地より見上げる天の眼差し
「!!!!!!!!!」
全く無防備な状態で嵐の雷撃を受け、言葉にならない悲鳴を上げる時雨子!だが、その悲鳴は雷撃の轟音にかき消される!そして雷撃が収まると‥‥彼女はぐらりと体勢を崩して落下する‥が、その途中で時雨子は何とか体勢を立て直し、何とか宙にとどまる。
「う‥く‥」
だが、今の一撃でだいぶ消耗したか、時雨子はそのままゆっくりと高度を下げ、ふらふらと舞い降りて来る。そんな時雨子を見上げながら嵐は言う。
「‥‥『戦場において飛んできた矢を拾って撃ち返すと、それは放った本人へと飛んでいき、命中する』‥これが『古事記』において自らが放った矢を投げ返され、命を落としたというアメノワカヒコの逸話を基とした『還し矢』の俗信‥‥
覚えておきなさい、雷って言うのは天から地へと落ちるだけじゃなくて、地から天へと昇るものもある‥‥確かに上から下を見下すのは気持ちがいいでしょうね。でも、自分達がいつまでも上だと思い、そして自分達の上にはもう何もいないと思っていると‥‥こういう目に遭うのよ!」
「く‥この‥‥」
いまだダメージの残る体に鞭を打ち、必死に宙に浮き続けようとする時雨子。だが、嵐はそんな時雨子に対し、更に言い放つ。
「‥‥神が傲慢な人間に対して神罰を下すと言うのなら、傲慢な神に対しても『誰か』が罰を下すべきじゃないかしらね!」
「く、まだよ‥‥まだ!」
しかし時雨子は嵐の言葉には全く耳を貸さず、気力を振り絞って反撃に出ようとする。だが‥‥
「‥‥でしょうね、これは単なる時間稼ぎよ!‥‥早苗!」
そう言うと嵐はかぶっていたテンガロンハットを取って早苗に向かって放ると、さらにまとめていた髪をほどき、そして彼女に向かって叫ぶ。
「‥‥早苗!ここからできるだけ離れていなさい!‥‥そうしないと、巻き添えを食うわよ!」
「え?‥‥え?‥」
嵐から帽子を受け取った後、上空からそう言われた早苗は戸惑いつつも、言われた通り慌ててその場から離れる。それを見た嵐は、一息吐いて呼吸を落ち着けると‥‥
「‥‥そっちが神渡の剣なら、こっちは‥‥‥これよ!」




