守矢の従者
「従者様。このたびは助けていただき、ありがとうございました」
そう言うとその農民は嵐に対して深々と頭を下げる。と‥‥
「‥‥じ、従者様~?ち、違います!その方はですね‥‥」
その農民の言葉を聞きつけた早苗が慌てて訂正しようとするが、嵐はそれをさえぎり‥
「ああ、いいのよ早苗‥じゃないわね‥『よろしいのですよ、東風谷様』」
そう言うと嵐は被っていた帽子を取り、うやうやしく早苗に対して頭を下げる。
「‥え?‥‥せ、先輩?」
「‥‥わたしなどはまだまだ未熟、しかし‥それでも東風谷様のお務めの役に立てて何よりでございます」
「せ‥先輩‥」
自分に対し、頭を下げたままの嵐。それを見た早苗は思う。
‥‥自分の方が未熟なのに‥‥助けられてばかりのはずなのに‥‥それなのに、そんな自分に対して深々と頭を下げ、敬う様を見せる嵐。
その言動から早苗は何かを感じ取ると‥‥
「‥‥い‥いえ、よく‥やってくれました。この方たちを無事に救えたのは‥‥『あなた』と‥‥あの妖精や天使のおかげです‥‥」
と、早苗はまぶたに熱いものを感じつつ『守矢神社の風祝』としての立場で嵐に接する。
その後、農民たちは降りしきる雨の中、山を下り里へと戻る。早苗達も再び彼らが災害に巻き込まれてもすぐ助けられるよう、安全地帯に着くまで彼らを送る。
その道中、一行は傘をさした銀髪の少女に出会う。
「妹紅」
「久しぶりね、嵐」
嵐とその少女は互いの顔を見ると自然に笑みを交し合う。
「ええ。それにしてもあなたが竹林の外にいるなんて珍しいわね」
「‥‥慧音に頼まれてね、彼らを探しに出ていたのよ」
少女の言葉に嵐は得心がいったのか、頷く。
「ああ、そう言う事。なら‥‥ここからは任せてもいいかしら」
「ええ」
そう言うと嵐はその少女に助けた農民達を委ねる。
その農民達は別れ際、早苗達に対して熱心にお礼を言うと、銀髪少女に付き添われ、里へと帰っていく。
その後姿を彼女達は無事見送っていた‥そんな時‥




