ青な晴天の空の下、天頂で輝く太陽を背に長刀を手にして天空に君臨する嵐。その神々しいまでの姿に早苗はしばし見とれてしまう。
しかし‥ふと早苗は気づく。こちらに向かってゆっくりと降下してくる嵐の服装がさっきまでと違っている事に。それは先程までの西部劇に出てくるようなガンマンスタイルではなく、長刀を振り回すにふさわしい、侍のような和装のいでたちのように早苗には見えた‥しかし‥
「‥‥‥まあ、こんなものかしらね」
舞い下りてきた嵐はそう言いながら晴天の空を見上げる。だが、その姿は前と同じだった。
‥‥‥なんだったんだろう?‥‥今のは?‥
それを見た早苗は一瞬だけそう思ったが、下りてきた嵐の元へと駆け寄る頃にはその事をすっかり忘れてしまい‥‥
「‥‥すごいです先輩!一体、今のはなんていうスペルカードなんですか?」
と聞くが、その問いに嵐は首をかしげ、
「‥‥?‥‥ああ、今のは別にスペルカードでもなんでもないわ、ただ、これの刃を構成している圧縮空気を少し開放しながら振っただけよ」
そう言うと嵐は刀を一振りする。と、刀身を形成していた空気が四散して再び刀は柄だけとなり、彼女はそれを鞘へと納める、と同時に再び鞘の装飾が閉まり、再び刀は封印される。
「‥‥‥‥え?‥‥」
そんな嵐の答えに唖然とする早苗に彼女は更に告げる。
「‥‥これでもだいぶ‥いえ『かなり』抑えた方だけど、この『天操刃』を使って普通に技なりなんなりを出せば、こんな山の一つや二つ‥いえ、それどころかこの幻想郷を覆う『博麗大結界』ですら容易に吹き飛ばせる。
‥‥そんな物騒な代物を『たかが弾幕ごっこ』でおいそれと使うわけには行かないでしょ?
‥‥それと、この際だから言っておくわ。あたしにとって風や竜巻、雷を操るのは力のほんの末端、『ついで程度』のもの‥‥まあ、弾幕ごっこをする分には『この程度』でちょうどいいけど」
「ついで程度!‥それであれですか!」
嵐の言葉を聞いた早苗は、今まで見てきた彼女のスペルカードを思い出すとそう叫び、初めて嵐に対し畏怖の念を抱く。そんな時‥




