傲慢なりし神の裁き
「‥‥せ、先輩‥‥貴女は一体‥‥」
そんな早苗に対し、嵐は時雨子から視線は動かさないまま、こう言う。
「‥‥早苗、現人神としての力が増せば、いつかあんたにもわかる日が来るわ。
‥‥あたしが『本当は』一体何者なのかを」
一方、時雨子は未知なる存在への恐怖からか、攻撃の標的を『現人神』である早苗から『得体の知れない存在』である嵐へと変える。
「い‥言わせておけば!‥に‥『人間』!神の力を思い知れ!」
『雷帝!神の鉄槌!』
その、怒りに身を任せて行った時雨子の宣言と同時に、雨雲から生じた雷が雷撃となって嵐の周囲へと降り注ぐ!それに対し、嵐は‥‥逃げない!
「先輩!」
そう早苗が悲鳴を上げた次の瞬間!落雷の閃光と、空気を切り裂く轟音と衝撃がその場を支配する!
とっさに目を閉じ、耳を塞いでそれらから身を守る早苗。そしてその閃光と衝撃が収まった後に早苗が見たのは‥‥‥雷撃などものともせずに立っている嵐の姿だった。
「せ、先輩‥よかった‥‥」
「そ‥そんな!直撃のはずよ!」
無傷で立つ嵐の姿に安堵する早苗、対して時雨子は唖然としている。
確かに嵐のいる広場の周囲に生えていた森の木々や草は、今の雷撃によって全て焼き払われ、木々の多くが無惨に割れているが、そんな規模の雷撃の中心にいたにも関わらず、彼女とその周囲には全く焼け焦げた跡が無い。
一方その嵐は今、時雨子が使ったスペルカードの名称から、冷静に相手の分析をしている。
「雷帝?神の鉄槌?‥‥なるほど、『トール・ハンマー』ね‥‥
古事記の次は北欧神話とは‥‥いや、アジシキタカヒコネは鉄器の神だし、鎚を使ってもおかしくないか‥‥どちらにしても、蛇どころかも鷲も倒せないようじゃまだまだね」
「な‥‥」
自分の攻撃にまるで動じる様子を見せない嵐に時雨子は絶句する。
そんなやり取りを傍で聞いていた早苗はふと気づく。広場の周囲、焼き払われた木々の合間の地面に、いつの間にか何本もの銀色の棒が突き刺さっている事に。それを見た彼女はある可能性に思い当たる。
「あれは‥もしかして避雷針ですか!」
「‥‥残念ながら半分くらいははずれよ。木よりはるかに短いこんな棒じゃあ『本来』避雷針にはならない」
視線を時雨子から早苗に移して嵐が説明する。
「え?‥」
「‥‥確かに金属は電気を通すけど、7割が水分でできている人間の体も同じように電気を通す。だから金属をはずせば落雷を避けられるって言うのは迷信に過ぎない‥‥でも、これは違う」




