幽霊妖精の告白
「エラミー!」
彼女は迷う事無く一目散に濁流へと飛び込み、早苗との間に強引に割り込むと、そこで自分の力を放出し、早苗の代わりにその濁流を受け止める。
だが‥その放出している力の規模はとても妖精が出せるようなものではない。
一方、そんなエラミーによって結界を張る負担から開放された早苗は、同時に嵐の言葉を思い出していた。
‥あの妖精、力を使いすぎると二度と復活できなくなるかもしれない‥
「あ‥あなた‥そんなに力を出して大丈夫なんですか!」
嵐の言葉を思い出した早苗がふと不安に駆られ、そう聞くとエラミーは‥‥
「か‥かまうもんか!だって‥この人間たちがこんな目に合ったのは‥元々あたしのせいなんだから!」
「‥え?」
エラミーのその告白を聞いた早苗は一瞬、呆気に取られる。そんな彼女に対してさらにエラミーは告げる。
「‥‥あたし、はじめはいつも通り、食事のつもりでこの人間たちに幻聴を聞かせていた‥でも皆、次第にあたしの幻聴を本気にして、この山にある自分達の畑の様子を見に行こうとしてここに来たんだ!」
「‥‥先輩も言っていました。この雨が長引けばせっかく育てた作物が駄目になるかもしれない‥と。この人達はその事に不安を感じ、様子を見に来たんですね」
「‥そうだよ!それなのにあたしは、いつもみたいにイタズラして困らせてやろうって軽い気持ちでここにあった橋を落とした!どうせ橋なんてなくても歩いて渡れるだろうしって‥‥でも!その後で急に川の水が増えて、戻れなくなっちゃったんだ!」
「‥‥誰かを困らせてはその様を楽しむ‥‥確か、それはここの妖精さんの性分でしたね‥‥でも、今のあなた‥すごく悲しくて‥辛そうです。あなたは悲しみの感情を食べて生きているんじゃないんですか?」
その早苗の言葉にエラミーは力を放出しながら首を振る。
「‥‥ダメ!あたし、自分のことはどうにもできないの!あたしは自分がどんなつらく、悲しい思いをしても、それをあたし自身の力にはできないんだ!」
苦しそうな表情のエラミー。その理由は力を限界以上に振り絞っているからか、それとも‥‥
「‥‥あたし、本当はずっとこんな自分が嫌だった‥でも、生きるためには仕方がないって思っていたし、誰かが困っているのを見ると、つい困らせたり、もっとつらい目に合わせたりしていた!‥そんなときに出会ったのがアスメルなんだ!アスメルと出会えてからはあたし、そういうことをしても誰かを『本当に悲しませず』にいられた!‥でも‥」
そう言いながら力を振り絞るエラミーの目にはいつしか‥涙が浮かんでいた。




