新たなる絆
その嵐と早苗のやり取りを聞いていたエラミーはしばし茫然としていたが、やがて‥‥
「そうか‥そうなんだ‥ははははっ!おねぇちゃんすごいや!あたし、そんな事一度も考えた事なかったよ!」
そう叫びながら宙に浮くと、嬉しそうに辺りを飛び回る。
「エラミーちゃん‥‥」
エラミーはしばらくの間そうして飛び回っていたが、やがて嵐の元に舞い降りると、
「あたし、もう誰にも悲しい思いをさせず生きられるんだね!生きていいんだね!」
と、瞳を輝かせて聞いてくる。そんな彼女に嵐は頬をぽりぽり掻き、
「‥‥多分ね、でもこれはただの思いつきよ、本当にできるかどうかは判らないわ」
と、いささか言い訳めいたことを言うが、エラミーは全く気にする様子を見せず、
「うん!それでもいい!あたしやってみるよ!」
と、嬉しそうにうなずく‥が、
「‥‥あ、そうだ‥‥」
何かを思い出したか、エラミーは突然もじもじし始めると‥‥
「‥‥おねぇちゃん達‥‥さっきはごめんなさい」
そう、ぺこりと頭を下げる。
「?‥‥ああ、出会った時の事ね。あたしも早苗も気にしてないわ‥‥でしょ?」
エラミーが言わんとしていることを察した嵐がそう言うと早苗も‥
「はい!そのとおりです!何しろわたしとエラミーさんは共に困難に立ち向かい、助け合って切り抜けた、いわば『戦友』も同然!ですからその前の事はもう何とも思っていません!安心してください!」
なぜかびしっと、あさっての方向を指差し、無駄に元気よくそう答える。
そんな熱く語る彼女の様を見た嵐は‥‥
「‥‥この子はまた、そんなどこかの正義オタクみたいな事を‥‥」
そう言ってあきれつつも口元をほころばせる。そんな彼女に対し、その顔を見上げながらエラミーが不安げに聞いてくる。
「‥‥本当に?」
「‥‥本当よ。あの程度のことにいちいち本気で怒っていたら、あたしはとっくの昔に幻想郷を『何度も』壊滅させているわ。だから安心しなさい」
相当さっきの弾幕戦が堪えたのか、おどおどした様子のエラミーにそう冗談めかして答える嵐。それを聞いたエラミーは‥‥
「そっかぁ‥よかったぁ~」
そう言うとようやく彼女の表情がにこやかになる。そんなエラミーの様子を見た嵐は、また別のことを思いつく。
「‥‥‥ああそうそう、その代わりと言っては何だけど、もし何か悲しい事が起きそうだって感じたらこの子に伝えて欲しいのよ」
「‥‥さなえに?」
「そう‥妖怪の山に新しく神社ができたんだけど、この子はあそこの巫女なのよ」
「巫女?それって博麗神社の巫女と同じなの?」
「‥‥‥まあ、だいたいね」
なぜか珍しく歯切れが悪い嵐だが、エラミーは気にする事無くうなずく。
「うん、わかった。でもどうして?」
「だってあなた、悲しみを糧にして生きてきたんでしょ?だったらそういう感情を遠くからでも感じ取る事ができるんじゃない?」
「‥‥え?う~ん‥そうだね。そうかもしれない」
「あたしとしては、あなたが持つそうした能力を人助けや異変の兆候をいち早く発見するのに活用したいのよ。協力できるかしら」
「わかった!‥‥う~ん、ほんとはよくわかんないんけど、誰かが悲しい目とか辛い目にあいそうだって感じたら山の神社に行って教えればいいんだね」
「‥‥‥まあ、そうとってもらって構わないわ」
少々不安はあるものの、エラミーなりに自分の提案を理解したと判断した嵐がそう頷くとエラミーは‥‥




