守矢神社での会合
「‥‥それよりも、問題はこの『止まない雨』ね」
空一面を覆う雨雲を見上げながら嵐はそうつぶやく。
‥‥時雨子が人里に現れ始めた頃、この雨は尋常ではない事に気づいた者たちがいた。幻想郷において力ある存在‥‥妖怪達である。
彼女らは天を覆う雲にただならぬ力を感じ、各々の方法でその力の『質』を探った。そしてその力の質は自分たちのような妖怪が使う妖力や魔力ではなく『神の力』であることを知った。
止まない雨‥神‥この二つの要素から彼女らがまず思い浮かべたのは最近になって幻想郷にやってきた守矢神社とそこに祭られている風神・八坂神奈子の存在であった。
そんな時、時雨子が妖怪達の住処の一つである紅魔館や永遠亭にも現れ、館の門番や薬売りの行商などを行っている何人かの妖怪たちを叩きのめし、そして去っていった。
人ならぬ存在‥それも妖怪では無く神が相手ではさしもの妖怪達も分が悪い。が、このまま黙っているわけにもいかない。
そこで紅魔館を始めとした幻想郷の各勢力の代表と人里の代表がそろって守矢神社に集まり、神である神奈子に対し助言を求めたが、それに対し神奈子は‥‥
「時雨子?‥‥ああ~なんかそんな神がこの間、やってきたな。早苗の奴にこっぴどくやられて逃げ帰ったが‥‥
‥‥まあ、おそらく自分を負かしたわたしらに対する復讐をもくろんでいるんだろう。
‥‥雨雲で幻想郷を覆って自分の存在と力を見せ付ける事で幻想郷の住人を恐れ、おののかせることで畏れの力を得、その力を高めてからわたしらに再挑戦しようって魂胆なんだろうな~」
つまり、この『異変』が起きた大本の原因は守矢神社にある‥‥‥そう知った一同は唖然とする。
だが、それ以上に一同の神経を逆撫でしたのは、神社の本殿内に集まった一同に対する神奈子の、その傲然かつ他人事のような発言であった。
「‥‥それで?貴女‥いえ、守矢神社はこの件について、どう責任を取るつもりかしら?」
集まった一同を代表して八意永琳が努めて冷静にそう尋ねると、神奈子は待っていましたといわんばかりにこう答えた。
「ん?責任かね?それなら、ちょうどうちの早苗にも博麗の巫女殿のように異変解決をさせようと思っていたし、あの子に解決させることで取るっていうのでどうだね?」
その思わぬ案に一同は再びあっけに取られる。それを見た神奈子は、思惑通りと言わんばかりの不敵な笑みを浮かべると‥‥
「‥‥何しろこれはうちらがしでかしたことがきっかけなのだから、うちら自身が解決するのは当然のこと、そちら側の手は煩わせないさ」
「‥‥しかし、それでこの異変を解決できたとしても、それをきっかけとして『また』騒ぎが起きるようではこちらとしては困るわ」