儚き春の終わり
「あはは‥よかった‥みんな無事に助かって‥‥よかったよ‥‥これで‥もう‥‥思い残す事‥‥無いや‥‥」
「?‥‥エラミーちゃん!」
今までとは違う、弱々しいエラミーの声に違和感を覚えたアスメルが、ふと彼女の方へと目をやり‥そして悲鳴を上げる。
その悲鳴で振り返った早苗と嵐が見たエラミーは、飛ぶ事すらやめて地面にへたり込み、肩を落としてうつむいていた。
しかも‥‥‥見ると彼女の体は‥うっすらと透け始めている。
「これは‥‥」
「‥‥はは‥どうやら‥‥お迎えが来た‥みたいだね‥」
「エラミー‥さん?」
うつむいたまま地面にへたり込んでいたエラミーだが、早苗の問いかけを聞くとゆっくりと顔を上げ‥‥
「‥‥やっぱり‥‥さっきので力を‥‥使い果たしちゃったみたい‥‥でも‥これでいい‥‥これでいいんだ‥だって‥これで‥あたし‥もう‥誰かを‥悲しませないで済む‥‥つらい目に合わせないで済むんだ‥それってさ‥いいこと‥だよね?‥」
にこやかな‥そう『痛々しいくらい』の笑顔でそう言うエラミー。しかし‥‥その問いには誰も答えない。アスメルも‥早苗も‥嵐や風でさえ‥降りしきる雨の中、今度は彼女達の方がうつむき、エラミーのその『笑顔』から目をそらしている。
そんな一同に対し、エラミーは笑顔のまま、必死に訴える。
「‥‥ねぇ?みんな‥どうして‥‥そんな‥悲しそうに‥しているの?‥‥あたしさ‥これで‥‥やっと‥‥みんなを‥悲しい目に‥あわせずに‥すむんだよ‥‥いい事‥じゃない‥だからさ‥喜んでよ‥‥笑ってよ‥‥ねぇ‥」
‥‥しかし‥それに答える者は無く‥‥雨音と沈黙だけが‥その場を支配する‥‥‥




