プロローグ 中編 無惨な敗北
プロローグの中編です。
『秘術!グレイソーマタージ!』
「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!」
早苗が宣言したスペルカードの弾幕が時雨子を襲い、彼女を戦闘不能へと追い込む。
「‥‥幻想郷の神の力とはこんな程度なのですか?ずいぶんとあっけないのですね」
雨降りしきる神社の境内に崩れ落ちた時雨子に対し、早苗はそう傲然と言い放つ。
「うう‥こんな‥はずは‥この‥‥あたしが‥たかが‥人間‥相手に‥」
そう言いながら時雨子は気力を振り絞って立ち上がろうとするが、その前に悠然と神奈子が立ちふさがり、彼女を見下ろしたまま告げる。
「‥‥残念だけどこの子、早苗はただの人間じゃない。神の力を宿す人間、現人神なのさ。だから、あたしら神と同等の力を持っている」
人でありながら神でもある。その言葉に時雨子は愕然とするが、そんな彼女を見下したまま今度は早苗が言い放つ。
「‥‥そのとおりです。そして私にも勝てないあなたが神奈子様に戦いを挑むなど、100年、いえ1000年早いのですよ」
「‥‥‥う‥うう‥‥」
『たかが人間』と侮った相手に対しての敗北。無残にも傷つけられた神としての誇り。屈辱と悔しさが涙となって時雨子の頬を降りしきる雨と共につたっていく。
「‥‥これでわかっただろう?あんたとあたしたちとでは神としての格が違う。だからおとなしく帰りな」
「‥‥う、うぅ‥‥」
そうして自分の前に立ちはだかる神奈子と早苗に対し、時雨子はボロボロになった心と体に鞭を打ち、その場から逃げ出すのが精一杯だった。
「さてと。早苗、なんか余計な邪魔が入ったが、そろそろ博麗神社の巫女を相手にするよ」
「はい神奈子様、お任せください。見事博麗の巫女を下し、幻想郷の信仰をすべてこの守矢神社へと集めて見せます」
そうして、早苗と神奈子の関心は霊夢へと移り、時雨子の存在などすぐに忘れてしまった。