『降り止まぬ雨』の異変
「‥‥‥なにそれ?あんた、霊夢達だけじゃなくてそんな神様ともやりあったの?」
「‥‥‥は、はい‥‥」
暑い夏が終わり、実りの秋を迎えた幻想郷。しかし、人々は素直にそれを喜ぶことはできなかった。
博麗神社と守矢神社のいさかいが始まる少し前、幻想郷の外れにある山の上空で発生した雨雲。それは雨を降らせ続けながら次第に規模が大きくなっていった。
初め、人々はそれがこの季節に良くある長雨だろうと思っていたが、昼夜問わずに降り続き、決して止むことのないこの雨の異様さに人々は次第に不安と怖れを抱き始め、ついには‥‥
「これはひょっとして『異変』じゃないのか?」
‥‥という噂が人里を中心に広まりだした。
異変、幻想郷においてしばしば起きる不思議な事件、怪現象の総称である。
そんな時、雨雲を伴って里に現れたのが天瑞時雨子であった。彼女は大雨によって田畑を水であふれさせ、時に雷で建物を焼いて人々に恐怖を与え、もてあそぶと満足したかのように去っていった。
それが数日続き、神社同士のいさかいが終わった頃、雨雲はとうとう幻想郷の空全体を覆ってしまったのである。
「‥‥あきれた‥‥いくらこの幻想郷が外の世界から見れば非常識の塊だからって、限度ってものがあるわよ。どこの世界だろうと引越しをしたのなら引越し先の近所に菓子折り持って挨拶に行くのが礼儀、引越しして早々に隣近所と揉め事引き起こしてどうするのよ?」
空を覆う雲は絶えず雨を降らせつつ、時折怪しく光っては大地に雷を落とす。そんな秋雨で濡れた紅葉の森の上を飛翔する二人の少女。
一人は緑髪のロングヘアに青いロングスカート、そしてなぜか肩と腋を露出している妙なデザインの巫女服をまとっており、もう一人は栗色のロングヘアをポニーテールにした上にテンガロンハットをかぶっているガンマン風のいでたちで、こちらもなぜか背中には鞘部分だけでも三尺三寸(約一メートル)程もある長刀を背負っている。
「うぅ~だって~先輩~向こうから先に突っかかってきたんですよ~」
「‥‥だからって考えなしに神様を叩きのめしてどうするのよ。まったく‥‥相手にだって神としての『面子』ってものがあるでしょうが‥‥」
そう言って緑髪の少女『祀られる風の人間』東風谷早苗をたしなめている栗色の髪の少女は『神風の導き手』天風嵐。
「‥‥で、ですよね~」
「‥‥まったく、同じ非常識でも常識に『囚われないこと』と、常識を『ないがしろにする』というのは違うのよ‥‥まあいいか、その辺のお説教は帰ってからゆっくりと‥」
嵐にそう言われながら横目でにらまれた早苗は表情を引きつらせ‥
「な、なるべくお手柔らかにお願いします~」
「‥‥そうね。神奈子はともかくあんたは霊夢にこっぴどくやられて考えを少し改めたみたいだし、あたしにも責任があるわけだから、あまりとやかくは言わないわ」
「‥‥‥ほっ‥‥」
どうにも不慣れなもので、初めは分けていた小説の内容を一つに統合しました。今後はこちらで進めていきます。申し訳ありません。




