切り札発動!
そう言うと嵐は『背中に背負っていた刀』の柄に手をかけ‥‥
『封印‥‥解除!』
そう叫んだ次の瞬間!、まばゆい光とともに刀の『鞘部分の装飾』が勢いよく開き、『本来の柄』部分が露出する!と、同時に嵐はそれを引き抜いた!
だが‥‥彼女が抜き放ったその刀には本来あるはずのもの‥‥刀身が‥‥無い!だが、嵐はそれを両手で握り、上段の構えを取ると‥‥
『来たれ!天の力!』
そう叫ぶ、と‥‥次の瞬間!
「な、なに?」
「き、きゃぁぁぁぁぁ!」
突然、猛烈な風が『嵐が抜いた柄だけの刀』に吸い込まれるように巻き起こり、その風で木々は激しく揺れ、紅葉していた葉という葉はすべて嵐の元へと吸い寄せられていく。
そんな中、早苗は嵐から預かった帽子を離すまいとしっかり抱きしめながら近くの木にしがみつき、飛ばされないようにし、時雨子もその風に吸い寄せられまいと、空中で必死に耐える。
「う‥うう!」
「な、なんて風なの!」
だが‥‥やがてそれも収まり、そして‥‥早苗と時雨子は見た。
嵐が手にしている、柄だけだったはずの刀に彼女の身の丈ほどの長さがある長大な刃が存在しているのを。
「‥‥なによ‥あれ‥」
「あれは‥風‥いえ‥空気の刀?」
風で巻き上げられた無数の落ち葉がひらひらと舞い落ちる中、唖然とそれを見上げる二人に対し、ほどいたロングヘアを風になびかせながら嵐は厳かに告げる。
「‥‥水にしろ、空気にしろ、超高圧で圧縮すればこの世のあらゆるものを切り裂き、破壊するだけの力が生まれる。そんな超高密度に圧縮された空気の刃を持つ刀‥‥‥それがこの『天操刃』!」
そして嵐は、その『天操刃』の切っ先を、雨雲を背にしている時雨子へと向けると‥‥、大地を一蹴りし、飛翔する!
「く‥‥来る気!」
先ほどの雷撃の残滓に呻きながらも身構える時雨子。だが、嵐は彼女には目もくれず、その背後に広がる、雨雲へ一直線に突っ込んでいく。
「な‥‥何をする気?‥‥分からないけど‥‥そうはさせないわ!」
上昇する嵐の背中をにらみつけながら時雨子はそう言い、攻撃を仕掛けようと意識と力を集中しようとする‥‥が、全身に痛みが走り、それもままならない
「‥‥く‥‥」
ままならない己の様に歯軋りする時雨子を尻目に、嵐は厚い雷雲の中へと突入する。
その雲の中は膨大な雷のエネルギーが充満し、一面いたるところで放電が走っている。
‥‥だが、そんな雷雲の中でも嵐はものともせず、手にした『天操刃』を振り上げ再度上段の構えを取ると‥‥
「‥‥天よ!我に従え!はぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
その一声と共に刀を振り下ろし、刀身を形成している圧縮空気を開放した‥‥次の瞬間!
‥‥空が‥いや、幻想郷そのものが‥‥揺れた!
 




