死天使との記憶と新たなる危機
「‥‥あなたは?」
「わたし?わたしはアスメルといいます~」
嵐の問いにアスメルはそう言うとほんわかとした笑顔を見せる。
「あなた‥‥天使ね」
「はい~それがどうかされましたか~?」
「ん?‥昔、ちょっとね‥‥それよりもあなた、何か理由があって突っかかってきたのね」
「‥‥う、うん」
突然嵐に話を振られたエラミーは口ごもるが、そんな彼女をフォローするかのようにアスメルが事情を話し始める。
「えっと‥ですね~あっちの山の中で人間さんが何人か、増水した川の前で立ち往生していて里に戻れなくなっているんです~」
相変わらずおっとりとしたしゃべり方ではあるが、アスメルは真剣な表情でそう言うと早苗達が向かう先とはあさっての方向にある山を指差す。
今からその方向に向かうのは、二人にとって確実に時間のロスになる‥しかし、その言葉を聞いた嵐と早苗はすばやく視線を交わしあい、うなずく。
「‥‥早苗」
「‥‥わかっています」
「‥‥‥全く、そう言うことはもっと早くに言いなさいよね」
「‥‥う。ご、ごめん~」
そう嵐ににらまれてしょんぼりするエラミーに苦笑しつつ、嵐はやおら目を閉じ、『その山の状況』を探る。
すると‥‥『目を閉じているはず』の嵐には見えた。降りしきる雨の中、増水した川のほとりで途方にくれている数人の人間たちの姿を。さっきのアスメルの話と彼らの質素な服装から判断すると彼らはおそらく人里に住む農民達なのだろう‥‥
そう判断した嵐は目を開くと‥
「‥‥‥あれね、確かにここからだとちょっと遠い‥‥それにあの様子だと一刻を争うかもしれない‥‥飛ばすわ、『三人』ともあたしに掴まりなさい」
そう早苗達に言う。
『え?‥』
嵐の突然の言葉に戸惑い、視線を交わし合う三人。
「‥‥早く!」
『は!はい!』
嵐にそうせかされた三人は慌てて彼女の体に抱きつく。一方の嵐は三人に抱きつかれたまま意識を集中し、『周囲の大気』を操り始める。




