哀しき温もり
‥だが‥その長い沈黙にとうとう耐え切れなくなったエラミーが『何かを隠そう』としてさらに訴える。
「‥あたし‥あたしさ‥これまでずっと‥人間や妖怪達に‥嫌な思いをさせて‥生きてきた‥でも‥あたしだって‥‥最後の‥最後くらい‥‥さっきの‥‥おねぇちゃん達みたいに‥‥‥誰かを‥喜ばせたい‥‥誰かを幸せにして‥‥あげたいんだ‥だから‥‥だからさ‥‥みんな‥‥喜んでよ!‥笑ってよ!‥‥ねぇ!」
そう訴えるエラミーの目には‥‥『また』涙が溜まっていた。そして‥‥
「‥‥喜べるわけ‥笑えるわけ‥‥無いじゃないですか‥」
‥‥そう言いながら顔を上げた早苗の目にも涙が溜まっていた。そして早苗は‥‥
「そんな‥そんな‥悲しそうな笑顔を見せられたって‥‥笑顔になれるわけ‥‥無いじゃないですか!」
そう彼女は叫ぶと、消えそうになっているエラミーへと駆け寄り、その体を抱きしめる。
「!‥‥‥さなえ‥」
「‥‥感じますか‥エラミーさん‥‥この‥‥悲しみを」
「‥うん‥‥」
「これは‥あなたが消えてしまう事‥‥いなくなってしまう事に対する‥‥感情です。辛いです‥苦しいです‥‥でも‥あなたが‥こうした感情を力として‥生きて‥いるのなら‥‥わたしの‥この‥悲しみの感情で‥力を取り戻して‥ください‥そして‥‥もっと生きて‥ください‥‥生きて誰かを‥‥幸せにして‥‥あげてください‥‥」
「‥‥うん‥感じるよ‥さなえの悲しみを‥でも‥どうして‥こんなに‥暖かいの?さなえも‥つらいはずなのに‥‥どうして‥‥」
「‥それは‥きっと、あなたの事を‥思っているから‥です。あなたに‥もっと‥生きて欲しいと‥心の底から‥思っているからです‥」
「!‥‥でも‥‥でも!‥あたし、さなえに‥ひどい事‥したんだよ!昔の‥‥つらかった時の事を‥思い出させたんだよ!‥こんなことして‥生きてきたあたしなんか‥‥もう、消えて‥いなくなった方がいいんだよ!」
そう叫びながら早苗の体を抱きしめるエラミー。そんな彼女の表情が無理矢理に作った笑顔から‥ついに泣き顔へと変わる。だが、早苗はそんなエラミーに対して必死に反論する。
「そんなわけありません!あなたは命がけでわたしを助けてくれました!そんなヒトがいなくなって喜ぶヒトなんて‥いるわけ無いんです!だから‥だから!そんな事言わないでください!」
そう叫ぶと、早苗もエラミーを抱きしめる力を強くする。
「‥‥確かにあなたの言う通り、あなたの力でわたしは昔の忘れていたかった辛い記憶を思い出しました。でも‥それをきっかけにして先輩と出会った時の事も、出会った後の事も思い出せました。
‥‥悲しい事、つらい事を思い出すのは確かに苦しいです。嫌です。けど‥悲しい事があるからこそ楽しい事、嬉しい事の一つ一つをより強く感じる事もできる。わたしは‥‥そう思います」
早苗のその言葉を聞いたエラミーはそれに対し、大粒の涙を流しながらこう叫ぶ。




