スペルカード・ルール
「ち、ちょっと!こんなの反則じゃないか~!」
周囲を見渡し、小柄な自分にすら抜けられる隙間が無いことが分かると、ようやく自分が『誘い込まれていた』事に気付き、幽霊妖精は悲鳴を上げる。だがそれに対し、嵐は傲然とした振る舞いで答える。
「‥‥どこが?‥‥これは博麗の巫女‥‥霊夢が提案した『スペルカード・ルール』をあたしなりに理解した結果よ。
このルール、どうやら相手が絶対に避けられない弾幕攻撃をしてはいけないって言うのが基本原則‥‥だからあたしはこう考えた。攻撃が来ない、あるいは回避できる場所さえあれば、絶対に避けられない弾幕を展開してもルール上何の問題は無い、と‥‥
‥‥覚えておきなさい、これが『発想の転換』というやつよ」
辺り一帯、まるで豪雨のように光弾が飛び交う弾幕の中、唯一の『安全地帯』にいる幽霊妖精に対しそう言い放つ嵐。
それを聞いた瞬間、幽霊妖精の顔から余裕や嘲りが完全に消え、再び怯えた表情が顔に浮かぶ。しかし、嵐はそんな相手に対しても容赦するつもりはないようで、懐にしまっておいた拳銃を取り出すと、その銃口を弾幕の中にいる幽霊妖精に向ける。
「‥‥妖怪の『賢者』と言われる八雲紫の弾幕が『結界』なら、あたしのこの弾幕は『牢獄』。一度入ったが最後‥‥‥‥ただでは出られないわ!」
その一喝と同時に嵐は拳銃の引き金を引く。そして放たれた一発の光弾が幽霊妖精に向かっていく。しかも、その光弾は嵐の意思によって不規則、かつ変幻自在に軌道を変えると、濃密な弾幕の間にあるわずかな隙間へと入り込み、その間を縫って幽霊妖精へと襲い掛かる!
「うひぃ!」
彼女は悲鳴を上げて何とかそれをかわすが、光弾は再び弾幕の隙間へと入り込み、その間を縫って進むと、別の場所から再び彼女へ襲い掛かる。
「ひ~!」
今度もかろうじて避けるが、今度は目の前には壁と化した弾幕が存在する。慌てて空中で停止して今度もぶつからずに済む‥‥が、弾幕によって閉鎖された空間の中で強制される、動けば壁に阻まれ、止まれば狙い撃ちにあうという状況が、精神的に彼女を追い詰めていく。
そして、そんな状態の幽霊妖精が必死の思いで放った光弾を嵐は余裕でかわし続ける。
一方‥‥
 




