散り逝きし、哀しき幽霊妖精
「でも‥でも!あたし‥‥人間にも‥妖怪にも‥‥妖精にだって嫌われている!あたしは誰からも嫌われているんだ!だから‥‥だから‥‥みんなあたしがいなくなった方がいいって思っているよ!」
だが‥‥そんなエラミーの絶叫に対し、早苗は叫び返す。
「そんなの知りません!『この幻想郷では常識に囚われてはいけないんです!』だから‥そんな常識わたしは知りません!知りたくもありません!」
「!‥さなえ‥」
「‥‥たとえ幻想郷すべてのヒトがあなたを嫌ってもわたしはあなたを受け入れます!‥先輩がわたしを受け入れたように‥霊夢さんたちがわたしたちを受け入れたように‥わたしもあなたを受け入れます!だから‥だから!生きてください!」
「‥そうだよ~わたしだっているよ~だからエラミーちゃん~生きて~生きてよ~」
そうやって必死に訴える早苗とアスメル。エラミーはそんな二人に対してなおも何か言おうとするが‥そんな彼女に嵐が声をかける。
「‥‥一つ教えておくわ。本当の喜びや幸せって言うのは、悲しい事や不幸を『無くす』んじゃなくて『乗り越える』ものなのよ‥‥だから、そうした出来事を多く経験したヒトこそが他人に対して優しくなれるし、幸せにも出来る‥‥さっきあなたは自分を犠牲にして早苗達を助けようとしたでしょ?それが‥‥本当の優しさなの‥‥そしてそういうヒトにこそ‥‥あたしは生きて欲しいと思うわ‥‥」
被っている帽子を目深にし、表情を隠しながら嵐が言葉を続ける。
「‥‥それにね、エラミー。自分の能力や素性を恨んではだめよ。あんたがそんな能力を持って生まれたのには必ず理由がある。それを人の役に立てさせる方法もきっとある‥‥だから、その可能性を自分から否定し‥‥生きる事をやめてはいけないわ」
「‥‥そうです!そのとおりです!」
嵐の言葉に早苗はそう強く叫ぶと、エラミーを抱きしめる力をより強くする。
「エラミーさん!そんな風に自分を悪く言うものではありません!‥‥どうせ生きるのなら元気に、前向きに生きるべきです!‥‥誰にどう思われようと!何と言われようと!生きるべきなんです!」
「あはは‥言ってることが‥‥おかしいよ、さなえ‥人に‥‥悲しい思いを‥‥させて‥‥生きてきた‥‥あたしに‥‥元気に‥‥前向きに生きろ‥なんて‥‥‥‥でも‥うん‥そうだね‥出来ることなら‥あたしも‥‥そうやって‥『みんな』と‥一緒に‥生きたいなぁ‥‥‥」
そう言いながら‥穏やかに微笑んだ‥エラミーは‥そのまま‥静かに目を閉じ‥そして‥その姿が‥よりいっそう儚く‥薄く‥透明になり‥
「エ!エラミーさん!」
「エラミーちゃぁぁぁん!」
そう早苗とアスメルが絶叫した次の瞬間!早苗達を中心としたその場にまばゆい光が溢れると、それは輝きを増して一同を包み込む!
‥‥そして‥程なくして‥その光が消え‥そして‥‥
 




