傲慢なる神が与えし恩恵
そのアスメルや農民の一言を聞いた嵐は内心で風と言葉を交わす。
‥‥ああ言っておいてなんだけど‥‥この人たちにライターとか見せたらどう思うのかしら?‥‥
‥‥それが八坂様の狙いなのでしょうな‥‥外界の『科学』を幻想郷に持ち込み、広める事で人々の生活を豊かにし、それによって自らに対する信仰を得る‥‥
‥‥神奈子‥‥なりふり構っていないわね‥‥科学というのは元をただせば自然の法則、そしてそれを活用できるようにしたのは人の創意工夫‥‥それを神の施しとするなんて‥‥ほとんどペテンじゃないの‥‥それが神のする事かしら‥‥
‥‥神だからこそでは?‥‥ギリシャ神話で人に火を与えたプロメテウスのように神にとって人の知恵・創意工夫・発明などは所詮『自分たちによって与えられたモノ』に過ぎない‥つまり元をただせば自分たちのモノという事なのでしょう‥
‥‥ふん‥‥人の努力や発明も皆、自分たちの恩恵って訳?‥相変わらずね、連中は‥‥
嵐達が内心でそうしたやり取りをしている一方で、助けられた農民たちは‥‥‥
「‥‥それにしてもこの雨はやっぱり雨神様の崇りなんだろうか?」
「‥‥違いねぇ、俺たちがこれまでずっと雨神様の事をないがしろにしていたから怒っておられるんだ‥」
「‥‥俺たちは一体、どうすればいいんだ‥」
‥‥嵐が熾した火を囲み、口々にそう言い合っては途方に暮れている。
だが、嵐はそんな農民たちよりも、さっきから彼らの視界に入らないように影でこそこそおとなしくしているエラミーの行動に違和感を覚え、ふとそちらへと意識を向けた‥‥‥そんな時。
「‥‥あ‥だめ!逃げてください~!」
相変わらずの口調ながら、はっきりと危機を伝えるアスメルの声が聞こえてきた。




